アニメ化でも話題、壮大な王道冒険ファンタジーの傑作、第二弾。
『火狩りの王 〈二〉影ノ火』日向理恵子
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『火狩りの王 〈二〉影ノ火』日向理恵子
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『火狩りの王 〈二〉影ノ火』日向理恵子 文庫巻末解説
解説
長寿と異能を持つ神族が統治する世界。かつての最終戦争の際に使用された人体発火病原体によって、人々は天然の火に近づくと内側から発火する体になっています。生活に必要な火は火狩りたちが黒い森を
この奇妙な世界を舞台にした『火狩りの王』の主人公は二人。
一人は、
もう一人は、首都に暮らす
第二巻で灯子はようやく首都に到着し、そして煌四と出会います。さらに物語は新たな登場人物を迎え、複雑さを増していきます。第一巻を読んだ方ならおわかりのとおり、なんとも不穏で残酷な内容ですが、この、目を覆いたくなるような
特徴的なのは、何が善で何が悪なのか、何が正解で何が間違っているのか、みなわからないまま手探りで進んでいる点です。たとえば煌四が極秘裏に進めている研究は、人々を守ることが目的とはいえ、殺人兵器の開発です。強い威力を持つ雷火を扱う危険性から、原子力爆弾を連想した人も多いのではないでしょうか。はたして、そんなものを作ってしまっていいのか。煌四自身も悩みますが、研究は着実に進んでいきます。また、火狩りの
首都に集結した彼らが一致団結して行動を起こすわけではない点も特徴的です。これは仲間がチームを組んで敵と戦う話とはちょっと違うのです。煌四と灯子も時に一緒になるものの、基本的にはバラバラに行動しています。二人はそれぞれに、自分で自分の行動を選びながら進んでいるのです。
素晴らしいなと思うのは、そうした登場人物たちが、それまでどんなふうに生きてきたか丁寧に物語の中に盛り込まれていることです(油百七はずっと謎めいたままですが、『火狩りの王 〈外伝〉野ノ日々』に彼の過去がわかる話が収録されています)。第一巻で主要人物と思われた人たちがあっけなく命を落とすので
この物語には、人類を代表するような、圧倒的な力を持つ英雄は出てきません。この世界のすべてを解決できるほどの腕力と知恵を持つ人なんていないし、そんな簡単にすべてが解決できるほど世界は単純ではない、ということです。と同時に、この物語にはすべてを陰で牛耳る悪の枢軸、みたいな存在も登場しません。人々を支配する神族は謎めいているし、〈蜘蛛〉は人間にとって脅威となる存在ですが、誰かたった一人の悪意がこの世界を動かしているわけではなく、さまざまな要因と思惑が複雑に絡み合って今の社会となっているのです。絶対的な悪も善もなく、みんなの中に少しずつ善きものと、悪──あるいは、何か見誤っているもの──があり、そのために混沌が生まれてしまっている。それが世界の真実であり、だからこそ、灯子たちは、自分が何と向き合いどう行動すべきなのか、慎重に見極めなければならなくなっています。
灯子も煌四も、この世界を、人間にとってどうにかよいものにしたいと願っているのは同じです。でもまだ十代の彼女たちにはわからないことが多すぎて、迷ってばかりです。この第二巻で、神族のひばりがそんな煌四に向かって、印象的な言葉を残します。
「お前とあの村娘はおもしろいな。お前たちは、ここがいかなる世界かを知ろうとしている。どうにかたすかろうとあがくのでもない、破滅を望むのでもない。この世界がいかにあるのか、ただそれだけを知ろうと、強く思っている」
この言葉には、はっとさせられます。わかりやすくない世界で、自分ができる最善のことは何かを考える手段として、世界のありようを知ろうとするのはとても大切な姿勢です。この世界のことを何も知らないまま大義名分を
そんななかで、少年少女たちが相手に
そうして彼らはどんな道を選び、どこにたどり着くのかは──第三巻、四巻、そして外伝で、ぜひ確かめてください。
作品紹介・あらすじ
火狩りの王 〈二〉影ノ火
著者 日向 理恵子イラスト 山田 章博
定価: 880円(本体800円+税)
発売日:2022年12月22日
アニメ化でも話題、壮大な王道冒険ファンタジーの傑作、第二弾。
炎魔の群れに襲われたものの、辛くも逃げ延びた灯子。たどり着いた首都で、自分を助けてくれた火狩りの家族を探し始める。一方煌四は、凄腕の火狩り・炉六の狩りに同行した先で、思いもよらない残酷な光景を目にする。父の仲間だった火狩りたちがある男を拷問していたのだ。それが燠火家当主の差し金によるものと知った煌四は、彼への疑いを深めていくが……。あらゆる思惑が渦巻く中、首都には〈蜘蛛〉と呼ばれる者による反乱の時が静かに迫っていた――。
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