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試し読み

テレビゲームや子供向け番組のキャラクターでもおなじみ? バンディクート減少の原因とは? ベストセラー『わけあって絶滅しました。』はここから始まった!『絶滅野生動物事典』試し読み

ベストセラー『わけあって絶滅しました。』の今泉忠明さん著『絶滅野生動物事典』より、一部を抜粋してお届け。
(挿画 今井桂三)

バンディクート

有袋目(バンディクート目)バンディクート科 MARSUPIALIA(PERAMELEMORPHIA) Peramelidae
およびミミナガバンディクート科 Thylacomyidae

《形態》平均体長28・0㎝、尾長9・0㎝、後足長5・6㎝。
《特徴》バンディクートは小形で耳が長いため「フクロウサギ」とも呼ばれることがある。しかし鼻づらが長く、ウサギよりはむしろモグラやトガリネズミなどの食虫類に似ている。有袋類で、メスのおなかには育児のうがあるのだが、イヌやネコなどのしんじゆうるいとおなじように胎盤を生じる唯一のグループである。ただし胎盤は不完全なものである。
《分布》オーストラリア、ニューギニアほか。

生活

 地上で生活し、開けた草原や川や沼の岸辺の草むら、深いやぶや低木林や森林などにんでいる。ふだん1頭かオス・メスのつがいでいる。草むらなどに浅いくぼみやトンネルを掘り、小枝や草で屋根をつけた巣をつくり、日中はそこで休息している。夜行性で、長く突き出した口先で土を掘って昆虫類などの虫を食べることが多いが、雑食性である。なわばり意識が強く、個体同士は激しく闘う。繁殖期はふつう春で、生まれたばかりの子どもは、全長約1・25㎝、体重0・28gしかない。これは親の体重の1000分の3という小さなものである。1産2~3がふつう。生まれた子どもは自力で育児囊に入り、1ヶ月ほど乳首に吸いついたまま成長し、さらに1ヶ月ほどすると外に出るようになる。

 絶滅種

●ニシオビバンディクート
 WESTERN BARRED・BANDICOOT, Perameles myosura myosura
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》オビバンディクートの亜種。はんもんめいりようでなく、黒帯が少なく、背の中央を横切らない。すなわち単色の1横帯と、そのすぐ後ろに黒色の1横帯があるだけで、その後方には淡色・黒色いずれの横帯もない。この淡色横帯は体の側下方の白色部に連続する。そのため背の茶色の部分は、淡色の部分であんじように境される。
《分布》ウエスタン・オーストラリア地方。
《状況》地元ではマール MARL という土名で呼ばれており、一九〇〇年以降はパース博物館でさえ標本を入手していないので、絶滅したと考えられている。
【参考】ニシオビバンディクートはオビバンディクートの亜種であるので、其の種を紹介しておく。
オビバンディクート WESTERN BARRED・BANDICOOT, Perameles myosura
 体長28・0㎝、尾長9・0㎝、後足長5・6㎝、かいは長さ3・0㎝、その背面は基部がコルク色で、中央は黒茶色、先端はほとんど裸出してベージユ色となり、3色性を示す。体毛は長いが硬くはない。体の背面はコルク色と黒の霜降り状で、後方へ次第に暗色となり、体側は薄くコルク色、下面と足は白色。腰に1~数本の暗色横帯がある。オーストラリアの西部と南部に分布。この西部産亜種がニシオビバンディクートである。
ミナミオビバンディクート SOUTHERN BARRED・BANDICOOT, P.m.notina
 オビバンディクートの南部産亜種で、腰の暗色帯の数が多く、極めて明瞭で、背の中央を横切るところはシマバンディクートの斑紋に似る。絶滅の恐れはあるが、今なおせいそくするとされる。

●カタアカバンディクート DESERT or ORANGE BANDICOOT, Perameles eremiana
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》体長23・5~27・5㎝、尾長11・8~13・5㎝、後足長5・1~5・5㎝。やや小形で尾が長い。体背面は鈍いオレンジ色で、腹面は白く、肩に鮮やかなオレンジ色の斑がある。腰には2本の黒色帯に挟まれたオレンジ白帯があり、尾は上面が暗色、下面は白色。耳介は長く、先端はとがり、前に倒すと目の前方約17㎜に達する。
《分布》ノーザン・テリトリー西部、サウス・オーストラリア州、ウエスタン・オーストラリア州東部にあたるオーストラリア中央部。
《状況》一九三〇年代以後採集例がなく、絶滅したと思われる。

