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この一夜が主人公のその後の人生の礎になる――YOASOBI最新EP『THE BOOK 3』音楽×文学クロスレビュー③MUSIC「海のまにまに」×NOVEL「ユーレイ」より【評者:吉田大助】

アーティスト・俳優・アスリート・文化人・タレント――丸ごと1冊の「総力特集」という形で、取材対象の魅力を徹底的に深堀りする人気文芸・音楽誌『別冊カドカワ』。その最新号が、2023年10月4日(水)に発売となりました。

最新号に登場したのは、今最注目の“小説を音楽にするユニット”YOASOBI!
本記事では発売を記念して、『別冊カドカワ 総力特集 YOASOBI』に収録された「【カドブン連動】最新EP『THE BOOK 3』音楽×文学クロスレビュー」企画より、文学レビューパートを8日連続で特別公開します!
物語との出会いのきっかけとして、ぜひお役立てください。

【カドブン連動】最新EP『THE BOOK 3』音楽×文学クロスレビュー
小説を音楽にしてきたYOASOBI。“読むCD”としてリリースしてきた『THE BOOK』の最新EP収録曲の小説&楽曲を書評家と音楽ライターがひもといていく。双方の視点から見えてくる小説と音楽の密接な関係性とは──

(本記事は『別冊カドカワ 総力特集 YOASOBI』に掲載された内容を転載したものです)

YOASOBI最新EP『THE BOOK 3』音楽×文学クロスレビュー③MUSIC「海のまにまに」×NOVEL「ユーレイ」より

NOVEL「ユーレイ」――はじめて家出したときに読む物語
『はじめての』(水鈴社刊)収録
著:辻村深月

この一夜が主人公のその後の人生の礎になる
評者:吉田大助

 書き出しの一文は、YOASOBIのデビュー曲「夜に駆ける」を彷彿させる。〈電車は、夜の合間を縫うように走っていく〉。2018年本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』や最新作『この夏の星を見る』など、10代の少年少女たちの震える心を綴る筆致に定評がある、著者ならではの青春ミステリーだ。
 季節が夏から秋に変わるこの日、中学生の少女「私」は住み慣れた町を離れ、全財産分の片道切符を買って電車に乗った。しかし、ふと車窓から目にした夜の海に惹かれて途中下車し、海岸へと歩いていく。〈このまま、海に入っていくのもいいかもしれない〉。水難事故の被害者に手向けられたと思われる花束を見ていると、同い年ぐらいの白いワンピースを着た女の子が「ねえ、ひとり?」と声をかけてきた。ひょっとしたら彼女はこの場所で亡くなった人のユーレイかもしれないと思いながら─そう思えたからこそ、「私」は今まで誰にも言えなかった話を語り出す。
「私」は学校内で理不尽な事件に巻き込まれ、極端な選択を取ろうとしていた。〈私は悪くない。だから、見せるしかない。私が死んで、いなくなった世界の中で、あなたたちがみんな、反省すればいい〉。本人の中では強固で正しいものとなってしまったこの思考を、いかに打ち破るか。デビュー作以来、著者が折に触れて書き継いできた〝自死を止めるためのロジック〟というテーマが、本作の根幹をなしている。
 相手が幽霊だからこそ、相手が繰り出す生や死にまつわる言葉を真っすぐに受け止めることができる。〈ユーレイって、もっと、人を死に引きずり込んだりする、怖いものだと思っていた。こんなふうに、人を生きる方に繋ぎ止めたりするユーレイもいるのか〉。主人公が感じた意外性の先には、さらなる驚きが待っている。そして、この一夜が主人公のその後の人生の礎になる、と確信できるようになる。幕開けのダークな印象とは裏腹に、最後には必ず、心のどこかが温められる。

書籍紹介



はじめての
著者 :島本理生/辻村深月/宮部みゆき/森絵都
発売日:2022年02月16日

「はじめて」は、いつも痛くて、少し優しいー。
日本エンターテインメントの最前線&最高峰!


文芸の最前線で活躍する4人の直木賞作家が、“小説を音楽にする”ユニットYOASOBIとコラボレーションし、小説、音楽、映像など、さまざまなジャンルで作品を展開しながら物語世界をつくりあげていく、壮大なプロジェクトが始まりました。
小説のテーマは、「はじめて〇〇したときに読む物語」。

「『私だけの所有者』――はじめて人を好きになったときに読む物語」(島本理生)
「『ユーレイ』――はじめて家出したときに読む物語」(辻村深月)
「『色違いのトランプ』――はじめて容疑者になったときに読む物語」(宮部みゆき)
「『ヒカリノタネ』――はじめて告白したときに読む物語」(森絵都)

当代きっての人気作家たちが描く極上の「はじめて」が、新たな時代を象徴するYOASOBIの音楽と融合することで生まれる、かつてない読書体験です。

(あらすじ:水鈴社オフィシャルサイトより引用)

掲載誌紹介



別冊カドカワ 総力特集 YOASOBI
発売日:2023年10月04日

YOASOBI別カド初登場!文学的観点からもYOASOBIにフォーカス
デビュー曲「夜に駆ける」がストリーミング再生回数9億回を突破、全楽曲の総ストリーミング数は約60億を超える“小説を音楽にするユニット”YOASOBI。2023年4月、自身初となるツアー「YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”」では、全国7か所14公演で13万人を動員。同月、新宿・東急歌舞伎町タワー内 「THEATER MILANO-Za」にて実施したTikTok LIVEでは累計視聴約63万人、最大同時接続者数12万人超えを果たし、日本人アーティストのライブパフォーマンス史上最高記録を達成した。8月には88rising主催「HEAD IN THE CLOUDS Los Angeles」にて、初のLAフェス出演を果たすなど、海外ライブシーンでも話題となっている。

そんなYOASOBIが、2021年より“読むCD”としてシリーズ化してきたEPの3作目『THE BOOK 3』が、2023年10月4日(水)に発売決定。同作には、10月クールTVアニメ「葬送のフリーレン」オープニングテーマとして書き下ろした最新曲「勇者」、 島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都という4人の直木賞作家が原作小説を書き下ろし順次楽曲を発表していくプロジェクト「はじめての」から生まれた「ミスター」「好きだ」「海のまにまに」「セブンティーン」、TVアニメ「【推しの子】」オープニング主題歌として書き下ろし、Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で18週連続で総合首位を獲得、Billboard The Global Excl. U.S. top 10でも1位を獲得した「アイドル」など全10曲が収録される。

別冊カドカワでは、そんな最新EP『THE BOOK 3』をリリースしたAyase、ikuraの本人取材はもちろん、多角的な切り口の周辺取材によりYOASOBIの魅力を立体的に総力特集。また、“小説を音楽にする”という原点にも立ち返り、別冊カドカワならではの文学的側面からもアプローチすることで、日本の音楽シーンのトップを走るYOASOBIの原点から現在地、さらにこの先の未来までをも見据える。

もくじ
■YOASOBI最新撮り下ろしグラビア
■Ayase & ikura ロングソロインタビュー
■『THE BOOK 3』セルフライナーノーツ
■「旅する本屋さん YOASOBI号」密着
■YOASOBI立体的特集「アーティスト・プロファイリング」
■YOASOBI 言葉と楽曲と映像の連動
■YOASOBI COLUMN 共鳴
■YOASOBI×別カド×読者参加型企画
■『はじめての』文芸部 第1期部員 活動日誌
■CDショップのバイヤー&スタッフが選ぶ! YOASOBIリコメンドソング5
■YOASOBI PERFECT DISCOGRAPY&BIOGRAPHY    
…and more

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322306001062/
amazonページはこちら


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