【解題】  角川版で大きく変わったのが第3巻

 

収録順の大胆な入れ替え

 過去に虫プロ商事、朝日ソノラマ、講談社(手塚治虫漫画全集版)から出た『火の鳥』と角川書店版で大きく異なるのが、この第3巻である。それまでは、発表順に「ヤマト編」「宇宙編」がカップリングされていたものを、「ヤマト編」「異形編」のカップリングに変更したのだ。そのため「宇宙編」は「生命編」とともに第9巻として刊行されることになった。
 もともと過去と未来のエピソードを交互に描きながらひとつの物語にするという壮大な構想を持った『火の鳥』の順序を変えることには作者も読者も抵抗があったはずだ。
 それでもなお、手塚治虫が収録順を変えることに踏み切ったのは、過去と未来をひとつの巻に収めるよりは、過去の物語で1冊、未来の物語で1冊と分けたほうが、手塚ファン以外の読者には読みやすくなるという判断があったのだろう。
 もうひとつの理由として、角川書店版単行本が出るきっかけになった「太陽編」の存在がある。「太陽編」は過去と未来がひとつの物語の中に並行して描かれることになるが、過去の舞台になるのは672年に起きた壬申の乱とその前後の日本。『火の鳥』の時間の流れは「異形編」で戦国時代まで来ており、壬申の乱を描くことはタイムラインを遡ることになる。
 壬申の乱にこだわったのは、当時、手塚に『火の鳥』再開を依頼した角川春樹かどかわはるき氏だった。角川氏は手塚に会うなり、「壬申の乱を描いて欲しい」と切り出したのだ。手塚が「それなら『火の鳥』ではなく『壬申の乱』というタイトルで描いてはどうか」と断ると、角川氏は「火の鳥は出して欲しい」と譲らない。
 結局、手塚は折れて、便法として近未来と過去を振幅させることで、未来のエピソードに組み入れることを試みたのだ。
 そのための調整の意味もあって、「宇宙編」を第9巻に、「異形編」を第3巻にという編集がなされたと考えることができる。

書籍

『火の鳥3 ヤマト・異形編』

手塚 治虫

定価 950円(本体880円+税)

発売日:2018年07月24日

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    書籍

    『火の鳥1 黎明編』

    手塚 治虫

    定価 950円(本体880円+税)

    発売日:2018年06月15日

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      書籍

      『火の鳥2 未来編』

      手塚 治虫

      定価 950円(本体880円+税)

      発売日:2018年06月15日

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