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試し読み

コンプレックスだった自分の家族と向き合うことになった月彦に、 青野がとった行動は……!?  奥野じゅん『江戸落語奇譚 寄席と死神』特別試し読み 第3回

第6回角川文庫キャラクター小説大賞の<優秀賞>を受賞した、『江戸落語奇譚 寄席と死神』が、4月23日に発売しました。
コンプレックスだった自分の家族と向き合うことになった月彦。母親が自殺未遂した理由も何かあるようで……!? 江戸落語にまつわる怪異も見事に解決します!

『江戸落語奇譚 寄席と死神』試し読み #3

 長いこと待たせてしまった青野さんと合流したのが、午後九時過ぎ。父が財布を拾ったという河川敷に向かう。
 道すがら一部始終を伝えると、青野さんは、うれしそうに何度もうなずいた。
「指輪も無事見つかって、お父様とも少し会話ができて、良かったですね」
 河川敷に着くと、青野さんはきょろきょろと辺りを見回してから、護岸ブロックに座った。俺もこわごわ、その隣に座る。
「さて。それでは、桜木さんに取りいた怪異にお話をうかがいましょうか」
「話って……あの、出てくるんですか? 怪異が」
「ええ。直接お話しして、離れていただきましょう」
 青野さんはこほんとせきばらいをし、呼びかけた。
「恐れ入ります。『しばはま』のかつろうさん、いらっしゃいますか?」
 ざわっと草むらが揺れて現れたのは、この一ヶ月間毎日出てきたあの商人だった。
「うわあっ!」
 恐怖のあまり転がり落ちそうになるところを、地面に手をついてまぬがれる。しかし顔を上げられない。
「おれのことかい」
「ええ、そうです。よければ少し、お話ししませんか」
 俺のおびえようとは裏腹に、青野さんは、普通に人間と話しているようだ。
 こわごわ様子をうかがうと、怪異は半透明で青白く、くるぶしから下がなくて浮いていた。いままで見ていた姿より、はっきりと見える。
 青野さんがちょいちょいと手招きすると、勝五郎と呼ばれたひとは、手に持っていた釣りざおを置いて、すうっと目の前までやってきた。
「桜木親子の指輪捜しは、ご覧になりましたか?」
「ああ、見てたよ。とんでもねえことをしちまったと後悔しきりだったんだが、勘違いが解けたようで、ほっとしたよ。悪かったなあ」
 会話が成立している。驚くべきことながら、言葉が通じるなら大丈夫かと、少しほっとする。
「勝五郎さん。三つほど、理由をお聞かせ願いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「何でも聞いてくれ」
「まず、彼のお父様にプレゼントを渡すよう勧めたのはなぜですか?」
 勝五郎さんは、「ああ」と言って、申し訳なさそうに俺と青野さんの顔を見比べた。
「本当にただのお節介だよ。道でお前のおとっつぁんとすれ違ってなあ。昼間っから酔っ払って、どうしようもねえ奴だと思ったもんで、ちょいと心の中をのぞいたら、あんまりにもおれと似たような性分で、こりゃあおきゆうのひとつでも据えられた方がいいやと思ったってわけだ」
 青野さんは、ふんふんとうなずきながら次の質問に移った。
「それから、お母様が『夢だった』で押し通そうとしたのは……あれも勝五郎さんの助言ですか?」
「そうだよ。っつったってえ、『だんからものをもらったら夢と言え』なんて野暮なことは言ったらいけねえと思って、『困ったときにゃ、夢だったで押し通せ』と言ってやったんだ。半端な入れ知恵で、とんでもねえことになっちまった」
 肩を落とす勝五郎さんに、青野さんは最後の質問をした。
「それで、これが一番不思議なのですけど。なぜあなたは、ご両親ではなく、息子さんに取り憑いたのですか?」
 勝五郎さんは、俺の方をちょっと見たあと、青野さんに向き直った。
「子供がびんでなあ。旦那の方は一応改心して働き出したから、下手に謝ったら『自分のせいじゃなかった』っつって辞めちまうんじゃねえかと思って、そのまんまにした。けど、息子の方はっとけなくてな。だあれにも相談もしねえでひとりで抱え込んでんのを見たら、謝らずにはいられねえと、そう思ったんだよ」
 正直に言えば、毎晩あんな風にして謝られるのは迷惑でしかなかった。けれど、色々と後悔しながら自分なりに罪を償おうとしていたのだとしたら、責めることはできないなと思った。
「勝五郎さん、ひとつお願いがあるのですが。お母様を目覚めさせることはできないでしょうか」
 青野さんが尋ねると、勝五郎さんは、うんうんとうなずいた。
「あっちはそろそろ目ぇ覚ます頃だよ。倒れた日から、うちのカカァが付きっきりで看病してんだ。いい医者も見つけて、毒消しの薬も飲ましてるみてえだから」
「そうでしたか。それは安心です」
 青野さんが頭を下げるので、緊張しつつ、同じようにぺこりとお辞儀をする。勝五郎さんは、申し訳なさそうな顔で言った。
「ほんとに、悪かったなあ」
「い、いや。大丈夫です。十分気持ちは伝わりましたし、なんというか……その、親とちゃんと関わったのが……いい機会だったので」
 自殺未遂がいい機会とは、不謹慎な言い方かもしれない。けれど俺は、貧相な想像力だけで思い描いていた『家族』に、ほんの少し興味が持てそうな気がしたのだ。
「おっかさんは、あしたきっと目を覚ますよ」
 そう予言して、勝五郎さんは消えていった。

