THE ORAL CIGARETTES 山中拓也フォトエッセイ『他がままに生かされて』
大反響により台湾での翻訳版出版決定!
人気ロックバンド・THE ORAL CIGARETTESのボーカルで、ほぼ全楽曲の作詞・作曲を務めるフロントマン、山中拓也。彼が紡ぐ、人間の本質を表す言葉は、なぜ多くの若者を虜にするのか。そして、いかに生み出されるのか。そんな彼の半生や人生観。過去と未来のこと。今の時代に伝えたいことを綴ったエッセイ『他がままに生かされて』(2021年3月2日発売)が、大反響により台湾での翻訳出版が決定!
それを記念し、特別に第1章「汚れた感情の向こう側」全話を10日間連続で公開中です。
『他がままに生かされて』試し読み#10
カケグルイ
母の体調も回復し普通の日常を送れるようになったのは、大学1年生のカリキュラムが終わる頃。母から「もう大丈夫だから、大学生活を楽しみなさい」と言われた。それまで、自分のやりたかったことを我慢していた分、反動が来たのかもしれない。僕の人生の中でもワースト3に入るくらいどうしようもない日常を送っていたことは、最初に告白しておく。
大学2年生になり、僕は勉強そっちのけで遊びまくった。授業にも出席せず、友だちと麻雀やパチンコ、スロットに明け暮れる毎日。一日で一攫千金を狙える、というギャンブルは大学生の僕にとってすごく魅力的だった。東に25万円出た台があると聞けばそちらに行き、西に回転率の良い台があると聞けば打ちに行く。
しかし、パチンコ店がそうそう潰れないのは、きちんと利益が出るからだ。最初の1ヶ月で僕の財布はパチンコ台に吸い取られ、ほぼ空っぽになってしまった。このままではいけないと思った僕は、友だちとともにチームを作り、パチンコ店に通い詰め、データを取るようになった。毎日、交代制で友だちとデータをチェックし、前日のデータを基に絶対に出る台を見つけては、全員で奇襲をかけるのだ。まさにスリルを感じる集団戦。
しょうもないことにハマってばかばかしいと思うだろうが、実際のところ1年かけて店ごとの傾向を調べ尽くした結果、僕の財布は潤いを取り戻していた。努力と頭の使いどころを完全に間違えた僕だったが、今のところ後悔はしていない。いや、クズみたいな生活を送っていたな、とは思うけど。
パチンコやスロットで勝ち続けることは不可能だが、きちんとデータを取り、戦略を立てれば勝率が上がることを学んだ。一見、博打に見えるような勝負も自分である程度コントロールできると知れたことは、僕の中でも大切な経験となった。博打も、自分で調整できれば、投資とそう変わらない。どんな道にだってリスクもリターンもあり、その都度自分で選び取っていくものだ。
就職活動中に、バンドを本格的にやろうと決めるまでこの生活は続いたが、バンドに力を入れはじめたことで、不思議とお金に対する欲や興味は薄れていった。こうして僕はバンドという名の博打を投資に変えるため、情熱を注ぐことになる。
(続きは本書でお楽しみください)
作品紹介・あらすじ
他がままに生かされて
著者:山中拓也
定価:2,090円(本体1,900円+税)
発売日:2021年3月2日
ロックバンド・THE ORAL CIGARETTESで、作品の作詞作曲を手掛けるフロントマン、山中拓也。
彼が紡ぐ、人間の本質を表す言葉は、なぜ多くの若者を虜にするのか。そして、いかに生み出されるのか。
生死をさまよった病、愛する人の裏切り、声を失ったポリープ手術、友人の死etc.
そこには数多の挫折や失敗があり、周りにはいつも支えてくれた家族や仲間、恩人たちの存在があった。
山中拓也は、これまでもこれからも、他に生かされて我がままに生きていく。
そんな彼の半生や人生観。過去と未来のこと。今の時代に伝えたいことを綴ったエッセイ。
故郷・奈良の思い出の地巡り、ドイツや国内で撮影した作品写真、貴重なレコーディング風景など撮り下ろし写真も多数収録する。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000608/
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