新人賞のデビュー作としては異例の反響で版を重ねている『化け者心中』。
SNSを中心に「まったく新しい次世代時代もの!」「続編マジで希望!」と口コミで話題が広がり、すでに4刷り!
いったいどこがそんなに面白いの!?と、気になってきている方も多いはず。
年末年始、ゆっくり本でも読みたいけど何にしよう?と探しているあなたのために、本書の読みどころをピンポイント解説しちゃいます!
文・編集部
【あらすじ】
時は文政、所は江戸。当代一の人気を誇る中村座の座元から依頼を受け、かつて一世を風靡した稀代の女形の魚之助と、彼の足がわりとなる心優しき鳥屋の藤九郎は「鬼探し」を始めることになる。現場に居合わせた役者たちへの聞きとりは、次第に、傾奇者たちが芸の道を究めるために鎬を削る、地獄めぐりの様相を帯びてきて……
魅力その① 個性豊かなキャラクターの関係性萌え
足を失い、暗い過去を持つ、皮肉屋の超美麗な元女形、魚之助。
図体はでかいが小さな生き物をこよなく愛する、純朴な天然系の鳥屋の青年、藤九郎。
強気を貫き通すかと思いきや、ふと弱音をさらし、拒絶するのかと思えば見かねて手を差しのべる。単なる“好き嫌い”の先にある、二人のいわく言いがたい関係性に、思わず身もだえ、心がきゅーっとしめつけられること間違いなし!んん、じれったい、この二人、いったいどうなちゃうの????と続編を待望する声多数。ほかにも、
演じるすべてが当たり役になるという自信満々のイケメン、尾山雛五郎。
“七光り”とイジられながらも、名門を背負う重圧と才能の狭間で精一杯イキがってみせるボンボンの岩瀬寅弥。
魚之助ラブ♡を公言し、超勝手に恋のさや当て、藤九郎にメラメラ嫉妬の炎を燃やす謎の男、める。
等々、どのキャラも個性強すぎ、しかも容赦なく相手の急所をグサリグサリと刺しまくる。
そのたびに読者の感情も乱高下、ああ、この手加減のなさ、クセになる……!
魅力その② フーダニットのミステリとしても楽しめる!
ごろぅり。
集められた6人の役者が車座になっているところに、突如、首が落ちてきた。
ぱきり、ぽきり、がじごじ、ちゅるちゅるり。
しかし火の消えた行灯を照らすと、役者の数はもとのまま。
人あらざる者が芝居小屋に潜んでいるのは間違いない。その者の正体を暴く、というオーセンティックな謎解きの構えも、本格ミステリ好きにはたまらない趣向。そしてラストで明かされる何とも意外な真実に、心揺さぶられること間違いなし!
魅力その③ 確かな時代考証に支えられた江戸のVR体験
江戸文化に精通する著者の小気味よい語りで、当時の風俗が、五感を通して伝わってくる。だから、時代小説なんて読んだことない、歌舞伎は敷居が高くて……という読者も、絢爛豪華な映画や舞台を観ているような臨場感で江戸の世界をバーチャル体験できてしまう! 当時の歌舞伎役者はいまのアイドルと一緒。プロマイドや団扇、グッズを買い集め、ファン同士、結束したり、競いあったり。そんな“推し”文化が、昔から今に連綿と繋がっていることを知れば知るほど、な~んだ、自分たちと一緒じゃん、とおのずと共感度アップ!
魅力その④ 現代に通じる、生きづらさのテーマ
格差、才能、ルッキズム、ジェンダー。自分ではどうしようもないものと、どう折り合いをつけて生きていけばいいのか。もがき苦しむ登場人物たちの直面する問題は、今を生きる私たちにも、ひりひりと切実なテーマであることに変わりはない。設定こそ江戸だけれど、現代小説のヴィヴィッドな感覚に通じているところも、この本のもつ新しさ!
魅力その⑤ 『百と卍』の紗久楽さわさんによる妖艶なカバー
魚と鳥を喰らう蒼白なこの女装の麗人は、いったい何者!?
春画の手法で、うなじのや後れ毛の一本一本を描きこんだという、ただならぬ気配をまとうカバーイラストは、所有欲をくすぐること間違いなし。
袖をめくったところにあるエモい仕掛けに、読了後涙したと告白する人も続出!
和綴じ本を模した表紙本体の造本設計も心ニクく、単行本で傍に置いておきたくなる一冊。
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