●ブタアシバンディクート PIG-FOOTED BANDICOOT, Chaeropus ecandatus
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》体長23~25㎝、尾長10~14㎝、後足長6・9㎝。体は細く、頭部と背面は鈍い黄色の地に茶色の霜降り状。下顎・胸・腹面は白いが、体側における背・腹の境ははっきりしない。手の指は中央の2本だけが発達し、ブタの四肢に似ている。
《分布》オーストラリア南部。
《状況》かつてはたくさんいたが、野火や開拓の進行によって追い立てられ、またウシやヒツジの増大も本種の棲息地の牧場化を促進したため、減少の一因となった。一八四三年、西部では本種はまれと報告され、一九三七年にはこの地方では絶滅した。スロートンは一九五四年に「今日ではほとんど絶滅したと考えられ、ウエスタン・オーストラリア博物館にさえ標本がないという状況で、棲息当時の分布などについて知る由もない」と報告している。ビクトリア州では一八五七年の標本が最後であり、サウス・オーストラリア州でも一九二〇年以来見かけたものはいない。オーストラリア中央部では一八九六年に1標本がえられたが、その付近でも入手は難しかったと述べている。しかし、一九四五年にはハーパーが「現在ではオーストラリア中央部を除いては絶滅した」と述べたように、最後まで残った地域であることは確かなようだ。一九六〇年の報告では絶滅にひんしている状態だったが、現在では絶滅したと考えられている。

コラム2
ブタアシバンディクートの発見物語

 一八三六年のことだ。イギリス人のミッチェル氏はミュレイ地方で動物採集をしていた。ある日、彼がガイドとして雇っていた原住民が、木の洞に逃げ込んだバンディクートを生きたまま捕獲してきた。見るとそれは、ミッチェルがかつてウォリントン渓谷のこうがんどうくつで化石を発掘していたときに、いろいろな化石に混ざって見つかった古い頭骨と同じものであり、すでに絶滅した動物だと考えていたものだった。
 ミッチェルは大喜びだった。その動物は尾がなく、爪は指は2本だけが発達して大きく、ひづめのようだった。そこで彼は「尾がなく、ブタの足をもつもの」という意味で学名〝Chaeropus(カエロプス=ブタの足)ecandatus(エカンダトゥス=尾がない)〟をつけた。そして「ブタアシバンディクート」なる一般名がつけられ、オーストラリア博物館に保存された。


ブタアシバンディクート

ブタアシバンディクート


 その後、この〝尾がなく、ブタの足をもつもの〟にそっくりなのだが、尾が長い種類が発見された。これにも学名がつけられたが、それからいくら調査をしても尾が短いものが見つからなかった。ものすごく珍しい動物だということで懸賞金までつけられたのだが、どうしたわけか、いっこうに見つからなかった。
 一八五七年十月、クレフトという動物学者はミッチェルが採集した地点に行き、原住民に「ブタアシバンディクート」の絵を見せて、「このような動物がいたらぜひもってきて欲しい」と頼み込んだ。するとすぐに原住民の一人がその珍しいと考えられていた動物をもってやってきたのだ。
「どこで捕まえたのか?」とクレフトが尋ねると、その男は「こんなのはどこにでもいる」と言った。不思議に思って問いつめると、クレフトが喜ぶだろうと思って、わざわざ尾を切ってもってきたのだという。
 そう、ブタアシバンディクートは闘争好きで、ほとんどが尾が切れてなくなっている動物であり、ミッチェルが採集したのもたまたまそんな個体だったのだ。それで尾が完全なものが発見されたとき、よく似ているけど、尾の長さがぜんぜん違うので別物として新種にされていたのである。

●チビミミナガバンディクート LESSER BILBY BANDICOOT, Hacrotis leucura
《分類》有袋目(バンディクート目)ミミナガバンディクート科。
《形態》体長14・2~27・0㎝、尾長11・6~16・0㎝、後足長5・5~7・3㎝、耳介長6・3~9・2㎝。ミミナガバンディクートに似るが、小形で、尾の下面は常に白色。きようふんの先端に限られ、後方に突出しない。
《分布》オーストラリア中部。
《状況》原住民は本種を捕獲するときには寒いときを狙う。暑いときには本種は地下深く潜っているが、寒くなると地下30㎝ほどのところにいることが多いからだ。原住民は巣穴から1mほどのところを掘り返して通路をふさいでから捕獲する。一九三一年以来採集例がなく、絶滅したものと考えられている。


チビミミナガバンディクート

チビミミナガバンディクート


 絶滅危惧種

 以上のほか次の4種のバンディクートが絶滅を心配されている。

◉シマバンディクート EASTERN BARRED BANDICOOT, Perameles fasciata
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》体長は21・0~22・0㎝、尾長10・5~11・0㎝、後足長5・2㎝、耳介長3・5㎝。小形で腰にははっきりした黒条があり、美しい。耳介の背面には淡色と暗色のはっきりした斑紋があり二色性。
《分布》オーストラリアのニューサウスウエールズ州西部とビクトリア州。
《状況》一八六三年にグールドは「本種はオーストラリア東部に広く分布する」と述べており、一八六五年のクレフトの見解でも「ミューレイ川地方で観察したときにはシルとかモンキャットと呼ばれて極くふつうにみられる」としている。しかし、一九三七年にはレソーフは「かつてニューサウスウエールズ州とビクトリア州に棲息したが、長い間捕獲されていないので、おそらく絶滅したのであろう」と報告した。一九五〇年にブレイズナーは「少なくなってはいるが、ビクトリア州西部の数ヶ所には、今なお棲息している」と報告した。一九六〇年カレビーは「現在では絶滅の恐れのある種の一つとみなしている」と記述している。

