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連載

カドブン meets 本が好き! vol.8

何処其処に幽霊が出るって話はよくあるけれど、その幽霊は生前誰だったのか?『東京の幽霊事件 封印された裏歴史』【本が好き×カドブン】#8

カドブン meets 本が好き!

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
>>第7回『笑え、シャイロック』



第8回のベストレビューは、薄荷さんの『東京の幽霊事件 封印された裏歴史』(著者・小池壮彦)に決まりました。薄荷さん、ありがとうございました。

何処其処に幽霊が出るって話はよくあるけれど、その幽霊は生前誰だったのか?

レビュアー:薄荷さん

子供の頃、夏休みのお楽しみであるTV特番テーマは「UFO」「UMA(ネッシー・雪男など)」「心霊もの」でした。
それがウソかホントかやらせかどうか・・・は、ちょっと横に置いといて、とりあえず間違いないのが、「幽霊が出る」と噂になっている場所=「いわくのある人死にがあった」事件や事故の現場or関わりのある場所だということです。

裏を返せば、その幽霊は「その場に心を残しているはず」の「誰か」だと認識される必要性があるわけで・・・ここで問題が出てきます。
東京は大震災、戦争、大事故を過去に重ねながら、未来に(特に今ならオリンピックに)むけて古い町並みは破壊されて景観は変わり果て、年老いて減少していく昔からの住民に代わって他府県からも沢山新しい住人達がやってきています。
全てが急激なピッチで変化していくのに比例して、「東京の過去の記憶」が変形しながら確実に薄れていくのと同様に、「記憶=いわく」ありきで存在していた「幽霊」も「別の誰か」に変形しながら最終的に消え失せてしまうんでしょうか?

本書ではそんな変わりゆく東京で、著者が「誰かが何かを目撃した怪談」の場所を訪れて、地元の人の話を聞き、その土地に関して歴史資料や古い新聞を調べ、かつての姿を残す古い写真を見つめ、現在の写真を撮り、体験をも踏まえて「幽霊事件」を考察していきます。
その中で見え隠れするのは、周知されている幽霊事件とは「別の見方・新たな状況」であり、幽霊の原因となったそれは幽霊よりずっと怖いんですよ・・・。

● 谷中霊園にかつてあった五重塔が焼失したのは放火心中とされているが、実は何者かが男女を殺害、五重塔へ死体を遺棄、放火した?当時の警察はそれを隠そうとした・・・?

● 山手線の車輪から響く「女の悲鳴」から「線路を歩く女の幽霊」までの変化は、日暮里駅の跨線橋転落事故と、山手線駅近くのマンション殺人事件がごっちゃになったから・・・?
責任の所在を明らかにしない国鉄に対し断固として戦う遺族と、責任逃れの弔慰金をさっさと受け取って新築の家を建てた遺族を見つめる「世間」が作り出した亡霊か・・・?

● 池を埋めると家が滅ぶという神田お玉ケ池。主役の「お玉」は茶屋の娘か、遊女か、関所破りの少女か、神話の女神か・・・?

● 人身事故・自殺者が多発した、中央線・東中野の魔のカーブにかつてあった「死の踏切」に現れる「顔の白い女」を調べていくと、古来この地の住民を悩ませた怨霊事件が伝えられていて…?

その他、万世橋のたもとにあった幽霊屋敷の不気味な話、
千葉県沖の水難事故死体が流れ着く天王洲につきたてられた三本の卒塔婆と黒い幽霊、
堀切の残忍な通り魔殺人事件の被害者の霊が犯人を追いつめたという警察怪談は操作ミスの誤魔化しか・・・?
・・・などなど東京の14か所に加えて、番外編として神奈川(宮ヶ瀬ダム・観音崎)、群馬県(神流湖)の3か所も収録されています。

霊能力者が怪談の名所で見つけた「幽霊」について語るのと、
地元の人の伝え語りと歴史的事件事故情報からそこに残るであろう怨嗟と悲しみを推察するのと、
どっちが正しいのはわかりませんが、個人的には後者の方が「幽霊の真実」に近いのではなかろうかと思います。
恐いけれど怪談話にとどまらない、ちょっと変わった怪談ルポルタージュをこの夏お楽しみください。

ご購入&試し読みはこちら▶小池壮彦『東京の幽霊事件 封印された裏歴史』| KADOKAWA
本が好きレビューページ→https://www.honzuki.jp/book/279108/review/230365/

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紹介した書籍

カドブンノベル

最新号 2019年10月号

9月9日 配信

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