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角川文庫キャラ文通信

【キャラホラ通信9月号】『うさぎ通り丸亀不動産 あの部屋、ワケアリ物件でした』刊行記念 堀川アサコ インタビュー

角川文庫キャラ文通信

ワケアリ物件ばかり集まる不動産屋の社員で「視える」体質の主人公・間山美波が奮闘する新感覚お仕事小説『うさぎ通り丸亀不動産 あの部屋、ワケアリ物件でした』が、今月、角川文庫より刊行されました。必死すぎる美波に笑って、幽霊たちの想いにほろりと泣けること間違いなしの一冊です。作者の堀川アサコさんに、本作への思いをうかがってきました!

――まずは、本作が生まれたきっかけを教えてください。

堀川:二十代の初め頃から十五年間ほど、そこにないものが見えていた時期がありまして。(笑)
視界の端にちらっと、顔とか手とか、何かちょっと生身の人間とはちがうものがよぎって、「むむむ?」と思ってガン見すると、居なくなっている。あとで聞くと、そこは火葬場跡だったとか、元は病院の建物だったなどというオチがついていたりしたのですが。
それが十五年くらいも続いたもので、「まあ、そういうものが居てもいいかなあ」と思うようになりました。

そんなこの世ならぬものと親和性があるといったら、不動産物件ですよね!(いや、かなり、無理矢理でしょうか)
不動産屋さんには多くの方がお世話になっていると思うのですが、そんな感じに皆さんが馴染みのある舞台で、不動産屋さんの視点から、物件にかかわる「ちょっと変なもの」をコメディ調に書いたら面白かろうと思ったのが、物語誕生のきっかけです。

ヒロインの美波は可愛いだけであまり仕事はできない人なんですが、ぶつぶつ文句をいいつつ基本的には懸命に前を向いているっていうのも、面白くて愛しいなあ、書いてみたいなあ、と。

――なるほど。ドタバタしつつもがんばっているヒロインの一生懸命さが読みどころのひとつだと思いますが、作品の中で、ほかに注目してほしいところはありますか?

堀川:この小説の中では、亡くなった人が、ある一定期間、この世にとどまっています。それゆえに、作中のすったもんだが起こるわけですが、亡くなっていても良い人は良い人なわけで、彼らは人生をどう締めくくって、何を残したいのか、何を伝えたいのか、わたしの願望と興味を取り交ぜて書いています。空想降霊術みたいな小説だと思います。

そんなことが、賃貸物件と関わると、事故物件的な騒ぎとなってしまうのですが、入居者のドラマ、不器用なヒロインのドラマ、彼ら彼女らにかかわってしまうオバケさんたちのドラマなんかが絡み合って、やがて調和に至る過程は、ままならぬ現実と向き合う日常の中で、ささやかなカタルシスとなるのではないかと思います。

――オバケたちの人間(?)ドラマ、とても読み応えがありそうですね! お気に入りのキャラクターはいますか。その理由も教えてください。

堀川:トロいヒロインの美波。ライバル会社のイケメン社員の佃さんは、本当に公明正大な紳士なのか。お金目的で事故物件に住む戸田くんの運命は……。ライバル会社の石堂社長は、いったいどんなつもりなのよ。などと、ぶつぶついいながら書き進めていたのですが、中でも一番に力が入ったのが、ヒロインのボスであるオニヘイ(二瓶敦子)社長です。

この人は、いやこのお方は、わたしが中学二年・三年で数学を習ったI先生そのものです。先生があんまりにも強烈なキャラクターだったので、脚色する余裕もありませんでした。I先生がお読みになったら「あら、あたしじゃないの(失礼しちゃうわ)」と思われることと存じます。

顔立ちが可愛くて、悪魔のように性格がキツくて、当時大キライだったうちの担任にもピシャリといってくれる、そしてここが大事なのですが、筋を通して義に篤い。ムズカシイ年頃のわたしたちにとって、尊敬できてかつ非常に面倒くさい大人でした。今でも折々に思い出すので、気がついたら小説の中に登場させちゃってました。読者さんも、I先生であるところのオニヘイ社長に翻弄されていただきたいです。



――名前もインパクト大なオニヘイ社長、気になります!(笑)よろしければぜひ、今後の展開を教えてください。

堀川:読者さんたちもわたしも、ストレスの多い現実の中で日々がんばっていますので、この本を読み始めたら、しばし憂さを忘れる──というような面白くてホッとする物語が書きたいです。できれば、再読、再々読していただけるようなものが書けたら最高です。今日はあの本の刊行日だから、それを楽しみに一日がんばろうとか、思っていただけたら小説家冥利につきます。

『うさぎ通り丸亀不動産』の今後につきましては、美波の宅建試験の結果はいかに? 転職したい美波の野望はどうなるのか? オニヘイ社長、三度目の結婚はあるのか? つぎはどんな変な物件が出現するのか? 楽しみは尽きません。

――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

堀川:出版不況といわれて久しいですが、ホントですか? と思うくらい、わたしは本ばかり買っております。だれか止めてくれって感じです。読む本、読む本、これまた面白いんだわ、困るわ。という至福の悩みの中、今日もまた新しい本を手に入れてニタニタしてます。

これをお読みの読者の皆さんも、本の面白さに気付いてしまったご同類とお察しいたします。本は紙とインクでできた魔法のトビラ。ええ、ええ、もう遠慮なんかいりません。時間と財布が許す限り、この魔法の扉をくぐって空想の世界で遊びましょう! わたしの本じゃなくてももちろんいいです。皆さんが新たな一冊を手に取るとき、世界は確実に少し広がります。

ご購入&試し読みはこちら▶堀川アサコ『うさぎ通り丸亀不動産 あの部屋、ワケアリ物件でした』| KADOKAWA


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