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特集

伝説のホストが語る歌舞伎町ホストクラブ50年史【イベントレポート】『夢幻の街』刊行記念 森沢拓也×手塚マキ×石井光太

歌舞伎町のホストクラブの半世紀の激動の歴史をまとめた『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』の刊行を記念して、10月31日(土)に本屋B&Bからオンライントークイベントが配信されました。著者の石井光太さんを聞き手に、現在はオーナーを務める二人の元カリスマホスト、森沢拓也さん(ROMANCE会長)と手塚マキさん(Smappa! Group会長)が登場し、現役時代から今までの歌舞伎町について、そしてこれから先の未来について語ってくださいました。そんなイベントの様子を一部抜粋で、レポートします!


書影

石井光太『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』(KADOKAWA)
※画像タップでKADOKAWA公式サイトへ移動します。


「ホストクラブに行くなら歌舞伎町」というブランド

缶ビールを片手にリラックスした雰囲気で、イベントはまず、お二人が現役時代の話からスタートしました。1990年代に起こったホストブームの中心となった森沢さんのお店「ロマンス」で、当時売れっ子だった香咲真也や向井英二と同世代として、別の店で働いていた手塚さん。彼らの売り上げを聞いて頑張ろうと思っていたという当時、他店に所属していながら、森沢さんからは「お前の売り上げは大したことない」と言われたことがあるそう。そんな森沢さんとの関係を「同じ筋の先輩で、叔父貴にあたる」と話します。イベント後半では、入店当時から森沢さんに似ていると言われていたというエピソードも披露。手塚さんが「森沢さんは覚えていないと思うんです」と語る当時のやり取りを、森沢さんも笑いながら聞く姿に、お二人の長年の関係性が見えるようでした。

さらに、そこから話はお二人が20年以上働く「歌舞伎町」という街についてへ。「ホストクラブに行くなら歌舞伎町ってブランド化してるんじゃないですかね」と森沢さんが言うように、今では歌舞伎町に300店ほどあるホストクラブは、地方では成り立たないのが現実になっているそう。また、歌舞伎町のなかでも「90%くらいは同じような営業スタイルでやっているからお店も移りやすい」と、昔と変わってきた歌舞伎町のホストクラブの現状について、話が及びます。

リアルタイムで視聴者から寄せられる質問に答える形で、90年代から現在まで、まさにホストクラブの「生き字引」のお二人からリアルなお話が飛び出しました。以下、当日のやり取りです。

経営者として成功するのは時の運

石井光太(以下、石井) 「経営者になって成功するホストってどんなタイプが多いんですか?」という質問ですが、これは手塚さんがよくおっしゃってますよね。プレーヤーをさっさとやめた人間のほうがいいと。


石井さん写真

石井光太さん

手塚マキ(以下、手塚) そうですね。僕の同世代の売れっ子たちは、全員経営失敗してますから。経営とホストって仕事が全く別ですよね。しかも、若い時に独立しちゃうんで、経営の勉強もろくにしないで。そうすると、なんで自分ができたのにみんなできないんだっていうジレンマで、つぶれちゃってますよね。勉強をちゃんとしないで、カリスマ性だけでみんなやっちゃったと思うんで。


手塚さん写真

手塚マキさん

石井 森沢さんはどう思われますか?

森沢拓也(以下、森沢) 時の運もあるんじゃないですかね。乗ってる時は何やっても乗ってるんですよ。誰でもいけると思うんです。よく私も思うんですけど、手塚さんなんかも、私のことを崇拝してくれますけど、私じゃなくても、誰か必ずこういうことをやったと思うんですよ。たまたま私がやったというだけで。だから、運もかなり強いと思います。なので、一概に言えないですよね。私も、多分手塚さんも、そんなに経営の勉強をしないでオーナーになりましたが、現場で学びながら成長していったと思うんです。ただその中に、諦めないっていうのはあったかもしれないですね。やり込む、やり抜く、諦めないみたいな。ちょっと根性論じみてますけど、そういうのがあったんじゃないでしょうか。


森沢さん写真

森沢拓也さん

手塚 そこに森沢さんの場合、結果がついてきたんで、やりがいにもなったんじゃないですかね。

森沢 ラッキーだったね。

手塚 なかなかそうはいかないですよね、みんな。気持ちはあっても。

コロナ禍で突きつけられた歌舞伎町の「たくましさ」

石井 コロナの話になりますが、4月、5月の頃は、歌舞伎町はまさに悪者扱をされていろいろありましたが、逆に言うと、閉じられていたから成り立っていたビジネスというところに対して、行政も含めていろんな人の目が届くようになってきたし、内部でもまた変わっていくと思うんです。手塚さんは、これからどういう風に歌舞伎町のホスト業界って変わっていくと思いますか?

