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試し読み

博物館でも大人気!その造形美、細部の見方、楽しみ方を第一人者が解説!明治大学教授・若狭徹著『埴輪 古代の証言者たち』を試し読み

心が癒やされる可愛らしい造形で、博物館でも大人気の埴輪。その造形美、細部の見方、楽しみ方を第一人者が解説する『埴輪 古代の証言者たち』。
巫女、武人、力士、ムササビ。多彩な造形が王権を彩ってきました。カラー図版160点を収めた、日本全国の埴輪を紹介する、フルカラーの文庫版が角川ソフィア文庫より初登場です。
今回は「はじめに」と本文の図版の一部を特別公開します。



フルカラー図版も!『埴輪 古代の証言者たち』特別試し読み

埴輪の世界へようこそ

 短い手足、ぽっかりと空いた目と口、あどけない表情……。はには、日本古代を代表する遺物として人気の存在です。作られたのは1500年くらい前。しかし、ミロのヴィーナスやしんこうてい陵のへいようがだいたい2200年前の造形品だから、その技術力・表現力の圧倒的な差にきようがくしてしまいます。
 けれども、なぜか心かれてしまうのが埴輪。人の心を動かすのは、けっして技の巧拙だけではないようです。博物館で見学者を観察していると、「はにわ……カワイイ」とつぶやく人たち。たしかに埴輪はかわいい。にっこり微笑んでいたりする埴輪もあります。「よしよし、みんな歴史ファンになれよ」と考古学者の私は念じたりするのですが、でも「カワイイ」で理解が終わってしまってはちょっと困ります。
 埴輪はふん時代に作られた造形物です。3世紀中頃から6世紀の終わり頃までのおよそ350年間、日本列島には多くのぜんぽうこうえんふんが造られました。この時期を古墳時代と呼びます。岩手県から鹿児島県にかけての広い地域に、巨大な前方後円墳をはじめとして、前方後方墳、円墳、方墳といった多様なかたちの古墳が数多く築かれました。この古墳を飾るためのツールとして生み出されたのが埴輪です。
 埴輪は土に埋められていたのではなく、古墳のまわりに置かれ、村人に見せつけるように展示されていました。多くの古墳の表面には白っぽい石が貼られていたので、赤い色の埴輪は強烈に目立ったことでしょう。人々はそれを見て、どのような思いを持ったのでしょうか。このことは、「埴輪は何のために作られたのか」という問いにも関連します。
 さて老若男女に人気の埴輪ですが、ただ「カワイイ」だけの存在ではありません。むしろ真実は「カワイくなんてない」のです。埴輪には、家や道具、動物、人物などの多彩な種類があり、それらが組み合わさって並べられていました。そこには、古墳の主を巡る「ある物語」が強く託されていました。その物語の解釈については諸説ありますが、この本では筆者の考えにのつとって、埴輪の世界に皆さんをいざないます。考古学的な検討を基本にしながらも、文献史学の成果なども併せ、先ほどの問いに答えていきましょう。
 日本では毎年多くの発掘調査が行われ、日々新しい資料が見つかっています。本書では、定番の事例と共に、最新の資料も紹介しつつ、埴輪の美、細部の見方、その楽しみ方についても解説していきたいと思います。






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