 河川敷は、何ごともなかったかのように静かだ。青野さんは首をかしげて微笑んだ。
「よかったですね。無事離れていただけて」
「はい。でもなんか、勝五郎さんが父にプレゼントを勧めた理由は、あんまりピンときませんでした。なんで母にプレゼントを渡すことが『お灸を据えること』になるのかが、よく分からなくて」
 正直に伝えてみると、青野さんはポケットからスマホを取り出し、音楽アプリを起動した。曲一覧は、全て落語。
「あの方は、『芝浜』という、有名な人情ばなしの主人公です。ろくに働かずお酒を飲んでばかりで……彼の言う通り、あなたのお父様に少し似ています。聴いてみますか?」
 イヤホンの片方をもらって、耳にはめる。青野さんがもう片方をはめて、再生ボタンを押した。
 芝浜の話の筋はこうだ。
 酒好きな魚売りの勝五郎さんは、奥さんに怒られて仕事に出かけると、芝の浜で、大金の入った革の財布を拾った。勝五郎さんは、真面目に働くと誓ったばかりなのに、友達を呼んでどんちゃん騒ぎの酒盛りをした。しかし翌朝、お財布のことを奥さんに聞くと、『そんなものはない、夢だったのではないか』と言われる。
 勝五郎さんは、使ってしまった代金を稼ごうと心を入れ替えて、熱心に働くようになった。奥さんは、本当はお財布を持っていて、勝五郎さんに改心してもらうために『財布を拾ったのは夢だ』と言っただけ。夫は真面目に働くようになって、平和な家庭になった……というのが、夫婦の人情噺、芝浜だった。
 イヤホンを外した青野さんは、目を細めて微笑み、解説してくれた。
「要するに勝五郎さんは、自分と同じようにお財布を拾って帰れば、奥さんがそれを隠してくれるので、あなたのお父様も改心できると……そう考えたのだと思います。お財布そのものではなくバレンタインデーのプレゼントをと言ったのは、きっと当世風にするのが良いという、江戸っ子のいきな計らいのつもりだったのでしょうね」
 とんだお節介だったのか、はたまた、神様がくれたチャンスだったのか。母が目を覚ますまでは、はっきりとは分からないけれど。
「もし良ければ、また会いに来てくださいませんか? お母様の目が覚めて、落ち着いた頃でかまいませんので」
「はい。もちろんです。必ずお礼に行きます」
 深々とお礼をすると、青野さんはなぜだか、少しはにかんでいるようだった。

