【解題】 火の鳥のもうひとつの姿を描く2作

 

未来が舞台の中編2作をカップリング


 角川文庫版『火の鳥』3巻と同じく、この9巻も、それまでに虫プロ商事や朝日ソノラマ(現・朝日新聞出版)から出た単行本や講談社版『手塚治虫漫画全集』とは大きく異なった構成になっている。
 従来の単行本では、「ヤマト編」と「宇宙編」がひとつに、「異形編」と「生命編」がひとつに、それぞれカップリングされていたが、角川文庫版では3巻に過去の世界を描く「ヤマト編」「異形編」を、9巻に未来の世界を描く「宇宙編」「生命編」を収録している。これによって、巻ごとに過去と未来が交互に登場するという構成につくり替えられたわけである。
 6巻の解題にも書いたとおり、文庫版の底本になった角川書店のハードカバー版はこれまでに『火の鳥』を読んだことがない大人の読者を意識してつくられていた。そのため、初めて『火の鳥』を読む人にもわかりやすい構成にする、という意図で入れ替えが行われたのだ。
 さらに、このあとに続く「太陽編」の上巻が、663年10月の「白村江の戦い」から始まることも影響している。
「太陽編」は7世紀の日本と近未来の日本が結びついた構成になっているが、10巻では「白村江の戦い」から672年の「天智天皇崩御」までの過去の世界を描いているので、ここでも未来から過去へとスムーズに繋がる仕掛けになっているのである。

書籍

『火の鳥9 宇宙・生命編』

手塚 治虫

定価 950円(本体880円+税)

発売日:2018年10月24日

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