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オールナイトニッポン元チーフディレクター、 石井玄の初エッセイ『アフタートーク』プロローグ全文試し読み

「ぼくがラジオに救われたように、ラジオが未来永劫続いて、まだ見ぬ未来のリスナーを救って欲しい。それが、ぼくが生きている理由で、今まで仕事をしてきた理由で、これからも仕事をする理由です」。
300ページ近くのボリュームで、ラジオへの情熱と番組のために駆け抜けた10年間の集大成を綴った『アフタートーク』。
ラジオファンのみならず、モチベーションを高めたい社会人やこれから社会に出て働く学生にも勧めたい、仕事や人生への示唆に富む一冊だ。

石井玄いしいひかる『アフタートーク』プロローグ全文試し読み

アフタートークのビフォートーク

 エッセイを書いて欲しいという依頼が来た。
 なるほど。
 ニッポン放送というラジオ局で、「オールナイトニッポン」のチーフディレクターをやったり、ラジオディレクター代表みたいな面して取材を受けたり、「ラジオ業界に物申す!」といった青臭いことをSNSで発信していたりしたからか。
 初めは、編集者を装った超ラジオ好きなリスナーが依頼してきているんだろうと思った。多分、番組スタッフまで把握しているようなコアなリスナーだ。

 連絡があったのはKADOKAWAという出版社の方だった。まつさんという、ちゃんと社会に溶け込んで仕事をしている大人のようで、想像していたヤバめのリスナーではなさそうだ。
 話を聞くと、ラジオにハマったのはここ1年ほどのことで、昔から熱心に聴いていたわけではないらしい。ラジオを聴いていく中で「石井」という名前にたどり着き、Twitterでぼくが「熱く」なっていたのを見て、声をかけたそうだ。肩書きや経歴ではなく、ぼく自身に興味を持ってお願いしたらしい。


アフタートーク
著者 石井玄
定価: 1,650円(本体1,500円+税)


 初めは、仕事論を求めているのかと思っていたのだが、ラジオの仕事や番組を作ってきた話、ラジオを好きになった学生時代の話など、ぼくの「熱さ」を込めた個人的なエッセイを書いて欲しいという。
 いち会社員のエッセイ? ちょっとおかしなことを言っていると思ったのだが、どうやら大真面目に言っている。

 誰がぼくに興味あるんですかね?
 ぼくの話で売れるんですかね?
 パーソナリティとの対談とかを入れた方がいいんじゃないですか?

 などと尋ねたが、「石井さんが、ラジオの仕事に向き合ってきた話を読みたい人がいるはずです」と譲らなかった。

 どうかしている。
 だが、自分で書いた本を出版するチャンスなど、人生に一回あるかどうかだ。
 子どものころ、本が好きだった。いつか自分が本を出せたらいいなと妄想したことはあっても、実際に起こるとは思っていない。
 夢だったというほどにも想像していない出来事だ。

 かくして、ぼくの人生最大の挑戦が始まった。
 文章を書くプロでもない人間が、300ページもの量を書くなんて相当大変だ。
 乗せられるままに書いていったが、ぼくのような素人が書くのは精神的にも肉体的にも本当にしんどかった。
 でも、一生に一冊きりになるであろう自分の本なので、最後まで自分で書き上げたいという気持ちもある。
 そんな思いが行ったり来たりしながら、仕事の合間や休みの日を使い、せっせと書き進めていった。

 ぼくは10年近くラジオディレクターの仕事をしてきましたが、今はディレクターという立場を離れました。「アフタートーク」というタイトルは、ラジオディレクターに一旦区切りをつけて振り返った話を主に書いていることからつけたものです。ラジオ番組で生放送が終わったあと、おまけでちょっとだけ話したりすることを「アフタートーク」と言ったりもします。なので、このタイトルです(おまけにしては分量が多く、熱量も高いですが)。

 この本は、ラジオ局に勤める会社員が初めて書いたエッセイです。
 2011年、ぼくがラジオディレクターを目指しラジオ業界に足を踏み入れてから約10年が経ちました。
「オールナイトニッポン」という深夜のラジオ番組にとりわけ長く携わっています。ラジオのことが多めですが、ラジオを知らない方でも読みやすいように多くの仕事や会社員に共通するような話にも触れています。

 嬉しいこと、辛いこと、楽しいこと、悲しいこと、腹の立つこと、色んな感情を抱えながらこの10年間仕事をしてきました。
 それを今回、本に書きました。
 それと、ぼく自身のこと。今までひた隠しにしてきた自分の「熱さ」について思う存分書きました。
 一生懸命想いを語ったり、夢に向かって頑張ったり、良いものを作るために真剣に取り組む人をバカにする人がいますが、今回は無視しました。

 バカにされても、もういいかなと思います。
 それでも伝えたいことが、ぼくにはあるようです。

石井ひかるプロフィール

1986年埼玉県春日部生まれ。2011年、ニッポン放送系列のラジオ制作会社サウンドマン入社(現ミックスゾーン)。ニッポン放送「オードリーのオールナイトニッポン」、「星野源のオールナイトニッポン」、「三四郎のオールナイトニッポン」、「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」やTBSラジオ「アルコ&ピースD.C.GARAGE」などのラジオ番組にディレクターとして携わる。2018年オールナイトニッポンのチーフディレクターに就任。2020年にミックスゾーン退社後、ニッポン放送入社。エンターテインメント開発部のプロデューサーとして、番組関連のイベント開催やグッズ制作など活躍の場を広げる。

書誌情報



アフタートーク
著者 石井玄
定価: 1,650円(本体1,500円+税)

腐っていたぼくに残るのは ラジオへの情熱と無色透明の個性。
オールナイトニッポン元チーフディレクター・石井玄の10年間を綴った初エッセイ!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322103001633/
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