手塚 社会的に考えるとネガティブかもしれないですね。ものすごく、もぐり体質になっている感じはします、昔っぽく。実際に、4月、5月とか、コロナ関係ないって言ってた奴らがボロ儲けしちゃってるんですよ。結局、ボロ儲けした奴らが正しいみたいな。所詮「金を稼いだ奴が正義」みたいな文化が歌舞伎町だなっていうのが、今回すごく突きつけられたことですね。ある意味、とてもたくましいですよ。

石井 おっしゃってましたよね“金”のぶれない強さっていうことを。手塚さんが他の店にそれを感じて、へこんじゃうというか。

森沢 いろんな人と話すから、余計にそうなんだろうね。

手塚 びっくりしました。モラルもなんもないんですよ、本当に(笑)。

石井 緊急事態宣言中って森沢さんはどうされてたんですか?

森沢 個人的にですか? 家でヨガしてましたけど(笑)。

石井 なるほど(笑)。

森沢 店ではクラスターが発生して大変でしたけど。

手塚 本当に、これはあの時にロマンスの対応が良かったからこそ、“官民一体”っていうことを保健所と新宿区長が言い出したんですよ。

森沢 社長の三上に感謝だね。

手塚 本当にそうです。ロマンスの対応が素晴らしいと、僕が最初に6月2日に新宿区役所に行った時にも、ロマンスとは言わなかったですけど、すごく褒めてました。だから、ホストクラブっていうのは、他の人たちも、すごくいい人たちなんだって行政が思っちゃったんですよ。それが結構大きくて。

石井 まあ悪いところもいっぱいありますからね(笑)。

手塚 それで僕とかもちゃんと話してたので、あ、まともに喋れるな、みたいになっちゃって。

森沢 褒められたところが儲からなくて、褒められてないところが儲かるっていうね。

手塚 行儀が悪いことで有名な某大手グループには保健所も手をこまねいてしまったようでした。すぐに全員検査してくれ! と保健所の都合を考えない管理者が居たり、猫を飼っているからと言って入院を拒む人が出てきたり。

石井 無茶苦茶ですね(笑)。

手塚 無茶苦茶な人もいるのが歌舞伎町です(笑)。

森沢 村から外に出しちゃダメなんだよね。村には村の法律があるから。たまたま僕も手塚さんも村の外に出ちゃったから、村の外の法律も知ってるけど、村にいる人は村の法律しか知らないから。

手塚 そうなんですよ。で、やっぱりその村の法律の中が居心地いい人たちがお金を使ってるんですよね。すごく難しいですよ。

森沢 でも、別にそれで善い悪いって話ではないんですよ。否定も肯定もしないですけど、ひとつのカルチャーなんで。その村の中でも、すごいお金が動いているっていうことは事実は事実なんで。

石井 そこにロマンもありますしね。

森沢 よく言うんですけど、手塚さんも5、6店舗やってて、僕もお店があって、雇用をそれだけ作ってるんで、犯罪に手を染める人を防いでるんですよ。ホストクラブがなかったら、もっと犯罪が増えていると思います。雇用を作って、かつ、その雇用を守ってると思います。稼いでる人は別ですけど、稼いでない人の雇用をかなり守ってるんです。

石井 緊急事態宣言中に、手塚さんに連絡した時に、やっぱり店の経営はやらざるをえないと言われました。それはなぜかというと、店を閉めてあいつらが野放しになるほうが怖い。野放しにしたら何されるかわかんない、と。それだったら店を開けてその時間を拘束したほうがいい。もう、狼を飼ってるみたいな感じですよね。山から狼を出してはいけないみたいな、そんな感じでしたもんね。

手塚 ホストが悪いことするんじゃなくて、悪いことする奴がホストになるんで。そうなんですよ。別に、我々の問題じゃなくて、社会の問題なんですよ。

今の歌舞伎町のスタンダードを越えた先へ続く礎を作れるか

石井 「これからの野望を教えてください」という質問が来ています。

手塚 やっぱり最近思うのは、たとえば愛田観光がある中で、ロマンスが90年代に活躍して何かを作っていくみたいなことがあって。今のホストクラブって、当時の愛田観光とはまた別物だと思うんです。今のホストクラブの文化を作りだしたのは、たとえば真っ白なお店を作ったり、給料を変えるのもそうだし、広告の出し方を変えるのもそうだし、とにかく業界が一歩前に進むのか、横に行くのか、っていう時に、進んでいく感じを作り出して、それを文化として広めたのがロマンスだったんですよ。でも、そういう感覚が今の業界ってもうないんですよね。そんな中で、夢も希望もないです。僕は。