◉チビオシマバンディクート LITTLE MARL STRIPED BANDICOOT, Perameles bougainvillei
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》シマバンディクートによく似ているが、腰の斑紋が不明瞭で、2本の淡色横帯とその中間に1本の暗色帯がみられるのみ。耳介背面の斑紋もはっきりしない。
《分布》ウエスタン・オーストラリア州のシャーク湾にある島々とペロン半島、およびヨーク付近。
《状況》ベルニヤー島ではネコが移入されたためだと思われるが、急速に減少して一九〇九年にはほとんどみられなくなったといわれる。

◉タスマニアシマバンディクート TASMANIAN BARRED・BANDICOOT, Perameles gunni
《分類》有袋目(バンディクート目)バンディクート科。
《形態》体長38・0~40・0㎝、尾長8・0~9・0㎝、後足長7・2㎝、耳介長3・1~3・4㎝、吻端から眼まで6・0~6・5㎝。腰の斑紋が極めて明瞭である。尾の条面の暗色部は基部から半分に限られ、先半分の上面は白い点でシマバンディクートと異なる。また、体は大きく尾が短い。
《分布》タスマニア。
《状況》一八三八年にはグンが「いたるところに棲息している」と報告しているが、一九二八年にはロードが「少なくなっている」と述べ、一九三七年にはフレイが「かなり減少しているが、今なお見られる」と話している。

◉ミミナガバンディクート RABBIT・BANDICOOT or BILBY, Thylacomys lagotis
《分類》有袋目(バンディクート目)ミミナガバンディクート科。
《形態》体長31・6~44・0㎝、尾長20・0~22・0㎝、後足長9・1~10・3㎝、耳介長7・9~11・5㎝。大形で耳介が長くウサギに似る。しかし尾は長く、先半分には長毛の白い房がある。体背面の下毛は灰青色、長い上毛は先が茶ないし淡茶色。腰の両側には不明瞭な暗色の帯がある。その前後の縁は白色ないし淡茶色。下顎・胸・腹は純白。尾の白色部の前には黒または暗褐色の帯がある。つまり、尾は付け根から見ると、全体のうち4分の1が茶色、4分の1が黒、2分の1が白色である。
《分布》オーストラリアの南半分。
《状況》地下の巣に潜っている本種を捕獲するのに、原住民は耳を地面に当てて地面をたたき、その反響で所在を調べ、その場所を真上から垂直に掘って、捕える。入口から穴づたいに掘っていくと、バンディクートの方が、早く掘り進んで逃げられてしまうからである。
 温暖地域での亜種はほとんど絶滅したとみられている。主な亜種には次のものがある。

オオミミナガバンディクート Thylacomys lagotis lagotis
 ミミナガバンディクートの亜種。体長40~44㎝、尾長20・5~22・0㎝、後足長9・8~10・3㎝、耳介長9・0~11・5㎝。手足の上面が白い。ウエスタン・オーストラリア州のキンバリー地方から南、南はスティルリング地方付近まで、東はサウス・オーストラリア州の北西部およびノーザンテリトリー中央部の西境まで。
ヒメミミナガバンディクート Thylacomys lagotis sagitta
 ミミナガバンディクートの亜種。体長31・6㎝、尾長21・5㎝、後足長9・1㎝、耳介長7・9㎝。体色はやや淡く、尾の黒帯は短く、足裏の黒色部は後方3分の1に限られる。手足の上面は白い。サウス・オーストラリア州のオオルディアソーク付近に分布。
クロアシミミナガバンディクート Thylacomys lagotis nigripes
 ミミナガバンディクートの亜種。体長32・0~39・0㎝、尾長22・0~23・0㎝、後足長9・2~9・8㎝、耳介長10・3~11・0㎝、体後部の毛先が黒く、吻端から眼までの背面と眼の周囲、前胸部と手および足の上面も黒い。尾は基部が黒く、先3分の2が白い。

 絶滅原因

 原住民は昔から肉を食用とし、毛皮を装飾品などにしてきており、数が減ってきていたことは事実だが、それがバンディクートの絶滅に直接結びついているわけではなさそうである。というのは、獲物の数が減れば、原住民は捕獲できなくなり、多いときだけ捕獲できたはずだからである。絶滅の原因となったのは、森林の伐採とそれに伴う牧場化が、まず大きい。そして、イギリス本土から狩猟を楽しもうとして移入したアカギツネに捕食され、また同じ目的で放たれたアナウサギと棲息地をめぐっての競合に破れたためであるらしい。というのは、人間が居住しない地域やキツネが分布しない地域からも姿を消しているからである。


書影

今泉忠明『絶滅野生動物事典』(角川ソフィア文庫)


今泉忠明絶滅野生動物事典』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000141/


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