【連載小説】ヨーロッパ企画の傑作と『四畳半神話大系』がまさかの融合! 森見登美彦・著 上田 誠・原案「四畳半タイムマシンブルース」#1-7
森見登美彦・著 上田 誠・原案「四畳半タイムマシンブルース」

※本記事は連載小説です。
>>前話を読む
○
銭湯から出ると、八月の長い夕暮れが始まっていた。
「いくぞ、いくぞ、いくぞ」
風呂桶をチャカポコ叩いて気勢を上げる。
その目的はただひとつ。明石さんを五山送り火見物に誘うことである。
高野川にさしかかったとき、橋向こうの御蔭通にほっそりとした人影が見えた。私はドキンとして立ち止まった。明石さんであった。こちらに気づいた様子はなく、彼女は下鴨神社・糺ノ森の方へ歩いていく。
撮影終了後、明石さんが「古本市へ行く」と言っていたことを思いだした。