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試し読み

絶滅危惧種「ウミカワウソ」の生態は? なぜ減少したの? ベストセラー『わけあって絶滅しました。』はここから始まった!『絶滅野生動物事典』試し読み

ベストセラー『わけあって絶滅しました。』の今泉忠明さん著『絶滅野生動物事典』より、一部を抜粋してお届け。
(挿画 今井桂三)

ウミカワウソ

MARINE OTTER, Lutra felina
食肉目イタチ科 CARNIVORA Mustelidae

《形態》体長57~59㎝、尾長30~36㎝、体重3・2~5・8㎏。
《特徴》小形のカワウソで、鼻先の毛が生えていない部分(きよう)の上縁はまっすぐで丸みがある。手足の指の間にはみずかきが発達しており、みずかきの裏面にはまばらな毛が生えている。体色は濃い茶色で、上毛の先端が淡色のため、体が乾くと霜降り状に見える。下面は淡い黄褐色。頰、あごのどはさらに淡い。
《分布》ペルー北部から南へチリ沿岸南部、マゼラン海峡を挟んでティエラ・デル・フェゴまで分布。


生活

 ほとんどのものが単独で、岩礁の多い海で生活しており、めったに川へは上らない。岸辺から500m以上離れることはないが、泳ぎはうまく、荒れた、強風が吹きまくるような海域にもむ。北部ではそのような場所が少ないため、まばらに分布しており、数も少ない。1平方㎞当たりのせいそく密度は0・04頭から10頭である。つまり25平方㎞に1頭棲息するところがあるかと思うと、100㎡ごとに1頭見られるような地域もあるということである。
 午前中は陸上で休息したり眠ったりしている。隠れ家は水面近くに入口が開いている岩穴などである。午後になると活動し、海に潜ってエビなどの甲殻類や貝のほか、魚類を捕らえる。甲殻類が7割、魚類あるいは貝が3割程度である。潜水時間は15秒から45秒で、ふつう陸に上がらずに海に浮かんで獲物を食べる。
 分布域の南部では九、十月が出産のピークである。妊娠期間は60~65日で、ふつう1産2である。出産は土穴や岩の割れ目で行われ、母親はおよそ2ヶ月を共に過ごす。3頭で泳いでいるのが観察されたことがあるが、これはおそらく家族群なのだろう。

状況

 19世紀にダーウィンが「ウミカワウソは非常にたくさんいる」と報告したため、毛皮をるハンターが殺到し、激減してしまった。ティエラ・デル・フェゴに分布していた個体群は絶滅した。

〈第2回につづく〉


書影

今泉忠明『絶滅野生動物事典』(角川ソフィア文庫)


今泉忠明絶滅野生動物事典』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000141/


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