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【イベントレポート】いとうせいこう✕みうらじゅん「見仏記」の名物バディが最新巻発売記念会見で“さらなる33年後”に思いを馳せる

写真左からみうらじゅん、いとうせいこう。シリーズ開始当初の二人の等身大パネルと。


いとうせいこうとみうらじゅんによる共著『見仏記 三十三年後の約束』の発売記念記者会見が10月18日に行なわれ、著者の二人が出席。本書や“見仏”の魅力に加え、「出版を盛り上げたい」という思いまでを存分に語り尽くした濃密な時間をレポートする。

文/松本まゆげ

いとうせいこう✕みうらじゅんが語る“33年前の約束”と見仏の楽しみ方――「見仏記」最新巻発売記念会見

33年前の約束が果たされた! 感動の瞬間を丁寧に再現

「見仏記」は、1992年に第1巻が刊行された紀行シリーズ。仏像を愛する“ぶつゆう”のいとうとみうらが、全国各地の仏像を独自の観点で鑑賞する様子が記録されている。最新巻となる『見仏記 三十三年後の約束』では、シリーズ開始当初に交わした「33年後の3月3日、3時33分に三十三間堂の前で会いましょう」という約束が果たされたことが詳細に綴られているが、いとうとみうらはこの会見で当時の様子をじっくりと語ってくれた。

フォトセッションが終わるやいなや、早々に33年前の振り返りから始めた二人。「最初は「見仏記」は一冊で終わることになっていたから、しんみりしちゃって」(みうら)、「だからこの約束を冗談で言って、ワハハと楽しい気持ちになっていたんですよね。そうしたら、(33年後の2025年に)三十三間堂から『やるんですか?』とみうらさんの事務所に連絡がきた」(いとう)と、冗談が現実になるまでを説明した。京都の神社仏閣のなかでも、とりわけ撮影が難しいとされる三十三間堂直々の連絡であったことや、3月3日は無料で拝観できる日だという事実が後押しとなり、今回の再会に至ったと明かした。

さらに、再会の日の当時と同じ服を着てきた二人は、三十三間堂本堂の両脇からそれぞれに現れて中央で対面するまでを再現。本堂の中央で対面し、みうらからいとうへバラを手渡して抱き合うという一連のやりとりを見た報道陣は、一気に笑いと拍手に包まれた。


3月3日3時30分(いわゆる3分前)の様子を再現するいとう。


みうらは、本堂に登場するタイミングを真剣に見計らっている。


3時33分の様子がこちら。二人は感動のハグを再現。


当時の心境をいとうは振り返る。「再会直後にみうらさんがつい泣いちゃったんだけど、(本堂前に集ったファン)2000人も感涙にむせんじゃったんだよね」。ちなみにみうらは、本堂の廊下をランウェイに見立て、前日にニュースで見たというSnow Manのラウールさながらのウォーキングを披露したが、これもあまりウケなかったことを嘆いていた。

その後、みうらは本を読み返した際に最後の章で何度も泣いたことを明かし、「紀行文として始まった「見仏記」シリーズだけど、ここへきて純文学になりました」と太鼓判を押す。いとうも「今日のトークが面白かったということは、本も面白いだろうと! だってすでに2回重版がかかってるんだから!」と語気を強めた。


会見の終盤では、33年後の2058年について思いを馳せる二人。


また、本書はみうらの提案でオールカラー仕様になっている。「今はネットで本が読める時代。僕のイラストもネットでカラーで見られるのに、本になったときにカラーでなくなってしまったら、そりゃあネットにいくじゃないですか。だからオールカラーという、良い形で残したかったんです。出版ピープルとしてはね」と、みうらは出版業界を盛り上げたい“出版ピープル”の一人として、気持ちもこもった一冊であるとアピールした。

「最初から仏友だった」いとうとみうらの仲良しエピソード

質疑応答では「見仏の楽しみ方」という問いが上がった。これには二人は“誰かと一緒に行ってこそ楽しめる”と強調する。いとうは、「一人で行くといろいろ考えてしまってつい暗い発想になるけど、二人で行くとどちらかがバランスをとる。隣にいる相手のことをわかりながら仏像を見ることが重要。で、面白いからと次も行く。そういう機会を作ることが人生を豊かにする」とアドバイス。みうらも、「いとうさんと“仏像を接待している”ような気持ちでいる」と、見仏に臨むときの意識を語る。さらにみうらは、「いとうさんがよく言っているけど、自分と一緒に行った人と仏像で“二等辺三角形”になるといい。相手の顔を見ずに、仏像に向かって二人でしゃべる感覚で」と楽しみ方を伝えた。

見仏を重ね、着実に絆を深めていった二人。「仏友になった瞬間は?」と問われた際、いとうは、「僕が持っている単行本の1巻には、『一生仏友』と書いたみうらさんのサインがあるんです」と語り、最初から今に至るまで変わらぬ関係が続いていることを明かした。つい先日も、二人は仕事で貸切の旅館に泊まったそうだが、「部屋に一人でいるのがあまりにもさみしくて。夜中にみうらさんが僕の部屋に来て、布団をみうらさんの部屋に運んでいるところを仲居さんに見つかってしまった」という仲良しエピソードがいとうから明かされた。

次の33年もシリーズを続けていく――ファンとの新たな約束

会見終盤、さらに33年後となる2058年の約束についても。みうらは、「約束は遠いほうが、責任が薄れていいじゃないですか。“どうせ守れないんだろうな”くらいでいい」とゆるく答えたが、いとうは「僕はたぶん、みうらさんはまだ生きていると思う」と一言。二人で33年後を想像し、「車椅子だろうね。AIも発達しているだろうから……そこにいるのは、もはや俺達じゃないかもしれない!」(いとう)、「見た目はちゃんと老けてるのかな?」(みうら)と、思い思いに語り合う姿が微笑ましかった。

ともあれ、2058年はみうらがちょうど100歳になる年なのだとか。これは偶然と呼ぶべきか否か……? 「『見仏記』は次もありますから」(いとう)、「連載は続けます」(みうら)と、ここからの33年も楽しみになる言葉を残し、二人は会見という名の“トークショー”を終えた。

書誌情報



書 名:『見仏記 三十三年後の約束』
著 者:いとうせいこう、みうらじゅん
発売日:2025年10月02日

「33年後の3月3日、3時33分に三十三間堂の前で会いましょう」
33年越しの冗談が、本当になった。
仏友ふたり、あの日の約束をたずさえて。

小学生時代から仏像に取り憑かれ、スクラップブックまで作っていたみうらじゅん。
1992年、仏友・いとうせいこうを巻き込んで始まった見仏記シリーズは、気づけばあれから33年。
「33年後の3月3日、3時33分に三十三間堂の前で会いましょう」
そんな冗談のような約束が、ついに現実となる。

滋賀は長浜から関東、東海を巡り、そして約束の地、三十三間堂へ。二人が今回出会うのは、一癖も二癖もある仏像たち。
再会する仏像、新たな人との出会い。すべては仏縁に導かれて。
仏友ふたりの見仏旅、ここにひとつの到達点!
シリーズ33年分の笑いと感動をあなたに。 全編イラストオールカラー!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322506000856/
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