 あれから一週間経った日の夜、俺は青野さんの家を訪れていた。
 勝五郎さんの予告通り、翌日母は、四ヶ月ぶりに目を覚ました。何の異常も後遺症もなく、医者には奇跡と言われた。いまは、寝たきりだったために落ちた筋力や食事のリハビリを、少しずつ進めている。
「母に、父が新しい仕事を始めたと伝えたら、少しうれしそうにしていました。結局、あの日何があったのかはまだ聞けていなくて、どんな追い詰め方をしたんだっていう父への不信感はあるんですけど……でも俺もなんか、もう少し家族に対して向き合った方がいいかなと思っているので、いつかチャンスがあれば、聞きたいなとは思っています」
 青野さんは、穏やかな表情でうなずいた。
「勝五郎さんの作戦は、危ないところではありましたが、一応彼の期待したような形にはなったのかもしれませんね。ご両親の変化の兆しも、あなたが前へ進もうとしているのも」
「はい。それもこれも全部、青野さんのおかげです。ありがとうございました」
 ぺこっと頭を下げると、彼は「いえいえ」と言って胸の前で小さく両手を振った。
 青野さんが、優雅な仕草でお茶をすする。聞くならいまかなと思い、おずおずと口を開いた。
「あの、青野さん。ひとつ聞きたいことがあるんですけど」
「はい、何でしょう」
「ここへ泊まったときに、勝五郎さんに怒鳴ったあと、『身内が機嫌をとってくれているから大丈夫』みたいなこと言ってたじゃないですか。あの身内って、誰のことなんですか?」
 彼は「ああ」と言って、両手を静かに合わせた。
「僕にも憑いているのですよ。なんにもしない怪異が」
「えっ? こ、この部屋にいますか?」
「ええ。なぜか彼だけは、姿が見えず声も聞こえないのですけど。でも、普段から失礼のないようしんぼくを深めておりますので、どこにいるかや何をしているかは分かります」
 それと、と言って青野さんは立ち上がり、づくえの上に置いた箱を持ってきた。
「花札だけはできます。しんざぶろう、やりますか?」
 青野さんが空中に向かって声をかけると、すうっと何かが横を通る気配がした。
「あ……っ、その怪異、いまその辺にいますか?」
「おや、やっぱりあなたは感じますか」
 青野さんは、うれしそうに俺を見たあと、箱から花札の束を取り出した。自分の目の前と、向かいに座る俺の少し横に、札を並べていく。
 するとなんと、俺の横の札がぷかっと宙に浮き、トランプをするときのような扇形になって、ふわふわと空中に浮いた。
「彼ははぎわら新三郎といって、怪談噺の『たんどうろう』に出てくる浪人の若者です。幽霊のおつゆという女性に呪い殺されてしまうひとなのですが……これがなぜだか、五年ほど前から僕に取りいています。おそらくお露さんを探しているのだろうと思い、研究のかたわら、僕も彼女を探しています」
 そう言って、畳の上に八枚の札を並べ、真ん中に裏側へ伏せた山を置いた。
「勝五郎さんと気が合ったというのは?」
「新三郎は穏やかな人物なので、うまく機嫌をとってことをおさめてくれます。僕の短気なところを助けてくれる、良き友です」
「あ……じゃあ、怖くないんですね。よかった」
 青野さんはちょっと微笑みながら、手元の札を一枚抜いて、畳の上に置かれた同じ絵の札に重ねた。山からもう一枚取る。豪華な菊にお酒のさかずきが描かれた札だ。畳の上の菊に重ねて、四枚を手元へ。
「ところで桜木さん。つかぬことをお聞きしますが、お誕生月はいつです?」
「九月ですけど」
 意図の分からない質問に首をかしげつつ答えると、青野さんはぱっと顔を上げ、満面の笑みで声を弾ませた。
「そうなんですね。もしそうだったらいいなと思っていたのですけど、本当に九月生まれだなんて。僕はいままで、あなたほど縁起のいい方を見たことがありません」
 新三郎さんが札を取り終えたところで、青野さんは手札から桜を抜き取り、畳の上の豪華な桜に重ねた。
「花見酒。さいさきがよろしい」
 満足そうにつぶやいて、取った札を手元に集める。
「俺が縁起がいいって、なんですか?」
「桜木月彦さん。九月生まれ。あなたのお名前と誕生月で、役がふたつそろいます」
 青野さんは、手元の札をトントンと指さした。
「花札には十二種類の絵柄のくくりがあって、それぞれ何月の札かが決められています。九月は菊。そして、同じ月札の中でも強さがあって、絵が豪華なほど強い役になり、質素なものは『カス』と呼ばれます。それで、これ」
 指さしたのは、二枚の札。
「こちらが、菊の一番強い札です」
 先ほど取った、豪華な菊にお酒の盃が描かれた札だ。
「それから、こちらが桜の一番強い札」
 華やかな桜の下に、紫の幕がかかっている。
「このふたつが揃うと、『花見酒』という役になります。そしてもうひとつ」
 畳の上に置かれている、満月の札を指差した。
「月と盃と合わせれば『月見酒』になります」
 彦、九月の。花見に月見で、たしかに、縁起がよさそうだ。
 ぱたぱたと、畳の上で札が重なる音がする。風流な遊びで、青野さんらしいな……と見守っていた、そのとき。
「おい、てめえ! さっきっからちまっちまと一文二文で稼ぎやがって!」
「あ、青野さん!?」
 またひようへんした。ついさっき、『失礼のないように親睦を深めている』と言っていたのに……!
「てめえも江戸っ子なら博打ばくちしやがれってんだ!」
「青野さんってば!」
 絶叫したところで、立ち上がりかけていた彼はすとんと元の座布団に戻り、真顔で口元にこぶしをあてた。
「……またやってしまいました。でもご安心ください。新三郎とは毎晩こんな感じですので、仲は良いのですよ」
 そんな、何ごともなかったかのように上品に笑われても……。
 戸惑いつつ、こくこくとうなずいた。

