角川文庫キャラ文通信
――このたびは、角川文庫キャラクター小説大賞〈優秀賞〉受賞おめでとうございます！ まず、受賞を知ったときのお気持ちを教えてください。
奥野：ほっとしたというのが最初の感想で、その後じわじわとうれしい気持ちになりました。
というのも、わたしは不安を作業量でもみ消すタイプで、応募してからの数ヶ月間、余計なことを考えないよう、だいぶ無理なペースで来年用の小説を書いていたのでした。
家族、友人、執筆仲間のみなさんからたくさんお祝いの言葉をいただき、ようやく実感が持てました。人生で一番「ありがとうございます」を言った日だったと思います。
第６回角川文庫キャラクター小説大賞〈優秀賞〉受賞作
人気文筆家×大学生の謎解き奇譚！
――刊行に向け改稿する中で大変だったこと、楽しかったことや印象的なエピソードなどがあれば教えてください。
奥野：初校ゲラをいただいたときに、校正者さんからの細かい指摘がびっしり書いてあるのを見て、「いま地球上で最も熱心にわたしの小説を読んでくださっている読者さまは、この方ではなかろうか！」と感動したのが強く印象に残っております。
担当さんのアドバイス通りに直せばばっちりまとまる不可思議現象も経験して、「プロフェッショナルに囲まれるの幸せ〜」と思いました。
――特に思い入れのあるキャラクターはいますか？ またその理由も教えてください。
奥野：青野短は、自分の『好き』を詰め込んでいます。
二面性のあるイケメンキャラが好きなので、普段の丁寧な言葉遣いとべらんめえ調のギャップを、ノリノリで書きました。
実はわたしも青野同様、一日一回花札をしないと気持ちが悪くて眠れません。
――今回、題材に『落語』、なかでも『江戸落語』を選んだ理由を教えてください。
奥野：怪異ものを書こうと決めてから、妖怪・怪談・都市伝説など色々案を出したのですが、落語の怪談を題材にしている作品はあまりないと思ったので、採用しました。
江戸落語に絞ったのは、青野のキャラに『江戸っ子で短気』という属性を与えたかったからです。
上方落語は登場人物が関西弁なので、青野が怒っても罵り合いにならないな……と考えると、江戸に絞った方が面白くなりそうだと思いました。
落語の登場人物は『着火も早いが鎮火も早い』という感じなので、青野の一瞬の豹変と相性がいいと思います。
――この作品の読みどころ、こだわりをぜひ教えてください。
奥野：月彦と青野、ふたりの関係性を楽しんでいただけたらと思います。
「怪異には失礼のないようにしましょう」と言う青野自身が、江戸っ子短気で、すぐ怒ってしまう。気弱な月彦は、そんな青野を大慌てでフォロー。
でも、ピンチのときは青野がばっちりかっこよく助けてくれるという、いいコンビです。
また、題材にしている演目選びにもこだわっています。
落語を知らない方にも分かりやすく、ライトミステリとして魅力的な謎を提示できる噺を選びました。
――今回選んだ４つの落語の演目の中で、お気に入りはどれですか？
奥野：最終章の『お札はがし』は、ひやっとする怪談でもあり、悲しい恋の物語でもあるので、味わい深いなと思います。
作中では、月彦の抱える問題が、『お札はがし』の怪異事件の重大な真相に繋がっていきます。
――今後書いていきたいものを教えてください。
奥野：ミステリ作品に挑戦したいです。
本作を書き終えたときに、『謎を解いたときの独特の達成感』が病みつきになることを知ってしまい、それから、本腰を入れて推理小説の勉強を始めました。
日常の謎から連続殺人、特殊設定など、書けるものの幅を増やすべく、密かに特訓中です。
奥野 じゅん『江戸落語奇譚 寄席と死神』
定価： 660円
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――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
奥野：落語の面白さのひとつに、「こんなところにかかっていたのか！」と笑ってしまう巧妙なダジャレがあると思うのですが、本作も、キャラの名前から事件の真相まで、ダジャレのような言葉遊びで繋がっているところがたくさんあります。
ふたりと一緒に謎を追いながら、作中に隠れている戯れを見つけていただけたらと思います。
ご感想、お待ちしております！ ありがとうございました。
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