石井 言い切りましたね。

手塚 でも悔しいですね。さすがにもう20何年もこの業界にいて、後輩たちがそんな拝金主義の奴らに負けて「スマッパ! グループってなんか、古くてなんとかな店だね」って言われたりするのもイラッとするんで、イケイケの後輩たちに経営を任せ、甘い汁を吸う状況を作りたいです。

森沢 (笑)。

手塚 これは野望ですよ。一世代下の奴らに、しっかりと歌舞伎町と戦ってもらいたいです。

石井 森沢さんは何かありますか?

森沢 野望っていうか、ここまで引っかき回してきたんで、最後まで責任持ってやろうかなって。やっぱりロマンスは光ってないとロマンスじゃないんで。ただ、僕自身が現役の経営者で、目の前のマンモスを見てる状態ではないので、マンモスを見てる状態の人たちがきちんとやっていけばいいのかなとは思ってますよね。今日お声がけしていただいたこともそうですけど、さっきマキにも「よく来ましたね」って言われて。僕自身がこういうのを面倒くさがっているように見えるんで、そういうのは一切排除して、声がかかったら、どんどん前に出ていこうかなとは思ってます。石井さんの本を読んでて、受け入れなきゃなって思いました。実際、自分の店がやってきたことっていうのは間違いないんで。なので、まだまだスタイリッシュなものを生み出せたら、生み出したいな。生み出します。

手塚 森沢さんが90年代に新しくしていこうと変えていったものが、はっきり言って、今なんにも進化していない。この業界の店の質はマジで上がってないと思いますし。愛本店からロマンスをはじめとした今のホストクラブの状況ができたというところから、さらに次のイノベーションが生まれることがあるのかどうかっていうところだと思います。このままだらだらいくのか。上場するような真面目なところも出てくるかもしれないし、エンタメを重要視するところが出てくるかもしれない。そうやって多様化していきながらホストクラブが変わっていくと、女性の遊ぶ場所の選択肢も増えていくと思います。ホストクラブってみんな一緒じゃないかっていう状況が業界を大きくしてるっていうのを越えた先を作れる礎を、ポンポンって僕とか森沢さんが投入できるといいかもしれないですけどね。

森沢 そうだね。


お二人のお話は、ホストクラブの経営や広告について、またホストたちの内部事情、当時のエースホストたちとの交流、さらに昨今話題のローランドについてまで及び、あっという間にイベント終了のお時間に。歌舞伎町と一定の距離を保ちつつも、20年以上の時間に積み重ねられた愛を感じさせるお二人の真摯な言葉が印象的なイベントとなりました。

文:和田めぐみ
写真:坂本慎平

書誌情報

書名: 夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年
著者:石井光太
発売日:2020年9月25日(金) ※電子書籍同時発売
定価:本体1,600円+税
体裁:四六判並製・320ページ
装丁:國枝達也
カバー写真:森山大道
ISBN:9784041080238
発行:株式会社KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/321811001053/

内容紹介

新宿歌舞伎町ホストクラブの半世紀。「夜の街」の真実を描く!
「どうせ社会の側の人たちが僕らに理解を示してくれることなんてないでしょう」
これは、生きる場所を求めて歌舞伎町に集まった若者たちの、泡のように淡い夢と重い現実の物語である。新型コロナの震源地と呼ばれた「夜の街」とは? 新宿歌舞伎町という虚構と真実の入り混じる街で、ホストたちはどんな半世紀をたどってきたのか。ホストブーム、浄化作戦、東日本大震災、愛田武の死、そして新型コロナ……激動の街を描くノンフィクション。

目次

プロローグ 男たちの漂流
第一章 「愛」の時代 
  愛本店/朱美とニュー愛/暴力団との癒着/バブル崩壊
第二章 ロストジェネレーション 
  男の園/トップダンディー/ロマンス
第三章 革命
  ロマンス黎明期/記録の男/広告革命/ホストの女/芸能人
第四章 ホストブーム
  第一波/客層の変化/第二の波/仁義なき戦い
第五章 歌舞伎町浄化作戦
  都知事/協力会結成/栄枯盛衰
第六章 寵児
  グループ戦略/イケメン戦略/滅亡
第七章 落城
  レジェンド/お家騒動/愛の買収/巨星堕つ
エピローグ  新型コロナの震源地と呼ばれて

著者略歴

石井光太(いしい・こうた)
1977年東京都生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。著書に『絶対貧困 世界リアル貧困学講義』『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』など多数。


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