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試し読み

中学生4人、究極の頭脳戦!!【『100億円求人』試し読み#02】

2月7日発売予定、10代から支持の人気作家・あんのまる完全新作『100億円求人』。中学生4人が「闇バイト」に巻きこまれて始まる、最後の一行まで目がはなせない「究極の頭脳戦」。大人たちとのヒリつく心理戦の先にある、あなたの予想をぜったい裏切るどんでん返しに注目です! モニター読者である10代男女から熱烈な感想も届いている期待の一作を、大ボリュームで試し読み公開!



中学生4人、人生を賭けた究極の頭脳戦!!
あんのまる『100億円求人』試し読み#02


3.求職者のかんたんな紹介


【求職希望 1人目】
 氏名:高橋 勇誠
 住所:愛知県名古屋市 所属:愛知県立●△●中学校2年生

 高橋勇誠は、勇気があり誠実で、努力をおしまない好青年だ。
 って、ぼくはよく言ってもらってた気がする。
 これから仕事をはじめる前に、ぼくの夏休みの1日目に起きたことを、きみに話したい。

「メェーンッ」
「勝負あり! 高橋!」
 ぼくは竹刀をおさめて、深く礼をした。
「ありがとうございました!」
 剣道の練習試合を終えて面をとれば、先輩や同期に、よくやったって背中をたたかれる。
 相手は、強豪校の主将。強い相手に勝てた。
 でも――ぼくの心は動かない。
 感情が、固まった心に入らないまま、すべり落ちていくみたいに。
「あー……高橋、あのOBになんか言われても、あんま気にすんなよ」
 そうぼそっと耳打ちした先輩たちと向かうのは。
 中学校の剣道場の渡り廊下にいる、OBのおじさんのもと。
 このOBは、夏休みの間だけ、顧問の先生に代わってぼくらを指導する。
 ぼくはこの人のことが苦手だし、相手もぼくのことを気に入ってないと思う。
「高橋くん。きみは器用だから今回はたまたま勝てたけどね、もっと努力しないとだめだよ」
 にたっとした笑いをふくんで、肩をたたかれた。
 その手の重みにも言葉にも、笑顔は崩さないで、ぼくはうなずいた。
「はい!」
「きみ、いつも返事はいいけどね。本当にわかってる? いまのままじゃ、きみのお父さんみたいになるから――」
「御指導ありがとうございます」
 会話を終わらせるために言葉を重ねて、笑みを深めた。
 このOBは、いつも主将だった父さんの話をする。
「きみのお父さんはすごかったよ。あいさつと努力ができる人だった。昔は尊敬してたんだよ」
 大丈夫、この話はもう何回も聞いてる。いつものことだから、大丈夫、聞き流せる。
 にたっと笑ったOBは、いまの変わっちゃった父さんの話もする。
「でも、人は、変わるからね。きみは、気を抜いたらだめだよ。お父さんみたいに、落ちこぼれるからね。人は、どう頑張ったって、過去には戻れないんだから」
 ああ、今日だけは、聞きたくなかった。
 ぼくは自分の性格をよく理解してる。
 このまま、この話を聞いてたら、だめだ。
「すみません、失礼します」
「まだ話は終わってないよ」
 OBに背を向けて、ぼくは竹刀と面を持った。
「高橋くん、きみは、自分のことから逃げちゃいけないよ」
 あ、だめだ。
 もう、むりだった。
 ぼくは振り返りざま、右足を大きく踏み込んで――
 竹刀を振り下ろした。
 スパァーンッ
 OBの真横を通りすぎた竹刀は、床との衝撃で大きな音をたてた。
「失礼します」
 荷物と竹刀を持ったまま、ぼくは剣道場をあとにした。
 先輩や同期の声にも、ぼくは振り返らない。
 肩にかかったバッグが、非難するみたいに、何度もぼくの背中にぶつかる。
 少しのことだったら、心は動かないのに。
 いつもだったら、きっと我慢できたのに。
 夏休みの1日目。5年前、父さんが変わったときと同じ日だったから。
 ぼくは我慢できなくて、ふつうに振る舞えなかった。
 セミの声が響く帰り道。
 首輪の銀プレートに彫られた文字に、ため息をつく。
【NO ESCAPE】(逃げられない)
 ざらざらで動かない心を、じわじわと殺してくる日常から。
 ぼくはうまく逃げられない。