 しばらく、ふたりが花札で遊ぶのをぼーっと見ていた。
 空中から札がまっすぐ降りてきて、畳の上の札に重なる。畳の上の札が、すすすと動く。それを見て青野さんは、楽しそうに誰もいない方向へ話しかける。返事はない。なのに青野さんは、楽しそうだ。
「なんか、不思議な光景ですね」
「そうでしょう?」
 こちらに振り向いて、くすくすと笑う。
「目に入っているのは青野さんひとりなのに、遊んでいるのはちゃんとふたりに見えて……なんか、変な感じです」
 こんなこと、この世にあるんだな。なんてぼけっと考えていたら、青野さんが、こほんとひとつせきばらいをして、こちらに体を向けた。
「桜木さん。もしよければ、僕の怪異の研究を手伝ってくださいませんか?」
 驚きのあまり、「えっ!」と声を上げて後ずさる。
「えっと、怪異の研究って……おばけを捕まえるんですか?」
「いえいえ、捕まえるわけではありませんよ。ただ、怪異にお悩みの方からお話をうかがって、どんな演目の登場人物がそうなっているのか……できれば勝五郎さんのように、その怪異とお話ができればいいのですけど」
 青野さんは楽しそうに笑うけれど、全然、楽しいわけがない。
 おばけのせいで散々な目に遭って、やっと解放されると思ったのに、わざわざ自分からおばけ探しに行くなんて嫌すぎる。新三郎さんがなんにもしないというのは分かったけれど、他の怪異は怖いかもしれない。
 どう断ろうかともごもごしていたら、青野さんは、札の扇で口元を隠してふふふと笑った。
「もちろん、謝礼は差し上げますよ。お母様の療養にご入用でしょうから、いまなさっているアルバイトより少し色をつけて。いかがです?」
 うっ……と、ますます言葉に詰まってしまう。
 彼の言うことはもっともで、母の入院費がかさんでいるし、無理やりシフトを増やしているスーパーのバイトは、本当は一刻も早く辞めたい。性格的に向いていなさすぎる。でもだからって、おばけ探しなんか。
 迷っているのがばればれなのだろう。青野さんは、俺の目をじっと見た。
「正直に申し上げましょうか。僕は、あなたのことが、のどから手が出るほど欲しいのですよ」
「はい……?」
 訳が分からず困っていると、青野さんは、ほんわりと微笑んで言った。
「僕は、こんなにも怪異と意思疎通ができるひとに、初めて会いました」
「いや、たまたまですよ」
 ぶるぶると首を横に振ったけれど、青野さんは穏やかな表情のままだ。
「最初に言いましたけれど、僕も、普通の幽霊やようかいは見えません。江戸落語にまつわる怪異しか見えないのです。そして、落語の怪異は、普通のおばけに比べたらうんと数が少ないのですよ。意味はお分かりになりますね?」
 じーっと見られて、ぎこちなくうなずいた。要するに、いままではたまたま落語の怪異に出会っていなかっただけで、本当は見えるのだ、と。
「最初にお悩みをうかがったときに、怪異がはっきり見えているとおっしゃっていたので、素質があるのではないかと思っておりました。それにいま、新三郎が何をしているかもよく分かっていらっしゃる」
 ふいっと横を見る。姿は見えないけれど、花札の続きが始まるのをじっと待っている感じがする、ような。
