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【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.42

【第202回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第202回】柚月裕子『誓いの証言』

「アキちゃんが――その人がどうかしたんですか」
 そこまで言って、大橋のなかですべてが繋がった。絡まった糸の結び目の先端が緩むと、そのあと一気にほどけるように、忘れていた久保という男の記憶も蘇ってくる。
「あいつだ――久保って、あのとき家に来た弁護士だ。平尾の隣で、かしこまって座っていた若い男――そうだ、きっとそうだ」
 大橋の独り言に、佐方が答えた。
「そうです。あなたがいま思い出した男が、久保利典に間違いありません。本人が、かつて大橋さんの家を訪れたことがある、そう言っています」
 佐方は久保の弁護人だった。不同意性交等罪の無実を主張する久保から頼まれて、この事件を調べているという。
 佐方は隣にいる小坂という助手に、資料を出すように命じた。小坂は手にしていたバッグから書類袋を取り出し、中身を座卓のうえに置いた。ユウカという女性のSNSのページを印刷したものだった。久保利典から暴行を受けたという内容が投稿されている。
「このユウカという女性が、まさか――」
 自分の想像が外れていてほしい、そう思いながら口にした大橋の望みを、佐方は打ち砕いた。
「ユウカがかつての原晶さん――現在の安藤晶さんです」
 はっきりと告げられても、まだ信じられない。いや、信じたくない。
「それは、間違いないんですか」
 訊ねると、小坂が答えた。
「私が彼女の戸籍を調べました。間違いありません」

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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