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角川文庫キャラホラ通信

【キャラホラ通信8月号】『京都なぞとき四季報 古書と誤解と銀河鉄道』刊行記念 円居挽インタビュー

角川文庫キャラホラ通信

四季折々の京都を舞台に大学生たちが「不思議」に出会う、街歩き日常ミステリー「京都なぞとき四季報」待望の第2弾が発売。著者の円居挽さんは、京都大学推理小説研究会(ミス研)出身。季節感あふれる爽やかなミステリーの魅力を語っていただきました。

――シリーズ未読の読者のために、シリーズの読みどころと、最新刊を書き終えた感想を教えていただけますか?

円居:京都で起きる人死にが出ない程度の不思議な事件を楽しみつつ、主人公の恋愛模様を追いかけていただける、楽しいミステリーです。
 今作は、執筆時期が飛び飛びだったので、毎度前回の自分の気持ちを思い出すところから始めないといけないのが地味に大変でした(笑)。あとようやく学生気分が抜けてきたのもあって、学生生活を眺める視点も随分変わってきまして……そんな自分の変化と戦いながら書いた一作になりましたね。

――そもそも京都を舞台にした理由は何だったのでしょうか。また、京都を舞台にすることの難しさと面白さはどういうところにあるでしょうか?

円居:学生時代を過ごした場所だから書き易そうだと思って京都を舞台にしたのですが、そうした強みを活かそうとしすぎると「大学近くのあの定食屋が美味しい」的なニッチな方向に行ってしまいがちなのが難しいところですね。でもニッチな情報を香り付けに上手く使えると手応えを感じるのが面白いんですよ。

――本作は、青春小説であり、本格的なミステリーでもあります。その配分など気を付けていることはありますか?

円居:このシリーズは「京都の名所で不思議な事件に巻き込まれた大学生がバーでカクテルを飲んで謎を解決する」という形式なので、初期はそれを消化するだけで精一杯でした。あと続刊前提の気軽に読めるミステリー短編集として書き始めたのですが、1巻の親本が出た際、「これで終わりなの?」という感想が多くて、一冊の本としてはやや消化不良だったかなという反省がありました。
 なので、2巻では基本の形式を踏まえつつも、遠近自身の事件を多く描いてみました。結果的には青春部分とミステリー部分の結びつきが強くなって、より身近に感じてもらえるお話になったのではないかと思います。

――前作は、ヤサカタクシー、京都水族館など、今作は、古本市、鉄道博物館、時代祭など、京都の風物詩がたくさん登場し、読みどころとなっていますね。このイベントのチョイスはどのように決めているのですか?

円居:「京都といえばこれ!」というベタな直球と「え、こんなのあるの?」みたいな変化球を投げ分けるイメージで選んでいます。あと教えて貰ったもの、自分が体験したものも書いたりします。ちなみに本作1話目の「たまにはセドリー・オン・ザ・ロックスを」は下鴨神社の古本市が舞台ですが、古本市バイトは実体験なんですよ。

――円居さんは京大ミス研のご出身ですが、その当時の思い出や出来事が、このシリーズに投影されたりしているのでしょうか?

円居:このシリーズでは、恋愛模様が描かれていますが、僕のいたミス研では特に色っぽい話はありませんでしたが(笑)、あそこで過ごした学生生活が今でも小説の素材になっていたりします。あとミス研の話ではありませんが、ゼミの先輩が突然「今から山登らない?」と言い出して、みんなして夜に大文字山に登った思い出があります。これは割とそのままの形で、今回作中に出しています。

――この2巻目は、主人公・遠近と、ヒロイン・青河さんの距離に大きな変化があり、ときめきました。二人を描く中で、特に気を配っていることはなんですか?

