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連載

カドブン meets 本が好き! vol.23

急激にスポットライトの当たった2000年前後。コロナのクラスターとしてバッシングを受け、愛田武亡き後、愛本店が閉店した2020年。ホスト業界の栄枯盛衰を描く。『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
>>青春小説のスタイルを取りながらステレオタイプさをまったく感じさせない新しさ


書影

石井光太『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』(KADOKAWA)


第23回のベストレビューは、祐太郎さんの『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』(著者・石井光太)に決まりました。祐太郎さん、ありがとうございました。

急激にスポットライトの当たった2000年前後。コロナのクラスターとしてバッシングを受け、愛田武亡き後、愛本店が閉店した2020年。ホスト業界の栄枯盛衰を描く。

レビュアー:祐太郎 さん

2020年5月、新型コロナウイルス第2波におけるクラスターの発信源として歌舞伎町のホストクラブは激しいバッシングを受け、ホスト界のレジェンドである故・愛田武が築いた金ぴかの愛本店はビルの改築に伴い6月末をもって閉店した(別のビルに移転する)。

完全歩合制(持ち出し有)として高度経済成長期にスタートしたホスト業。テレビにも数多く取り上げられた金ぴかの愛田武がホストの基本給を明確にして店を構えたのは1971年であった。
それまで賃金体系や店内体制も含め「無法地帯」であったホスト業界。家庭環境等に問題がある若者たちは、ホストのトップリーダーとして文字通り金ぴかで活躍する愛田武という希望にすがって多くの若者たちが歌舞伎町の愛本店に足を運んだ。そんな男たちに金をつぎ込むのはやはり満たされない思いに駆られる風俗嬢たちである。

愛田武がテレビに出たとしてもあくまで日陰の存在であったホストたち。しかしNo.1として君臨してきた零士がテレビに出演し「ガブガブいっちゃうよ〜!」でフィーチャーされると、2000年前後はホスト業界全体にスポットライトがあたり、一般女性もホスト店に通うようになる。ホスト業界が大きくなると混乱も増え治安も悪くなる。そこに乗り込んだのが東京都知事・石原慎太郎の歌舞伎町浄化作戦である。そして,リーマンショックや東日本大震災を迎える。

この厳しい環境の中、システマティックに店を広げていくホスト、血で血を洗うようなホスト業界から身を引くホスト、この変化に耐えられなかったホストに分かれていく。そして、環境変化に対応することなくホスト界のレジェンドとして君臨してきた愛グループは、愛田武が2011年に病に倒れ二代目の乱脈経営に走ると、一気に失墜。愛本店はグループダンディに買収され、愛田は2018年に死去した。彼が心血を注いだ愛本店はビルの建て替え工事のため店自体が2020年6月末に閉店した。

著者は、陽の当たらないアウトサイダーを描き続ける石井光太。とはいえ、今回の本は対象が今までとは異なる点が多い。ホスト業界自体は確かに陽の当たらない世界かもしれないけれど、取り上げられた人の多くは、そんなホスト業界で一度は成功し巨額の金をつかんだ人たちがほとんどである。

今回の本は、ホスト業界の栄枯盛衰に重心が置かれており、売れていない一般ホストやホストに入れ込んで多額の借金に苦しんだ女性など著者がこれまで扱ってきた陽の当っていない世界のなかの「最底辺」の人たちはあまり取りあげられてない。正直、対象に寄り添いながら様々な関係者から多角的に人物像に突っ込んでいく描き方は今回少ない。今までの著者の書きぶりがいかんなく発揮されたのは、通称「八王子ホスト殺人事件」や愛田武が病に倒れたあとに転がり落ちる愛田観光の様子を描いた部分であろう。ホスト業界に関する続編があるなら、ぜひこの辺りに焦点を当てることを期待したい。

いずれにせよ、テレビで取り上げられている程度にしか知らなかった業界。50年にわたるホスト業界の栄枯盛衰を知って歌舞伎町やホストのニュースを見るとまったく違うものが見えてくる。

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▼書籍の詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321811001053/
▼祐太郎さんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no5097/index.html


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