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連載

カドブン meets 本が好き! vol.57

この物語は、あなたの宝物になる。── 『この夏の星を見る』レビュー【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

『この夏の星を見る』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、八尋真昼さんの『この夏の星を見る』に決まりました。ありがとうございました。



離れていても大丈夫。見上げた空は繋がっていて同じ星を見てる。

レビュアー:八尋真昼さん

2020年、世界はコロナによって大変に荒れていた。
普通が普通でなくなり、いろんなことを諦め、我慢することが当然とされる世の中になった。
中高生は部活や行事、登校すら制限され、いろんな苦しい思いを抱えていた。

茨城の高校2年生の亜紗は、綿引先生のいる天文部に入りたいと今の高校に入ったのに、肝心の部活動が制限されてしまう。ではこの状況下でどんな活動ならできるのか、やりたいことは何かを天文部の三人で考えている。
渋谷の中学1年生の真宙は、公立校なのに学年で男子がひとりだけなことに肩身が狭い思いをしている。担任は男性で自分に気を使ってくれているのはわかっているが、サッカー部がないこの学校でどうしようか迷っている。
長崎五島列島の高校3年生の円華は、所属する吹奏楽部は同じパート同士でなければ一緒に練習できない状態な上に、自分の家は旅館を営み今も客を受け入れていることで、周りからよく思われていないと知ってしまった。友達からも仲間はずれではないけれど遠巻きにされ、ショックを受け傷ついている。
そんな彼らが星を見ることから繋がりはじめ、オンラインで一緒に「スターキャッチコンテスト」開催を決めた。


今までの日常だったら決して出会うことはなかった。
この空を見上げ、星を見ることで繋がれることを知った。
離れていても同じ空の下、同じ時間に同じ星を見る。
このとってもとっても眩しい青春が、心に落ちるもやもやを吹き飛ばす風を運んでくれる。

このどうにもできないような閉塞感でも、ひとりひとりの少しでも前に進もうとする気持ちが、何かを変えるし視野を広げていた。
確かに繋がっていると思える仲間と同じものを見ている場面では、読んでいるこちらも「いつまでもこの時間が終わらなければいいのに」と切ないくらいに思った。
みんなが心に思った「楽しい」というただただ純粋な気持ち、これがとても大事で尊いもので、かけがえのない体験だと羨ましく思うと共に、ちょっとだけ一緒に自分も望遠鏡を覗いた気持ちにもなれたのが嬉しかった。

この先の未来、きっと彼・彼女らは、また新しく誰かと誰かを繋げられる存在になってくれるんじゃないかな。

▼八尋真昼さんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no15810/index.html

書誌情報



この夏の星を見る
著者 辻村 深月
発売日:2023年06月30日

この物語は、あなたの宝物になる。

亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322208000289/
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