心が癒やされる可愛らしい造形で、博物館でも大人気の埴輪。その造形美、細部の見方、楽しみ方を第一人者が解説する『埴輪 古代の証言者たち』。
巫女、武人、力士、ムササビ。多彩な造形が王権を彩ってきました。カラー図版160点を収めた、日本全国の埴輪を紹介する、フルカラーの文庫版が角川ソフィア文庫より初登場です。
今回は「はじめに」と本文の図版の一部を特別公開します。
フルカラー図版も!『埴輪 古代の証言者たち』特別試し読み
埴輪の世界へようこそ
短い手足、ぽっかりと空いた目と口、あどけない表情……。
けれども、なぜか心
埴輪は
埴輪は土に埋められていたのではなく、古墳のまわりに置かれ、村人に見せつけるように展示されていました。多くの古墳の表面には白っぽい石が貼られていたので、赤い色の埴輪は強烈に目立ったことでしょう。人々はそれを見て、どのような思いを持ったのでしょうか。このことは、「埴輪は何のために作られたのか」という問いにも関連します。
さて老若男女に人気の埴輪ですが、ただ「カワイイ」だけの存在ではありません。むしろ真実は「カワイくなんてない」のです。埴輪には、家や道具、動物、人物などの多彩な種類があり、それらが組み合わさって並べられていました。そこには、古墳の主を巡る「ある物語」が強く託されていました。その物語の解釈については諸説ありますが、この本では筆者の考えに
日本では毎年多くの発掘調査が行われ、日々新しい資料が見つかっています。本書では、定番の事例と共に、最新の資料も紹介しつつ、埴輪の美、細部の見方、その楽しみ方についても解説していきたいと思います。