第1回 柳川貴代(Fragment)さん
四六判のモノ語り 〜あの本を作った、あの人の話を聞きに行く〜
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大人が、かるくひらいた掌の指先から、手首まで――
だいたいそれが、一番ポピュラーな単行本判型・四六判の大きさ。
この小宇宙に込められた、「モノ作り」の思いを、
著者と並ぶもうひとりの立役者、装幀家に訊きました。
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四六判 薄ボール表紙・角背上製ホローバック
カバー サガンGAプラチナホワイト/130kg+グロスニス
本表紙 バックナチュラルN/ハトロン判T/119kg
見返し タントセレクトTS-6/N-1/100kg
扉 NTラシャ/無垢/100kg
帯 ヴァンヌーボV/スノーホワイト/130kg+グロスニス
花布 アサヒクロスA28
スピン アサヒクロスA3
「カバーの2色ミックスは賭けでした」
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「佐藤亜紀さんの本は読者としてずっと読んでおり、他社で装幀を担当させていただいたこともあります。今回は一読して、今までにない疾走感と躍動感、ある種の楽しさみたいなものがあり、これをデザインの中心にしたいと思いました。そして、なんと言っても登場する音楽が魅力的で――結果、アナログレコードのジャケットをイメージした装幀になりました。信濃八太郎さんの絵を生かして、色は2色でパキッと、力強く、と。
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カバーのオレンジは、2種類のインキを混ぜています。特色の落ち着いたオレンジ70%に、少しだけ軽やかさを出すため、蛍光色を30%。仕上がりは賭けみたいなところもありましたが、初校の仕上がりが素晴らしかったので、一発でOKとなりました。紙は信濃さんの筆の力感を再現するため、少しザラつき感があるものを選んでいます。見返しはもう少し密度の高い、やはりザラっとした紙、扉はまた別のテクスチャーがあるものを、と、手触りの違いを味わってもらえるように組み合わせました。自分が読者だった頃から紙の質感は気にしていたので、今でも考えるのが楽しいですね。
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カバーが本の服なら、本表紙は身体――こちらはジャズに合わせて踊る人たちをメインに、さらに軽やかな感じにしました。佐藤さんの小説を読まれるような方は、楽しいだけの話であるわけないって最初からわかっていますよね。だからこそ、この暗い時代を描いた物語の中にも確実にある楽しさを、デザインに織り込んでもいいんじゃないかと思いました。一方で恐怖や悲しみも欠かせない要素なので、初版も重版も帯に黒ベタを使い、表現しています。
勿論、これまでの愛読者の方に喜んでいただけたら嬉しいですけれど、今回は佐藤さんの小説を読んだことがなかった方にも手にとってほしいですね。そう思って作りました」
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