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YouTuberと政治家は似ているのかもしれない――眞邊明人『28歳フリーターが総理大臣と総選挙で戦ってみた』レビュー【評者:KAZUYA】

政治ド素人が、腐った永田町を斬る!
眞邊明人『28歳フリーターが総理大臣と総選挙で戦ってみた』レビュー

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28歳フリーターが総理大臣と総選挙で戦ってみた​』

著者:眞邊明人



YouTuberと政治家は似ているのかもしれない。

書評:KAZUYA(政治系YouTuber)

 動画配信サイトはすっかり新しいメディアとして定着した感がある。私は10年前に動画投稿を始めたが、当時「YouTuber」なんて言葉は全く認知されていなかった。しかし今では老若男女誰でも知っているような状況だ。
 そんな時代にあって、本書は「YouTuber」と「政治」を絶妙に絡み合わせている。
 主人公の冬也は中学時代からの友人である太一とYouTubeの企画を通じて知り合った桃と「ReBOOT」なるチームを結成して活動をしている。不遇な過去を持つ3人が、何者かになるためにYouTubeでもがいていたのだ。
 当初は過激な企画で一定の登録者を得るが、半グレ集団に目をつけられて路線変更を余儀なくされる。
 そこで「政治」に目をつけ、冬也が演者として熱いメッセージを配信し、さらに支持者を獲得していくことになる。路線変更は現実でもよくある話だ。なんだかんだ皆数字が欲しい。可能性を模索する中で視聴数が伸びるものがあったら、最初の信念がどうとかは関係なく伸びる方を選択する人が多いだろう。
 迷惑系YouTuberから政治系YouTuberへの路線変更は成功したが、これはやはり冬也にカリスマ性があってこそだ。同じことを言っていても、再生数が伸びる人と伸びない人がいる。響く人と響かない人がいる。本質的には「誰が言ったか」より「何を言ったか」が大事だが、見た目や雰囲気、声質や言い方、表現方法等様々な要素が絡んでくる。そう考えると冬也には素質があったと言えるだろう。
 その後、ReBOOTは次のステップに進むため、政治家との対談を模索する。目をつけたのは与党最大派閥英政会のプリンスと呼ばれた幹事長代理の真坂尊であった。しかし相手は大物。流石に難しいのではないかと冬也は考えるが、意外にも尊の秘書の真坂喬太郎からメールの返信が届く。そしてこの接触こそ、ReBOOTのメンバーの運命を大きく左右することになるのだ。
 本書は実にポップというかYouTuber的なタイトルが付けられている。実際に冬也は運命に身を任せて総理大臣と総選挙で戦うわけだが、この辺の描写はかなりあっさりしていてタイトルに騙されたと思うかも知れない。しかし中盤から後半にかけて怒涛の展開になっていく。冬也のカリスマ性の源泉である出自も明らかになるのだが……あぁネタバレ書きたい。
 政治家としての冬也はYouTubeを駆使して国民へ発信し、そして政界の怪物たちと対峙していくことになる。おそらく最初は魔物たちも純粋な人々だったのだろう。しかし政治は非情なものだ。選挙で勝たなければ政策を推し進められないし、選挙に勝つためには受けたくない注文も受けなければいけない。やりたいことだけで政治は出来ないのだ。利用できるものはなんでも利用し、自分を棚に上げてでも敵対政党はボロカスに叩かなければいけない。しかし情勢が変われば敵と握手をする場合もある。こんなことを何期もやっていたら怪物にならない方がおかしい。怪物になれなかったとしたら、その人は何期当選しようとも、ほどほどの小物で終わるだろう。
 YouTuberも似ているのかも知れない。最初は純粋な気持ちで始めたとしても再生数の虜となってしまえば、どんどん自分を見失っていく。何者かになりたかったはずなのに、結局自分が何者かもっとわからなくなっていくのだ。ネットは直接意見を書くことが出来るのがメリットだが、心無い言葉に精神をすり減らすこともある。ある程度は仕方ないと分かっていても、割り切れない人も多いだろう。精神を病んでしまう場合だってあるのだ。
 ある意味、冬也は最初から最後まで迷惑系YouTuberだと言える。最初はYouTubeで人気を得るために過激な動画を作り、政治の世界に入ると日本中を巻き込んで思いもよらぬ行動に出ていく。本人の数奇な境遇がそうさせているのだが、第三者的視点で考えると事情なんてわからないわけだし、迷惑過ぎるだろう。しかしそれゆえに魅力的なのだ。何か他者とは違う光るものがあるからこそ、人を惹きつけることができる。
 読者は冬也を通して、政治のもどかしさも感じることだろう。政治は中々ストレートに進まない。常に紆余曲折があり、三歩進んで二歩下がるならまだしも、進んでいるような雰囲気はあるけど後退していたり、衝撃的な事件が起こると急に十歩進んだりする。現実政治も全く同じだ。人間は皆違うからこそ政治も食い違う。他人同士は当然として親子でも血みどろの抗争を繰り広げることだってある。本書は現実社会、現実政治とかなりリンクしている。だからこそ引き込まれるのだろう。

作品紹介



28歳フリーターが総理大臣と総選挙で戦ってみた​
著者 眞邊 明人
定価: 1,760円(本体1,600円+税)
発売日:2023年03月27日

政治ド素人が、腐った永田町を斬る!
30代を目前にフラフラしていた大河冬也は、政治系ユーチューバーとして人気を獲得し、与党幹事長代理・真坂尊に対談を申し込む。すると、冬也のカリスマ性に注目した、尊の秘書で息子の喬太郎から、尊が旗揚げした新党の候補者として衆議院解散総選挙に出馬するよう説得される。幼なじみの仲間の後押しもあり立候補を決意した冬也は、ユーチューバーならではの斬新なアイディアを掲げ若者を中心に国民的人気を博すが、地位や権力にしがみつく老兵たちの争いに巻き込まれていく。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322111000528/
amazonページはこちら

評者プロフィール

KAZUYA
1988年、北海道帯広市生まれ。2012年にYouTube、ニコニコ動画に「KAZUYA CANNEL」を開設。以来、ニュースや政治などを取り扱った動画をほぼ毎日発信している。現在YouTubeチャンネル登録者数は、67万人を突破している。


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