「体質的にも申し分なく、そして何より、縁起がいい。江戸っ子はげん担ぎが好きですから、二役揃うあなたが欲しくて仕方がない」
 いたずらっぽく笑う青野さんは、首をかしげて俺の答えを待っている。
 どうしよう。バイト代は欲しい。青野さんには恩もあって、お願いを無下にできない。でもおばけは怖い。
 悩んでいると、青野さんは、ふと台所の方へ振り返った。
「ああ、そういえば。ごめんなさい、ちょっと待っていてくださいね」
 手に持っていた札を伏せて置き、さっさと台所へ行ってしまう。取り残されてぽかんとしていると、何やらお盆を持って戻ってきた。
「ちょっと煮てみたのですけど、味見していただけませんか?」
 座卓の上に置かれたのは、小皿に載ったひじき煮。言われるままにひと口食べると。
「……お、おいしい……なにこれ……」
 泣くかと思うくらいおいしかった。そして、五秒でお皿がきれいになる。感動のまなしでぱっと見上げたら、青野さんはちょっと恥ずかしそうに笑っていた。
「まかないつきのアルバイト、いかがですか?」
「やりますっ」
 怪異の怖さにひじき煮が勝った……というのもあるけれど。なんだろう。なんだかじわじわと、真っ正面から必要とされたことへのうれしさがこみ上げてきた。
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、役に立つか分からないですけど、よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げると、青野さんもうれしそうににっこり微笑み、頭を下げた……と、そのとき。横でぱたっと音がした。
「ん?」
 ふたりで音のした方を振り返ると、新三郎さんの手元には、何やら豪華な札がたくさんそろっていて……。
「こんの、イカサマ野郎っ!」
 ざっとつかんだ札を床にたたきつけ、何もない空中へ飛びかかる青野さんを、大声を上げて制止する。
「お、落ち着いて! 落ち着いてくださいっ!」
 必死で服のすそを引っ張りながら、天井を仰いだ。
 怪異探しと青野さんをいさめるのと、どっちが大変だろう……?

(この続きは本書でお楽しみください)

作品紹介 



江戸落語奇譚 寄席と死神
著者 奥野 じゅん
定価: 660円(本体600円+税)

人気文筆家×大学生の謎解き奇譚!
大学2年生の桜木月彦は、帰宅途中の四ツ谷駅で倒れてしまう。助けてくれたのは着物姿の文筆家・青野で、「お医者にかかっても無理ならご連絡ください」と名刺を渡される。半信半疑で訪ねた月彦に、青野は悩まされている寝不足の原因は江戸落語の怪異の仕業だ、と告げる。そしてその研究をしているという彼から、怪異の原因は月彦の家族にあると聞かされ……。美形文筆家と、なりゆきでその助手になった大学生の謎解き奇譚! 第6回角川文庫キャラクター小説大賞<優秀賞>受賞作。
イラスト/硝音あや
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322012000505/
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