 その日、ぼくは【100億円求人】を見つけた。






【求職希望 2人目】
 氏名:心念 あざみ
 住所:福岡県福岡市 所属:福岡県立△●◇中学校2年生


 心念あざみは、周りが見れて、協調性のある、器用な少年だ。
 そんなあざみは、愛されることが得意だった。
 そして、家族の話をすることが、苦手だった。

 明日からはじまる夏休みに、教室は浮ついている。
 カレーの香りのする教室で、給食の準備中、あざみはいつもどおりに振る舞っていた。
 ひと好きのする笑顔を絶やさず。
 男子からはノリが良く、女子からは話しやすいと親近感をもたれる、そんな人間を演じていた。
 … 大丈夫。またいつもどおり、友だちの家に数日ずつ泊まらせてもらって。それから、知り合いのところで住み込みの手伝いをして。それから …
 そんなあざみの頭の中では、夏休みの計画が何度もくり返されていた。
 そうでもしないと、あざみの心と身体はどこかでまちがいを犯してしまいそうだったから。
 … 絶対に、あいつらに会わないようにしないと。1年ぶりに会ったら何されるかわかんない …
 あざみを追いつめているのは、夏休みの間、全寮制の高校から帰ってくる兄たちだった。
「あーざみん! デザート多めにして」
「しししっ しょうがないなぁ」
 特別だかんね、と笑って、あざみは少しだけ多めにフルーツポンチをよそう。
 どうにか、その手がふるえているのがバレないように。
「なあなあ、夏休みどこ遊びに行く? とりあえず海とプールだろ? お前らいつ暇よ?」
「俺、夏期講習が終われば暇! あざみはいつ空いとる?」
 あざみは、いつもみたいにクラスメイトと机を合わせて、1学期最後の給食を食べはじめる。
 … 金はまだあるし、大丈夫。定期的に場所を変えれば、あいつらに見つかることもない …
「そーいや、あざみは兄ちゃんが3人帰ってくるんだっけ? あざみの家ってまじ仲良さそうだよな」
「えー、ああ、ううん。ふつーだよ」
 話半分で聞いていたあざみは、ぎこちなく笑って返す。
「あははー、ふつーってなんだよ。兄ちゃんと映画観に行ったりしねーの?」
「しししっ 行かない行かない。それよりさ――」
 あざみが話を変えようとしても。
「でもさ、なんかおごってくれたり、遊んでくれたりするだろ?」
 クラスメイトは、しつこかった。
 兄という言葉に、忘れたい記憶が、あざみの脳をじわじわと支配していく。
 … 冬休みは逃げきれたから大丈夫、今回もできる。絶対、殴られたり蹴られたりしない …
 いつも周りに気を配れて、どんなことも笑って流せるあざみは。
 いまだけは、いつもどおりでいられなかった。
「もういいよ、その話。おれ、夏休みは家に帰らないし」
 ぽろっと、言わなくてもいいことを口走ってしまって。あざみの鼓動が激しく打つ。
 口がひどくかわいて、あざみは牛乳パックをつかんだ。
「あはは、なにそれ、なんで? 兄ちゃんから逃げるん?」
 コンッとすねを蹴られた。痛くもない軽い衝撃だった。
 相手がテキトウに言ったって、冗談で蹴ったって、わかってる。頭では。
 でも――
 バシャッ 
 気づいたら、あざみは牛乳をクラスメイトの頭にかけていた。
 シーンと、音を忘れた教室で、あざみはむりやり笑った。
「ごめん、手がすべっちゃった」
 その首にかけられた首輪が、あざみの息をしづらくする。

