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(評者:石川 翔鈴 / 女優・タレント)
うまく言葉にできないけれど、風里と同じように、読み手のわたしたちも春になり桜が咲くたびにこの物語を思い出してしまうのだろうと思う。
どこにでもある日常。
幼なじみでありながら、年齢を重ねると共に少し遠くなる距離感。そこで感じる寂しさやもどかしさ。ふと気づいた時にかっこよく見えて、相手の成長に気づく瞬間、嫉妬の裏に隠した"好き"の気持ち。
この気持ちはきっと誰しもが感じたことのある気持ちだと思う。
だから妙にリアルで、スッと内容が入ってきやすかったし、共感もできた。
学校の人気者で、容姿やスタイルだけではなく、成績や運動神経、全てにおいて完璧で非の打ちどころのない、天才サッカー少年とまで呼ばれた千冬が、実は絵が苦手なこと。全てが完璧じゃなくて少しクスッと笑えたし、安心した。
風里の家では小児喘息を患っている弟の悠里が最優先で、風里は大抵のことが後回しにされること。わがままを言えないこと。
親の前でもいい顔ばかりしてしまうこと。きっと寂しいはずなのに、甘えたいはずなのに……風里の気持ちを考えると胸が締め付けられた。
私が逆(悠里)の立場だったので、兄を同じような気持ちにさせてしまっていたのかなとつい考えた。
日常の中にたまにあるキュン。
そのシーンが来るたびに心臓が早くなるのを感じた。
ここまでなら普通の恋愛ものと同じかもしれないが、ただの幸せが続かないのがこの作品の面白いところであり、切ないところだと思う。
彼の、冷たい手。秘密を隠し、逃げるようにして去る後ろ姿。無理しているのを隠すように笑う顔。
弱々しく、自身が病気を患っていることを告白する姿。
100日目がいつくるのか、震えながら待つ日々。
怖くて、苦しくて、切なくて、寂しくて、でもどこか温かくて、特別で、そんな物語。
読み終わった時には鳥肌がたっていた。
そして本を読んでも泣いたことのない私が泣いていた。
また次の春に読み返したくなる本です。
▼miNato『100日後、きみのいない春が来る。』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000353/