みなさま今、ドキドキしているのではないでしょうか。興奮できる世界に出会った、早く続きが読みたい、と。こんな解説を読んでいないで早く続きを読んで、という気持ちと、いや、でもしかし、落ち着いて一休みしながら、この世界をじっくり味わいつつ読んでほしい、そんな気持ちの両方が混在しています。一休みしたいという方は、しばしお付き合いください。
 本作は、2015年本屋大賞受賞作。ジャンルとしてはファンタジーで、本屋大賞ではこのジャンル初めての大賞受賞となる作品です。
 ファンタジーとは何なのか。今、書店の売り場には様々なファンタジー小説が並び、溢れているといっていい状況かもしれません。棚を見渡すと、剣と魔法の冒険譚、異世界への転生、あるいは特殊な力を持つことで、日常をベースにしつつも非日常を取り入れたもの、SF要素を交えたもの……。様々なファンタジー小説があります。例えば、「舞台は奈良公園。人間が寝静まった深夜、特別な能力を持つ鹿たちが、王の証たる黄金の鹿せんべいを求めて、日々闘いを繰り広げていた……鹿の王」なんて話であったとしても、それはそれでファンタジーとして分類することでしょう。
 では、あらためてファンタジーとは何か。その問いには、この本こそがファンタジーである、この本を読めばわかる、と、答えたいと思います。魅力ある世界を創り出すこと、そして、そこに生きる人々を描き、物語を紡ぐこと。そしてそれらが、当然のごとく在るものであるように、感じられること。棚をつくる書店員、という立場をおくならば、私はそういった小説こそがファンタジーだと考えています。

書籍

『鹿の王 1』

上橋 菜穂子

定価 691円(本体640円+税)

発売日:2017年6月17日

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    書籍

    『鹿の王 2』

    上橋 菜穂子

    定価 691円(本体640円+税)

    発売日:2017年6月17日

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