 その日、あざみはあるツテから、ある求人情報を聞いた。






【求職希望 3人目】
 氏名:椋露路楓
 住所:京都府京都市 所属:私立○□中学校2年生


 椋露路楓は、きれい好きで、力が強くて、不器用な少年だ。
 そんな楓は、本日10回目の手洗いをしている。

「また手ぇあらっとる」
 背後から、くすくすと笑われる楓。
 汚い。さかむけできとる。次は理科? 後ろのやつがうるさい。
 汚い。汚い。うるさい。
 楓は不器用だ。頭の中がいつも、まとまらない。
 だから、不快な気持ちや、憤りの感情を、うまく整理できないでいる。
「なあ椋露路、そんな手ぇ洗ってても、頭は良くならへんでー」
 楓は散らばる思考をどうにかしようとするだけで精一杯で。
 言い返すための言葉の選び方も、わからなかった。
 だから、楓は自分を笑う相手をずっと無視しつづけていた。
 けれど、周りはそれを、ゆるしてくれない。
 とくに最近は、男子からやっかみを受ける回数が増えている。
「男子やめーや、楓くん、なんもしてへんやん」
 女子たちがいつもたしなめることで解決する。
 でも、今日はちがった。
「なあ椋露路、これもむりなんか?」
 声の方向を振り返ったとき、目の前にあったのは、床掃除用の雑巾だった。
 汚い!
 思考がまとまらないから、言葉にする余裕もなく。
 怒り。拒絶。
 それだけが、身体の反応に出た。
 バンッ 軽く振り払ったつもりが、不器用な楓の力は、ふつうの中学生男子と比べて強く。
 相手は、盛大な音をたてて、掃除用具入れをへこますほど勢いよく倒れた。
「いったあ! 殴ることないやん!」
「ちが……わざとや、ない」
 楓自身もおどろきながら、首を横に振るけれど。
「椋露路、またか」
 かけつけた生活指導の先生の低い声に、肩を下げた。
「わたし、悪くないです」
 こぶしをにぎって、つぶやくように、ぼそっと言えば。
 深いため息が、頭上から聞こえた。
「明日から夏休みだからって、浮かれるんじゃない」
 倒れたクラスメイトと、楓にそう言って。
「もうその手を洗うのはやめて、生徒指導室に来なさい」
 先生は歩いていった。
 楓は、感情も、力も、うまくコントロールできない。
 その事実が、楓の胸をぐっと押しつぶす。
「おい、椋露路、逃げんなよ」
 殴った相手の言葉が、楓の背中につきささった。
 楓はくちびるをかみしめて。
 ウェットティッシュでふいた手に、黒い手袋をつけて。
 白いシャツの下にある首輪を、指先でなぞった。

 その日の帰り道。楓は、電信柱に貼られた求人情報を見つけた。






【求職希望 4人目】
 氏名:阿音モネ
 住所:北海道札幌市 所属:●△私立中学校2年生


 阿音モネは、パソコンが得意で、内気で、いつもひとりぼっちの少年だ。
 そんなモネの毎日は、苦痛の連続だった。

 モネの1日は、地獄に行くような気分で学校に向かうところからはじまる。
 だれにあいさつをすることもなく教室に入り。
 背中を丸めて先生の話を聞いて。
「は、はい。え、えっと……」
 話すたびに、くすくす笑われる。だからよけいにうまく話せなくなる。
 休み時間は、電子辞書をいじったり、本を読んだり、トイレでこっそりスマートフォンをさわる。
 その間だけが、息をつけた。
 たまに、ひそひそと聞こえる悪口やくすくす笑いが、他人に向けたものなのか、自分に向けられたものなのか、わからないまま。
 勝手に傷つく。
「別に、1人なんてなれてるしさ、ぜんぜん気にならないし」
 その言葉は、もう何度言ったかわからない、モネのひとりごと。
「なあ聞いて! おれ、夏休み、家族で韓国に行くことになった!」
「へえいいじゃん、ちなみにうちは、ドバイ~」
 クラスメイトの聞きたくもない話が、モネの耳に入ってくる。
 モネにとって唯一の救いは、今日から夏休みがはじまって。
 明日から学校に行かなくていい、ということ。

 午前の終業式を終えて、だれにあいさつをすることもなく教室を出て。
 今日も、授業の回答でしか声をだしてないな、と思いながら帰り道を歩く。
「あ、新しい考察がのってる……ふへへ」
 信号待ちの間に、世界の陰謀がのったサイトを見て。
 独立国と巨大組織の間でくり広げられるスパイの暗躍や、世界一のAI開発者の失踪、月の希少資源である1グラム10億円のムーンジウムを巡る宇宙開発の競走など、どこか遠い世界で起こっていることが、もしかしたら、自分の生活に影響を与えているかもしれない、そんな刺激的な内容に。
 少しの間だけ、いやなことを忘れる。
「ど、どうせ家に帰っても、お父さんも、お母さんもいないよね……」
 朝、テーブルに置いてあった1000円札を思い出して。
 モネは、街のハンバーガーショップに向かった。
 観光客であふれる人通りの多い街を、モネは1人で歩く。
 そんなとき、街の向こう側に、クラスメイトを見つけた。
 気づかれたくない、と背中を丸める。
 でも、隠れはしない。
 モネは、頭の片すみでわかってる。
 どこかで、声をかけられることを期待している自分がいると。
 ドクドクドクと、身体がゆれてるんじゃないかと思うほど、心臓が鳴る。
 クラスメイトは、大きな口をあけてバカ笑いしながら。
 横を通り過ぎて行った。
 気づかれもしなかった。
 勝手に、期待して。
 勝手に、はずかしくなった。
 モネは、シャツの下の首枷をぎゅっとつかむ。
 どこでもいいから、ここから逃げたかった。

