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カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」 vol.4

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト #一駅ぶんのおどろき 優秀作品②「私道」

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」

noteさんとカドブンのコラボ企画「#一駅ぶんのおどろき」から受賞作を掲載!
第4回は優秀賞を受賞したれおんさんの「私道」です。

 ◆ ◆ ◆

「私道」

こんな夢を見た。

歩くのが速い人々が、狭い路地で遅い人を前にしてしまった時のストレスを訴えたため、社会は歩くのが速い人用と遅い人用に通路を二分割されるようになった。これにより一部の速い人のストレスは軽減された。しかしなかには、自分は歩くのが遅いと思っていた人が、より遅い人によって通路を塞がれることに気がつき、 速い人専用通路へと移ったが、歩くのが速い人ではないのでどうしても他の人の邪魔になってしまう、という事態が起こった。

そこで政府は、速い人用と遅い人用のほかに、ちょっと遅い人用の通路を作ることにした。しかしそれでも、ちょっと遅い人用通路でストレスを感じたりストッパーになってしまう人が続出した。政府はさらに通路を分割化していった。

やがて人々の声を反映して、政府は街路担当大臣を新設することにした。街路担当大臣に課された役割は、ありとあらゆる民がこの国を歩くときに不満や不快な気持ちを抱かないようにすることだった。

街路担当大臣を最初に拝命したS氏は、多くの人から意見を集め、その都度道路を細分化していくことで対処した。その結果街路は混沌を極め、人々は自分がどの道を歩けばいいのか路頭に迷うことになった。

その政権が主に街路問題で失脚したのち、新たに街路担当大臣についたK氏は、よりマイノリティーの声を拾う政策を展開していった。その結果、この国からは公道と呼ばれる道路が姿を消すことになった。

      ・・・

私は今朝、自分専用の通路を歩いてオフィスまで向かった。付き合いだして2年ほど経つが、まだ恋人の通路は私の家からは離れている。恋人の専用通路を私の専用道路の隣まで移す工事費用は馬鹿にならないが、一緒に過ごすためには仕方のない出費だ。貯金が貯まるまで、あと3年くらいは辛抱しなければ…。同棲や結婚なども通路の移設が終わってから認められるので、世間はますます晩婚化が進んでいっていた。

おしまい。

 ◇ ◇ ◇

公道が無くなる!? という発想が斬新な一作。

れおんさんの note はこちら
https://note.com/joy_doy_


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