第2回 須田杏菜さん(KADOKAWAデザインルーム)
四六判のモノ語り 〜あの本を作った、あの人の話を聞きに行く〜
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大人が、かるくひらいた掌の指先から、手首まで――
だいたいそれが、一番ポピュラーな単行本判型・四六判の大きさ。
この小宇宙に込められた、「モノ作り」の思いを、
著者と並ぶもうひとりの立役者、装幀家に訊きました。
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四六判 並製
カバー ジェントルフェイス/46/T 135kg+OPニス
本表紙 F1カード/46/Y 22.5kg+グロスPP
見返し NTラシャ みずいろ/46/Y 100kg
扉 TS-9 N-7/46/Y 100kg
帯 モフル ペシェ/46/Y 90kg+OPニス
「SNSで拡散したくなるような、かわいいパワーを放つ本」
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「この本は、はあちゅうさんの初めての小説です。主人公と、「ヒカリさん」という素敵な女性の対話形式で進むお話で、自己啓発的な要素もあり、普通のフィクションよりも、少しだけ身近な印象でした。タイトルもダイレクトに伝わりやすいものだし、これをはあちゅうさんご自身がSNSなどで告知したら、かなり売れるのではないかと思いました。そうだ、発信したいと思ってもらえるようなかわいい本にしよう、と思ったのが本作りの原点です。
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カバーイラストのやがわまきさんは、雑貨を作ったりもされているので、グッズとして映えるキュートさをわかっていらっしゃる方です。やがわさん描くキュートな女の子に、「ウツ」というタイトルをポジティヴに見せるようなピンクのポップなロゴを載せて、カバーを取った表紙はこの子が着ているキャミと同じ花柄にしました。表紙に4色印刷ってあまりないのですが、何だったらカバーを外して持ち歩いてもらってもいいのよ、くらいのお洒落さにしたかったので、がんばって原価を合わせました。自分でも本を買って、表紙が凝っていると嬉しいですし。あまりに全面的に甘々だと締まらないので、見返しのブルーでちょっとキリッと。本文を刷っているインキも実は濃いブルーなんですよ。
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私自身の欲望がいちばん出ているのは、中扉かもしれません。チェックのエンボス加工が施してある紙でときめき度を上げて、タイトルは欧文にしたかったので、編集長に交渉したり(普通は日本語を入れる約束です)、担当でもなんでもない編集さんに頼んで英訳作ってもらったり……ほんとにみなさんすみません。
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電子書籍も便利ですけど、紙の本は触れたり、眺めたりしながら中の物語と向き合う楽しみがありますね。だからこそ、物としての存在感を持った素敵な本を作りたいと思っています」
(すだ・あんな)
大学では油絵科でアートを学び、卒業後エディトリアルデザインの事務所で働いたのち現在はKADOKAWA文芸・ノンフィクション局デザインルームに在籍。ジャンル問わず本のデザインをしている。最近の担当作は、『うつヌケ』(田中圭一)『アノニム』(原田マハ)等。