 その日、モネはダークウェブで、求人情報を見つけた。






4.スパギャラ再び


8月1日 午前9:00
「ついたぞ、起きろ」
 ぼくは目隠しを外しながら、バスを降りた。
 まぶしい陽に、ぐぅーっとのびをする。
「あははっ また来ちゃったな」
 ここは、伝説の武器商人と呼ばれる本郷武蔵の、別荘地だ。
「なつかしいなぁ」
 古レンガに囲まれた迷路みたいな道の先には、巨大な日本家屋がそびえたっている。
 その2階に案内されながら、ぼくは屋敷を観察した。
 監視用のカメラが無数に設置されているここは、4年前に忍び込んだときより、セキュリティが数倍強化されている。
「いまからボスが、リモコンでお前の首輪の爆破機能を、一時的に停止させる」
 黒いスーツの男がそう言ったとき。
 カチッ 首輪から、音がした。
 この男のボスが、遠隔で首輪の機能を変更したんだ。
 爆破機能を停止したということは、同じ首輪をしている人と100メートル以内に近づけるということ。
 それは、つまり、あの3人と会えるということ。
「楽しみだなぁ」
 この4年間。
 ぼくは毎朝、鏡で外せない首輪を見て、死んでるみたいに生きてた。
 でも、ぼくの心はいま、ちゃんと動いている。
「ここだ」
 男が開けた襖の先にいたのは――
「しししっ 9時14分。おれの勝ちだ」
 室内の時計と、ぼくを見比べて笑った赤髪の少年――心念 あざみ。
「チッ 負けた。なんでわかったんや?」
 テーブルに置いてある1000円札を、あざみに乱暴にスライドさせる、桜色の髪の少年――椋露路楓。
「イ、イカサマしたからに、決まってるさ」
 屋敷内のカメラの映像が映ったパソコンの画面を楓に向ける、青みがかった髪の少年――阿音モネ。
 そのモネに、500円玉をほうり投げるあざみ。
「うわ、あんたらグルやったんか! ふざけんな!」
 イスを倒した楓は、あざみにつめよった。
「おれとモネが先にこの部屋についてる時点で、組んでるって疑わないかなぁ? しかも、1番ノリ気だったのは楓じゃん」
 煽れるだけ煽ったあざみはべぇっと舌をだす。
「あっははは!」
 その3人を見て、ぼくは、破顔した。
 顔が破裂したわけじゃない、最高の笑顔になったって意味だ。
「3人とも4年ぶりだね」
「久しぶり。待ってたよ」
 楓に胸ぐらをつかまれたまま、あざみはニコッと笑ってくれた。
 笑顔なのは、ぼくに会えたから、というよりは賭けに勝ったからだろうな。
「ぼくが来る時間を賭けてたの?」
「う、うん。僕は不参加だったけどね」
 でも取り分はもらっていたモネは、素早くぼくのそばに来てくれる。
 これは、ぼくのことが大好きだからというよりは、楓とあざみのケンカに巻き込まれないように避難するためだ。
「高橋、つくんやったら9時ぴったりに来てほしかったわ」
 あざみから手を離した楓は、不満気に目を細める。
 あははって笑いながら、ぼくはバッグを床に置いて、室内をながめた。
 木製のテーブルに4脚のイス。壁際の棚には1000万円以上の高級な壺や置物が並んでる。
 いま見ただけでも、監視カメラを4つは見つけられた。
「『スーパーウルトラギャランティックソニックパーティー』のみんなで、また集まれて嬉しいよ」
「高橋、お願いやから、そのチーム名を呼ばんといて!」
 楓が、手で顔をおおう。
「略して『スパギャラ』だもんね。4年前、楓が知っている1番かっこいい言葉を選んで、頑張って考えた名前、おれは気に入ってるよ?」
 楓の肩にひじをおいて、その顔を面白がってのぞきこむあざみ。
「離れろ、アホ」
「いやだ」
 楓には潔癖なところがある。それをわかってるあざみは、本人の許容範囲を見極めて距離を守ってる。だから、楓もあざみを本気で嫌がらない。
「あざみはさ、楓をいじるのやめなよ」
 モネが、あきれ顔で言う。
 それでも絶対に、2人の間に入るようなことはしないのがモネだ。
『スーパーウルトラギャランティックソニックパーティー』のメンバーは4人。
 力が強い、腕力担当の、楓。
 手先と口先が器用な、計画立案担当の、あざみ。
 情報収集が得意な、ハッキング担当の、モネ。
 そして、そっくりな物を作るのが得意な、偽造師担当の、ぼく。
『スパギャラ』のメンバーを、ぼくは気に入ってる。
 3人に出会う前、ぼくは自分が世界で1番の変わり者だと思ってた。
 でも、この世にはまだまだ自分を超える、変わったやつらがいるって気づいたんだ。
 世界の広さを感じたとき、ちょっと悲しかったけど、その何倍も嬉しかった。
 ぼくは、“ちょっと変わってる”だけだって、わかったからね。
「みんなとまた会えるまで、4年もかかるとは想像してなかったなぁ」
 黒い首輪をなぞりながら、ぼくは3人をながめた。
「これをつけられてからずっと監視されてたから、あの人からいつかは接触があるとは予想してたけど」
「おれはわかってたよ。4年前からはじまってた “ある事業”がもうすぐスタートするからね」
 そう言ったあざみの手には、いつの間にか、楓の財布と、モネのパソコン用のUSBメモリがにぎられていた。その足元には、ぼくのエナメルバッグまである。
「まじか、わたしは一生会えへんと思っとった!」
 目を丸くする楓は、あざみを引きはがしながらも、モネとぼくとの間合いをしっかり把握してる。
「ぼ、僕も会えるとしても、ネット上だと思ってた」
 小刻みにうなずくモネのパソコンの画面には、あざみと楓、そして、ぼくのスマホの画面が映ってた。
 いつの間にか、ハッキングされてる。
 ぼくの口角は、自然に上がる。
 ほんと、この3人は、油断も隙もない。
 スパンッ
 突然、勢いよく襖が開いて。
「よお、クソガキども、久しぶりだな」
 鳳凰が刺繡された黒いスーツを身にまとった男が、部屋に入ってきた。

