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レビュー

2030年の東京を予言! AI、ビッグデータ、ドローンを駆使したスーパーシティがテロの標的となる『地霊都市 東京第24特別区』

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(評者:大森 望 / 書評家)

 コロナ禍まっただ中の今年5月、政府肝煎りのいわゆる「スーパーシティ法案」(国家戦略特区法改正案)が成立した。要は、AIやビッグデータを駆使した未来都市(スマートシティとか、インテリジェントシティなどとも呼ばれる)建設を日本でも推進しよう! みたいな構想で、〝2030年の暮らし〟を先取りするものらしい。
 現在はまだ、日本各地の自治体から立候補や具体案を募っている段階だが、もしこのスーパーシティが東京都の西部に誕生したら? というのが、嶺里俊介のサスペンス長編『地霊都市 東京第24特別区』。

 作中のSC特別区は、東西が約3キロ、南北が約2・5キロ、高さ4メートルの壁に囲まれたエリア。審査をパスした富裕層だけが居住できる、いわゆるゲーテッドコミュニティだが、北半分はゲストエリアになっていて、IR(統合型リゾート)に準じたカジノとホテルが建設されている。
 物語は、このSC特別区ゲストエリアのオープン当日に幕を開ける。民放地上波のTVカメラも入るお祭り騒ぎのなか、そのセキュリティを司る安全管理センターの神代高志所長がドローンに乗って颯爽と生中継に登場。そのかたわらでは、オープン早々、一台のスロットマシンが10億円のジャックポットを引き当てていた……。
 この大当たりが、実は偶然ではなく、100億円の懸賞金を提示してダークWEBで公開されたミッション「SC特別区セキュリティシステムブレイク」と関係していることがやがて判明する。

 ――というわけで、スーパーシティのセキュリティを守る側と破ろうとする側の虚々実々の駆け引きと攻防が小説の軸になる。
 守る側の代表は、天才的なコンピュータ技術者でAI研究者でもある神代所長。この街を維持管理するシステムを構築し、ドローンやAIまでみずから設計している。
 現場の主役は、もともと遊技機のセキュリティ会社に勤めて、パチンコやパチスロのイカサマを暴く仕事をしていた緒形幹夫。ある事情から失業していたが、テレビ中継の映像からジャックポットの不正を見破った縁で、経験を買われてSC特別区の警備を担当する特殊法人『DOG』にスカウトされる。
 第1章では、大がかりな作戦をたててカジノを狙うグループとの戦いがスリリングに描かれる。第2章では、16カ国が集まるITサミットの会議がSC特別区で開かれることになり、それを標的とするテロが計画される……。

 いかにも現代的なハイテクスリラー/サイバーサスペンスだが、その背後で、不可解な死亡事例が多発。心筋梗塞としか思えない死の背後に、いったいなにがあるのか?
 この謎に関わってくるのが『地霊都市』というタイトル。本書冒頭に記された説明によれば、〝地霊〟とは、「建設業界用語。都市計画などで人工的に作られた街に生じる、景観など特有の雰囲気を指す。/ゲニウス・ロキ(Genius Loci)ともいう。/なお、ローマ神話では『土地を護る精霊』である」が、「――人を護るものではない」と言う。
 後半に入ると、最先端のテクノロジーと霊的なものとの衝突が物語に思いがけないひねりを加え、最後まで一気に読ませる。
 著者の嶺里俊介は、第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した『星宿る虫』でデビュー。その後も、『走馬灯症候群』『地棲魚』と、ミステリにホラー/SF的な要素をブレンドした長編を発表、本書が4作目。いままでにくらべるとホラー要素はぐっと背景に後退し、ユニークなアクセントとして機能している。



嶺里俊介『地霊都市 東京第24特別区』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000427/


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