円居:1巻目の1話の開始時点で遠近が青河さんを好きになっていたので、彼女がどんな人間なのか、彼女の何がどう魅力的なのかを読者にしっかりと提示しきれなかったという反省がありまして……なので2巻では遠近の恋心のあやふやさを逆手に取ってみました。作者の中でもぼんやりしていた青河幸というキャラクターの輪郭がはっきりしたのもそうですが、今回は「好きな筈の人といるのに全然楽しくない。むしろ辛い」「好きな人と和解できて嬉しい」みたいな緊張と緩和を描けたのが良かったです。そういうことを描くこと自体、自分にしては珍しかったので。

――今回、灰原さんという、恋の行方に気になるキャラクターが登場しますね。

円居:開始時の遠近は二股をする性格でもなかったので、灰原は1巻1話が終わった時点でその役割を終えていたのですが、青河さんをより深く描くために、彼女と対になるようなキャラクターが欲しくて、彼女にもう一度登場してもらいました。なので、灰原は「人ってこんな瞬間、誰かに魅力を感じるよね」みたいな蓄積を使ってメイクアップしてみました。

――なるほど。灰原さん以外にも、魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、モデルはいるのですか?

円居:大学時代の先輩をキャラクターとして使うということはデビュー作からやってきたことなのですが、現実の面白い人をそのままキャラクターにすると、属性過多・エピソード過多だったり、行動に一貫性がなかったりと、悪いキャラメイクの見本みたいになってしまうことがよくありましてですね……。
 読んだ人と「だからこういう人いたんだって!」「いるわけねえだろ!」みたいな水掛論をやっても不毛だと気がついたので(笑)、“現実”は適宜必要に応じて投影するようにしてみました。
 そういう意味では灰原は特定のモデルはいなくて、意識的にキャラクターを立てることができた、ようやくの成功例と言っていいかもしれません。

――ちなみに一番お気に入りのキャラクターと、お気に入りのエピソードはどれでしょうか?

円居:上述の理由も込みで、今回のMVPは灰原ですね。ミステリ研編集長の瓶賀さんに関してはデビュー作にも登場しているキャラクターですが、あまりに描き易すぎて便利に使ってしまっているという自覚が……2巻での出番、多いですね(苦笑)。
 一番気に入っているエピソードは、2話目の「見えないブルー」でしょうか。本シリーズの転換点でもあり、作家円居挽にとっても小さな転換点なので。

――今回も「不思議」にまつわるカクテルがたくさん登場します。各話のトビラにはレシピが載っていますが、カクテルのチョイスはどのようにされているのですか? 事件に合わせて選ばれているのでしょうか? それともカクテルが先でしょうか? 

円居:事件に合わせてカクテルを探す方が多いでしょうか。これはこれで大変なのですが、京都にある『グランバール』というバーのマスターに相談したところ、快く監修を引き受けて下さいまして。
 一流のバーテンダーなので「こういうカクテルを探してるんですが」とお伺いを立てると、オーダー通りのカクテルか条件に合致するオリジナルカクテルをさっと見繕ってくれるんです。
 ちなみに『グランバール』では作中に出てくるカクテルを飲むことができます。お近くにお立ち寄りの際は是非!

 ★オススメ!

 グランバール (京都)
 http://www.grand-bar.com/ 

――前作に引き続き、神出鬼没のバー「三号館」と、不思議大好き謎の女マスター・蒼馬さんの今後も、とても気になるところですが、3巻目はどんな話になるのでしょう?

円居:非日常世界への案内人だった蒼馬さんですが、2巻でとうとう本性を現しました。ただ、遠近のことは気に入ってはいるようなので、今後も遠近が死なない範囲で彼を悩ませ続けると思います(笑)。
 また3巻目は「もし好きな人と付き合えたらそれって最高だよね」から「付き合ったらそれで終わりじゃないし、むしろ始まりだよ」という話を書いてみたいと思っています。まあ、あんまり夢がないのもあれなんでさじ加減は必要だと思いますが……でも懊悩する遠近を書くのが面白くなってきたので、なるべく楽しい懊悩にしてあげられたらなとは思ってますね。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。

円居:じきに自分が18歳だった頃に生まれた子たちが大学に入ってくるようですが、大学生の心を忘れずにやっていきたいと思います。引き続き応援よろしくお願いします!


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