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始まってしまったら……人が死ぬ。何人もの人が。――『Another 2001』綾辻行人 文庫巻末解説【解説:辻村深月】

名手・綾辻行人が満を持して放つ、圧巻の学園ホラー&ミステリ。
『Another 2001』綾辻行人

角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。

Another 2001』著者:綾辻行人




『Another 2001』文庫巻末解説


青春のただなかにいる〈Another〉

解説
つじむら づき  

 二〇〇九年、綾辻さんの最新刊として刊行された『Another』を読んだ時の震えるような戦慄と喜びを、今も昨日のことのように覚えている。
 私は作家・綾辻行人のファンである。十代で『十角館の殺人』に出会い、それまでの自分のすべてを揺るがされるような衝撃を受け、小説家になることに憧れた。私の筆名の「辻村」は、恐縮ながら、綾辻さんの苗字から(勝手に)一字いただいたものだ。最初に出会ったものの衝撃、しかも多感な時期の出会いの影響は恐ろしく強い。だから、私にとって綾辻作品の生涯のベストは『十角館の殺人』に代表される館シリーズであろう、とそう思っていた。
 ところが──である。
 作家になり、数年が経った私のもとに『Another』が現れた。
 ホラーの世界観を構築しながらの素晴らしい本格ミステリ、かつ青春小説。読了し、震えるほどにこみあげてきたのは喜びだった。最初に出会ったその日からずっと追いかけてきた作家が、自分の中の「最高傑作」を更新してくれたことに対する、喜びと感謝。その後、アニメ化などのメディアミックスの影響などもあって、若い読者が『Another』を入り口に新たに綾辻作品の読者となり、遡って館シリーズのファンとなっていった経緯を思うと、この時の私の感覚は多くの人に共有されていたものだったのだとわかる。綾辻行人の新しい代表作の誕生に、私たちは立ち会ったのだ。
『Another』という物語の持つ設定は巧みである。やまきた中学校三年三組に、かつてとても人気のあるミサキという生徒がいた。彼は在学中に不幸な事故で亡くなるが、その死を惜しんだクラスメートと教師たちが「彼は死んでいない、そこにいる」と卒業まで彼をとして扱った。それ以来、三年三組は死に近づいたクラスとなり、クラスに過去の死者がまぎれこむという現象が起こるようになる。その現象は「ある年」と「ない年」があり、「ある年」はクラスの関係者がさまざまな要因で死に巻き込まれ、命を落とす。特筆すべきはこの不可解な状況が誰の悪意も呪いも介在しない「現象」であるということだ。人智を超えて起こるこの〈災厄〉の現象に有効な対策はひとつだけ。ふえてしまった「いるもの」に対して、クラスメートの成員の誰かを「いないもの」として扱うこと。
 かくして読者は、クラスの誰が死者なのかという謎に引き込まれながら、〈災厄〉に抗う彼らの死に彩られた運命を追うことになる。この設定がまず、ミステリとホラー、両方のジャンルを牽引してきた綾辻行人という作家でなければ描けない。恐れ多くも同じ時代に生きる同業者の作家のひとりとしては、ただただ脱帽する他ない、唯一無二の舞台設定だ。

※ここから先は、『Another』及び『Another エピソードS』、本編である『Another 2001』のラストに言及する部分があります。未読の方は、どうか必ず読了後にお読みください。

作品の結末にまで踏み込んだ辻村深月さんの解説は『Another 2001(下)』に収録!
この先は角川文庫でお楽しみください。

作品紹介・あらすじ



Another 2001(上)
著者 綾辻 行人
定価: 902円 (本体820円+税)
発売日:2023年06月13日

始まってしまったら……人が死ぬ。何人もの人が。
多くの犠牲者が出た1998年度の〈災厄〉から三年。――春から夜見山北中学三年三組の一員となる生徒の中には、三年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。〈死者〉がクラスにまぎれこむ、という奇怪な〈現象〉に備えて、今年度は特別な〈対策〉を講じる想たち。だが、クラスに広がる不安と疑心が次第に歯車を狂わせていき……ついに惨劇の幕が開く! 名手・綾辻行人が満を持して放つ、圧巻の学園ホラー&ミステリ。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210000684/
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Another 2001(下)
著者 綾辻 行人
発売日:2023年06月13日

考えて。そして、思い出して。謎を秘め、物語は美しい破局へと突き進む!
〈死者〉を“死”に還す。――三年前に同様の危機を乗り越えた経験を持つ卒業生・榊原恒一の助言を得て、想たちは事態に立ち向かおうとするが……。
考えて。そして、思い出して。
猛威をふるう〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉。――止まらない残酷な“死”の連鎖、そして深まりゆく謎。恐怖と混沌、絶望のなか、物語は凄まじくも美しい破局(カタストロフィ)へと突き進む! 著者渾身の大長編、怒濤の完結巻。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210000698/
amazonページはこちら


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