(つづく)

作品紹介



100億円求人
作:あんのまる 絵:moto
発売日:2024年02月07日

前代未聞、大胆不敵。最高にスリリングであざやかな頭脳戦!
腕力担当×作戦立案×ハッカー×偽造師。
全員曲者、そろえば最強の4人でいどむは、
命がけの「騙し合い」。

世界が注目するカジノシティ【トコヨノクニ】でのパーティーを舞台に、【報酬:100億円】の求人で集められた4人がいどむ、前代未聞、大胆不敵、最高にスリリングであざやかな頭脳戦!

ムカつく世界は、自由に元気に振り回せ――角川つばさ文庫「トップ・シークレット」あんのまるがおくる、「ぜったい騙される」極上の痛快エンターテインメント小説!

  ◆

いい? これからはじまるのは、
三つ巴の「騙し合い」ゲーム。

舞台、海上に浮かぶカジノシティ【トコヨノクニ】。
そのオープニングセレモニーに集うのは、
稀代の武器商人・本郷が遺した「どんな夢も叶えてくれる場所」"蓬莱郷"へたどり着こうと必死なワルい大人たち。
そこへ呼び集められたのは、ぼくたち4人の中学生。
パーティーの展示品・蓬莱郷へ至る鍵である「玉枝」をゲットする、っていうのが仕事の内容だ。

……え?
なんでぼくたちが、そんなヤバそうな「求人」に関わるのかって?
それは読んでからのお楽しみ。
まあ、色々あったんだ。

たとえば――ぼくの首には現在、
言うことを聞かないと、ボタン一つでいつでもドカン! と爆発させられる「監視用デバイス」がつけられてるから、とかさ。


100億円を稼いだら、きみならなにをする?
きっとなんだってできるし、どんな人生からも逃げられる。なんてね!

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