村崎 友『風琴密室』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き！」（https://www.honzuki.jp/）に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します！
今回のベストレビューは、読書少女さんの『風琴密室』に決まりました。ありがとうございました。

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知らないうちにどんどん惹き込まれてしまう。不思議な青春本格ミステリ小説

レビュアー：読書少女さん

二度読み必至！青春本格ミステリ小説。

全６章とエピローグから成る『風琴密室』。
最初の見開きページに小学校の見取り図と「足穂川の盗賊が使っていた暗号表」というものが掲載されています。
見取り図といえば、本格ミステリ小説には欠かせないものの１つですよね。
この時点で、私の期待感はどんどん上がっていきました。

舞台は過疎化が進む田舎・忍棚村の小学校。
主人公は夏目凌汰という高校生。
凌汰が小学５年生のとき、転校生がやってきた話から始まります。
凌汰の兄・昂星（コーちゃん）と凌汰（リョータ）はいつも魚釣りなどをして遊んでいます。そこに、転校生の雨田菫（雨ちゃん）という女子も加わり、それ以来３人で遊ぶことが多くなりました。
しかし雨ちゃんが父親の住むアメリカに再び転校していってすぐ、コーちゃんがいつも遊んでいた川で事故死してしまいます。

それから数年後･･･。
リョータはかつて通った小学校が廃校になり、そこをリノベーションするということで掃除のアルバイトをしていました。
そこにひょんなことから雨ちゃんが小学校を訪れます。久しぶりの再会に戸惑いつつも喜ぶ２人。

懐かしくなった２人と当時の同級生たちはみんなでバーベキューをすることにします。
しかし豪雨に見舞われてしまい、小学校で一泊することにした彼ら。
そこで翌朝、同級生の死という衝撃的な事件に遭遇してしまうのです。

台風の直撃、一本しかない村への道、突然の土砂崩れによる音信不通。

小学校に残されたのは、高校生と遭難しかけ助けてもらった男性。
完全に外界と遮断され、陸の孤島状態となった密室状態の小学校で、誰がどうやって同級生を殺したのか。
そして、リョータの兄・コーちゃんの死と今回の事件との関連とは･･･。

私は読み始めたとき、コーちゃんのことを特性のある子だと思っていました。
しかし、読み進めていくうちに、なんて頭のいい優しい子どもなのかと考えが変わりました。
その弟の純粋さにも心打たれます。
小学生の純粋さや残酷さを目の当たりにしたような気分になりました。

そして、本編とも言える高校生になってからの話のホラー感といったらなかったです。
本格ミステリーなのに、ホラー小説を読んでいるようなドキドキ感がありました。

読了後、というより犯人が分かってすぐに三分の一まで戻って読み返しました。
自分の勘違い、読み違いに気づき思わず「えっ」と声が出てしまいました。

気になった方は、ぜひとも本書を読んで確認することをオススメします。

読み返し必至という文言に偽りなしです！

▼読書少女さんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no14618/index.html

書誌情報

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風琴密室
著者 村崎　友
定価： 1,870円（本体1,700円＋税）
発売日：2022年05月30日

2つの密室×驚愕のトリック。 密室の伝道師による青春本格ミステリの旋律
忍棚村に暮らす高校生の凌汰は、夏休みのバイトとして幼馴染みたちと廃校の小学校を片付けていた。そこへ東京から２人の女子高校生が訪ねてくる。ひとりは、６年前の一時期この小学校に通い、すぐに引っ越していった「雨ちゃん」だった。凌汰の脳裏に、兄・コーちゃんと雨ちゃんと３人で遊んだひと夏が甦る。コーちゃんの「事故」で、思い出は悲しい記憶に変わったのだが――。再会に盛り上がる凌汰たちはそのまま廃校に宿泊することになり、修学旅行の夜のような時間を過ごす。しかし翌朝、幼馴染みの四條がプールに沈んでいるのが見つかり――。犯人の名が明かされるとき、世界は一変する。二度読み必至の青春本格ミステリ。

詳細：https://www.kadokawa.co.jp/product/321808000316/
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