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【キャラホラ通信10月号】『27時の怪談師』刊行記念 問乃みさきインタビュー
角川文庫キャラ文通信
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事故物件に住む棲師×真実を語る怪談師の怪異ミステリ『27時の怪談師』が、今月、角川ホラー文庫より刊行されました。怪奇現象の裏の真実にゾクリとして、凸凹コンビのやり取りに元気をもらえる新感覚のホラー小説です。作者の問乃みさきさんに、本作への思いをたっぷりうかがいました!
――まずは、本作が生まれたきっかけを教えてください。
問乃:デビュー作の『次回作にご期待下さい』は、小説に初めて挑戦してみた作品で、新人賞への応募作だったので、何も考えずに心のままに突っ走れた気がします。
でも、今回はデビューから三作目。しかも新作ということで、何を書こうかと迷いました。最初に思ったのは、デビュー作とは似ていないものにしたいということ。前作とは違うチャンネルをお見せできたらいいな、と考えました。
企画案は初め、ほんとにたくさん、次々と出てきたんです。その中で、「これでいこう」とゴーサインをいただいたものもありました。けど、何かが違う気がして……。その企画は自分から先送りして、また振出しに戻ってしまいました。それからは、何が正解か、分からなくなってしまって……。
それが深夜のファミレスでパソコンとにらめっこしていた時に、気分転換に大好きなバンドのPVを視聴していたら、急にスイッチが入ったみたいに『27時の怪談師』が映画みたいに目の前に見えてきて……気づいたら一晩で、企画設定とキャラクター案、第一話のプロットが固まっていました。まさに、何かに憑依された!? みたいな感じです。
ひとつ驚いたことがあって。そのバンドは日本のバンドなんですが歌詞が英語で、私は英語が得意じゃないので、歌に込められたメッセージはよく分からないままにインスピレーションを受けた感じだったんですね。なのに、初稿を書き上げた後で歌詞の和訳を見たら、生きることと死ぬことという世界観が共通していて、「ああ、宿るものってあるよなあ」としみじみ感じました。そして、私が生み出すものにも、何かが宿っていればいいなと思いました。その何かは愛にあふれたものであればいいな、誰かを幸せにするものであればいいなって。
――それはすごいですね! 「宿るものがある」エピソードもとっても面白いです! そんな経緯で生まれた今作の読みどころを教えてください。
問乃:まずは、主人公二人の個性豊かなキャラクター。そして、そんな二人の関係性の変化だと思います。
本作の主人公は事故物件から事故物件へと渡り暮らしていて、凄腕の霊能力者「棲師」と呼ばれているのですが、実は極度の人間恐怖症である引きこもり。生きた人間と関わらずに生きていく道を模索しているうちに、なぜか棲師と呼ばれるようになっていたという男です。そんな彼が、一人の怪談師との出会いによって心に変化が生まれ、その変化にとまどい、超あたふたしている様が、なんだか笑えて、だけど応援したくなります。
もう一人の主人公である怪談師は、美形だけれど、オッドアイはただのカラコン。なんだかチャラい感じですが、「真実を語る怪談師」と名乗っているのは、何か訳があるようで……。彼のドラマチックな背景も、この物語のポイントだと思います。
そして、帯に「怪異ミステリ」とあるように、謎解き要素は本作の大きな魅力です! 謎が謎を連れてくる迷宮感と、その謎が明かされる謎解き怪談ライブの臨場感と疾走感をぜひ楽しんでいただきたいですね。
読書って個々で楽しむものですが、本作はなぜか、読者さん全員とひとつのライブ会場に集まって、この物語の中にいるような……そんな一体感のある不思議な読書体験をしていただけるんじゃないかなって思っています。
――たしかに臨場感がすごい作品ですよね。一文字も読み飛ばせない情報のつまり具合なのにスピード感がある、まさにライブだなと思います! 個性豊かなキャラクターについても触れていただきましたが、なかでも問乃さんのお気に入りのキャラクターはいますか? その理由も教えてください。
問乃:やっぱり、主人公である棲師・亜嵐と、怪談師・弔ナイトの二人ですね。もう、ほんとに目が離せない(笑)。私、作者のくせに、ゲラをやっている最中に気づくと「がんばれー」って彼らを応援してましたから(笑)。二人の人間臭さとか、弱くて、でも強いところが、すごく好きです。
特に、棲師・亜嵐の繊細さには心をわし掴みにされていて(笑)。引きこもりなのに趣味が手品で、幽霊相手にコインマジックで三百円を出して見せて「冥銭だよ」と成仏するよう背中を押してあげたり。ナイト君の涙に「イミテーションのオッドアイが流した涙は、きっと偽物なんかじゃない」と思ってみたり。屈折しているようで、すごく純粋で真っ直ぐなんですよね。
ナイト君の方は、チャラい表面と心の奥の孤独感という、そのギャップにドキッとしますよね。いつしか彼を守りたいと必死になり始める亜嵐の気持ち、すごく分かります。母性本能をくすぐるタイプですね、ナイト君は。
――新作が出たばかりですが、『27時の怪談師』の今後の展開を可能な範囲で教えてください!
問乃:今後があるかどうかは、どれだけ読者の皆さんにこの作品が愛され、彼らを応援してもらえるかにかかっています(笑)が、あると信じて言うとしたら……。部屋から一歩も出られない引きこもりの亜嵐が、いつか外へ出られたらいいなと思いますし、ナイト君が「真実を語る怪談師」になった理由である某幽霊屋敷の謎を、二人で解ける日がきますようにと願っています。
実は、次のエピソードはすでにもう頭の中にあって……。それを発表できるよう、皆さんどうか応援よろしくお願いします!
――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
問乃:角川ホラー文庫ですが、イヤホラでもイヤミスでもなく、超ハッピーな読後感の元気になれる新感覚ホラーミステリなので、怖がりさんや、心がお疲れ気味の方にもおすすめです。どうぞよろしくお願いいたします!
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