カドブンレビュー×カドフェス最強決定戦2017
この本は、2010年8月号~2014年12月号までの『ダ・ヴィンチ』に連載されたコラムを書籍化したもので、
若林さんの厨二病がハンパじゃないと話題になっていた一冊です。
エッセイに分類されるのかな? とにかく笑えます!
そして文庫版には単行本に収録されていなかった100P以上が追加された上に、値段も安くなってスーパーお得!
お世辞は言わない性格を自負していますが、今まで読んだエッセイの中で一番好きかもです。
少なくとも、今まで一番好きなつもりでいたエッセイを超えました。
じゃあ何が今まで1位だったのかと言うと、村上春樹大先生の朝日堂シリーズです。
村上さんが飲食店にリアルに書いた(けっきょく出しはしなかった)クレームの手紙全文をはじめ、
「僕にとって女の人は洋服と似ています。デザインが気に入った洋服を見つけたとしても、サイズが合ったことがないのです。サイズが合わなければ洋服は着ることができません」
といった春樹節にいつもシビれさせてもらっています。
日本が誇る大作家、村上さんのエッセイをお笑い芸人である若林さんのエッセイが(あくまで自分的に)超えたことに感慨深くなっていると、
ふたりの意外な共通点に思い当たりました。
・若林さん→等身大の厨二病
・村上さん→厨二病の最終進化系(森なんかがこんなこと書いて本当にごめんなさい><)
というわけで、ふたりとも厨二の系譜にいるのではないでしょうか?
ふたりの違いを勝手ながら分析させていただくと、
・村上さん→ひたすら気持ちよく厨二な気分にさせてくれる。
・若林さん→自分の中にある厨二感を浮き彫りにしてくれる。
こういうことではないかと!
この本がスゴいと思うのは、
毎日のように聴いていたカート・コバーンの歌声が響かないことが嬉しくもあり。寂しくもある。P142より
という文章に表現されているように、若林さんが芸人として売れていく中でうすれていく厨二感と、
やっぱり変わらない厨二感とが抜群のバランスで存在していることです。
そして、自分のことを棚にあげて若林さんの厨二病を下に見つつ読んでいると、ふいに強く共感させられます。
この振り幅こそが、ぼくの中で “社会人大学人見知り学部 卒業見込み” がベストエッセイになった理由な気がしています。
この共感ポイント、たくさんある中からひとつだけ例を。
「若林さん、例えばお芝居に出たとして、終わってから楽屋に挨拶にきた人が『いいお芝居でした!』と言ったら信用できないでしょ?」と聞かれた。ぼくは「はい、信用できません」と素直に答えた。「じゃあ、お笑いライブでウケてたら信用できるでしょ?」と問われ、「はい」と答えた。スベった時の静寂も信じられるけど、という言葉は飲み込んだ。P160より
ぼくも、自分が事業を行う中で(一応森は経営者です)知り合いから「森くんの仕事すごいね!」と褒められても信じられません。
『嘘つけ!調子のいいこと言いやがって!』っとどうしても思ってしまいます。
じゃあ何が信用できるかというと、 自分のお金を払って、自分の時間をつかって、お店に何度も足を運んでくれること。サービスを利用してくれること。それだけしかありません。
この我ながらめんどくさい性格、若林さんもそうだったのか! と嬉しくなるとともに、
エピソードからもひしひしと伝わってくるし、作中にある
昔の自分を裏切ったような気持ちになるP25より
という一文に凝縮されている若林さんの”真っ直ぐさ”がぼくは大好きです。
実は何度か仕事でご一緒させていただいたことがあるのですが
(森は同じ場所にいただけです)、
スタッフさんにすごく気をつかう素敵な方でした。
そんなこともあって、一番応援してる芸人さんが若林さんだったりします。
そんなこんなで、厨二病経験者にオススメ、かつ、そうじゃない人は自分の中に潜む厨二感に気づかせてもらえる一冊です。