【カドブンレビュー】
僕は本作の「映画監督との脳内ブレスト」という内容に惹かれたし、何より川村元気さんのプロデュースする映画がすごく好きだ。だからこそ今回は内容を楽しむのはもちろん、何か仕事に活かせないかという観点で読み進めることにした。
この本のポイントは、「この監督とブレストしてみたらどうなるか」という、まさにその人が眼前にいるような想像力でもって、作品はもちろん、経歴から住んでいるところ、人柄、人間関係でどこを重要視するのか、ということを徹底的に分析する点にある。
身近にいる人は、普段から接する機会が多いためどのような発言をしそうというのも想像できる。ただ今回の場合は、接点の無い、しかも情報もなかなかオープンになっていない、いわゆる巨匠たちとのブレストを実施するのだ。
彼らの作品についての知識だけでなく、インタビュー記事などで実際話している内容の一部を抜粋し、そこからキャラクターを創造したり、作品へのこだわりを反映させたりと、読み物の形に置き直してはいるが、仮想脳内ブレストをするために巨匠たちの嗜好をかなり細かく分析していることがわかる。
ブレストに限らず、会議などで相手の発言内容を事前にシミュレーションするとき、本当に自分はその人のことをよく知っているだろうか。なぜその発言をしそうかまで自信を持てるだろうか。改めて、観察眼の磨き方を教わったような気がした。クリエイティブな発想が必要な人はもちろん、誰かをしっかり理解し、その人の期待をこえるような成果を出したいと思っている人にもオススメの一冊だ。