角川文庫キャラ文通信
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人気シリーズ「丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。」待望の新刊が登場! 霊が視えるその素質を買われ、事故物件を扱う「第六物件管理部」で働くことになった澪は……。元気が取り柄の新入社員の、オカルトお仕事物語「丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。」の最新刊発売を記念して、シリーズに対する思い、そして今後の展開について、作者の竹村優希さんにお伺いしました!
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――本作が生まれたきっかけを教えてください。
竹村:私の祖母は、(自称)霊感が強いそうです。幼い頃の私は、祖母から聞く数々の心霊体験を(祖母には申し訳ないことに)子供ながらに冷静に聞いていました。祖母の話は度を越えて奇想天外でしたし、信じられる要素が皆無だったからです。
けれど、今になって思えば、自分の根幹にあるホラー好きは、祖母が原因だと思っています。祖母の話は子供騙しでしたが、私を怯えさせるための秀逸なオチが準備されていましたし、なんだかんだで私は祖母の話の新作を待ち望んでいた気がします。
初めて担当編集者さんとお会いしたときに、当時、自分はどんな話を書きたいのだろうと迷いの多い時期だったのですが、「竹村さんはホラー作品が向いてらっしゃるのでは」と言っていただき、ふいに幼い頃のことを思い出しました。そして、同時に、ホラーならネタはいくらでもあるなぁと思いました。もちろん祖母のおかげです。
自分が作り出したキャラクターたちに、頭の中にある数々の心霊体験をさせるのはきっと面白いだろうと妄想したのが、この物語が生まれたキッカケです。
――お祖母さまのお話で一番怖かったものはなんですか? よろしければ教えてください。
竹村:ほとんどは呆れるほどくだらない話でしたが、唯一、群を抜いて怖かったのは、日本人形の話です。
随分昔に人から貰った日本人形が、何度捨てても、お寺に持って行っても、いつの間にか家に戻ってきてしまうという話でした。それだけならよく聞く話ですが、これには続きがあります。
当時、その話を聞いた私が祖母に「結局、その人形はどうしたの?」と尋ねると、祖母は「何度捨てても戻って来るから、諦めたのよ」と言った後、仏間の端に飾られている日本人形を指差したのです。
あれほど絶望を感じたことはありません。そんなものをのんきに飾っている場合かと、すさまじい剣幕で祖母に詰め寄ったことを覚えています。他はともかく、それだけは嘘であってほしいと、嘘だと言ってくれとしつこく訴えましたが、祖母は意味深に笑うだけでした。
――今のお話、鳥肌が立ちました……。
気を取り直して、お気に入りのキャラクターは誰ですか。理由も教えてください。
竹村:圧倒的に、高木です。最初のキャラ設定の時点ではもっと存在感の薄いキャラだったのですが、徐々に“イケメンなのにめちゃくちゃダサい。でもごく稀にかっこいい”というキャラクターに仕上がっていき、みるみるお気に入りになりました。担当編集者さんの「イケメンなのに、すごい変な顔で気絶させたいですね」という言葉も、高木のキャラ作りに大きく影響しています(笑)。今は、高木が出るシーンを書いているときが、一番楽しいです。
――新刊の読みどころはどこですか?
竹村:まずは、新キャラの玲奈に注目してほしいです。玲奈はサイコメトリーという特殊な能力を持ち、アメリカから次郎を手伝うためにわざわざ帰国したという、主人公の澪にとって強力なライバルです。しかも超美人でモデル並のスタイルと、いろんな意味で澪を追い込んでいきます。
そこで、もう一つ注目していただきたいのは、澪の心の成長でしょうか。1巻の時点では、ただただ巻き込まれてアワアワするだけの普通の女の子だったのですが、2巻では少し仕事ができるようになり、3巻では玲奈の登場により、色々な葛藤を抱えます。
まだまだ未熟ですが、怖がりですぐ落ち込むくせに、やたらと情が深く、「なんとかしてあげたい」という気持ちだけで突き進んでいく姿を、温かく見守っていただければなと思います。
――今後、彼らはどのようなお仕事をしていくと思いますか?
竹村:今後のストーリー展開はまだまだ未定な部分が多いですが、個人的にはどんどんやばそうな場所で泊まり込み調査をさせ、メインキャラたちの絆をより深めていければなと思っています。
――怖い話の舞台に選んでみたい場所などはありますか?
竹村:ずっと書きたかった学校(廃校)はもう使ったので、今度は、たとえば劇場やら撮影所など、いろんな夢を持った人の執念が渦巻いていそうな場所を舞台にしてみたいです。
古い劇場なんかは、ひとつふたつおかしな噂があったりしますし、怖い話が書けそうだなと思います。ただ、現地取材は怖いので遠慮したいです。
――竹村さんご自身も不思議な体験をされたことはありますか?
竹村:私は、少し不思議なことがあっても、すべては自分の妄想だと思い込み、強引にやり過ごすことにしています。自分の霊感に気付かないようにしていた、澪と一緒です。
つまり、そうやって強引に自分を納得させなければならなかった不思議な出来事は、いくつか経験しています。
物語になるような面白い話ではないですが、初めて一人暮らしをした部屋では、テレビや照明が勝手に点いたり消えたりすることが、頻繁にありました。家賃の安い家は、電気の配線が雑なのだろう……と、ありえない解決をしていました。ちなみに、水道から勝手に水が出る、なんてことも時々ありましたが、そっちは、バルブが緩いのだろう、ということにしていました。(ありえないことはわかっています)
基本、なにごともあまり深く考えない方ですし、これからもこのスタイルを貫こうと心に決めています。
――なるほど……! 澪ちゃんは竹村さんご自身に近いキャラクターなのかもしれませんね! それでは最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
竹村:このシリーズも、ついに3巻が出ることになり、すべては読者さまのお陰だと心から感謝しています。
澪や次郎、高木やマメの物語を考える時間は、私にとって癒しです。
「想像していたより怖かった」と言っていただくことが多いですが、密かに「よし!」と思っています。
まだまだ未熟ではありますが、ただ怖いだけでなく、ちょっと切なかったり、癒されたり、皆さまの感情を揺さぶれるようなホラーに仕上がるよう、毎話、必死に頭を悩ませていますので、楽しんでいただければ幸いです。これからも、「丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。」シリーズをよろしくお願いいたします。
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