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主要登場人物28名! 最大限に拡げた大風呂敷を名手・恩田陸はどう畳むか!?『ドミノ』

【カドブンレビュー×カドフェス最強決定戦2017】

カドブンを訪れて下さってる皆様、こんにちは。
気がついたらもう十一月ですねえ。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

今回の作品は恩田陸著の『ドミノ』。
KADOKAWAの書籍紹介ページによると「些細な事件が大騒動に発展していく、パニックコメディの大傑作!」とありますが、読んでるこっちがパニックを起こしそうなくらいとんでもない本でした。
舞台は嵐の迫る東京駅付近。
最初に登場するのは、営業ノルマに追われ、今日中に本社に契約書を届けなければならない生命保険会社の社員たち。
次に登場する子役の女の子たちはミュージカルのオーディションに臨み、その頃東京ステーションホテルでは謎の女が思い詰め、なにかを企んでいる。
八重洲口には、句会に参加するため筑波から東京にやってきた老人と、挙動不審の若い男を乗せた高速バスが到着。
有楽町の映画館には真剣な面持ちでB級ハリウッド映画のパンフレットに見入っている男女。
東京中央郵便局にはラッパを吹く天使。千葉県佐原市では傘が宙に舞う。
冒頭に登場した保険会社の女子社員はお菓子を買いに東京駅へと走り出す。
美男美女の従兄弟は東京ステーションホテルに向かい、東京駅動輪の広場では定年退職し俳句を楽しむ四人の老人が、筑波から来る俳句仲間の到着をまだかまだかと待ち侘びている。
次から次へと登場人物が紹介されるとともに、物語はゆっくりと転がり始め、やがて坂を転がり落ちる雪玉のように大きさと勢いを増し、保険会社のメンバー、アメリカから来た映画監督と謎の生物、霊感のあるコーディネーター、暴走ピザ屋、テレビ局の人気キャスター、そして千葉県警と警視庁の皆さまを巻き込み、とんでもない事態が展開されていくのです!
登場人物の数はなんと、冒頭の人物表で紹介されているだけで28名!
しかもですよ、この文庫本は376頁ありますが、後半280頁になってもなお、新たな人物が登場してくるのです!
一体なんでこんな摩訶不思議な作りになっているんだ、この本は!
これでもかこれでもかと新しい人物が登場し、次々と連鎖反応を起こしていくこの感じはなんだ?!
と思った時、本書の表紙が目に入り、納得しました。

「だから『ドミノ』なんだ……」

まさに「大風呂敷」をどーんと広げたこの作品ですが、登場する全部のキャラがキチンと書き分けられ、物語の中で役割を担い、散りばめられた伏線が気持ちいいように回収されていくのは見事としかいいようがありません。
物語のドキドキ感に加え、「こんだけ人が出てきちゃって、本当にちゃんと収拾つくんでしょうか?!」そんなハラハラ感も味わえる貴重な作品です(笑)。
読書の秋にこの本を手にとって、最後のドミノがどう倒れるかを見届けてみてはいかがでしょうか〜!

★池内さんの朗読レビューも併せてお楽しみください。



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