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レビュー

駄目な世代の覚悟 『駄目な世代』

 私が生まれたのは昭和四十年。東京オリンピック開催の翌年、ビートルズ来日の一年前だ。年号の末尾がゼロなので、この人とは何歳違いか、この出来事があったのは私が何歳のときだったのか、という計算が比較的楽なのが気に入っていた。しかし昭和六十四年がスライドして平成元年となってからは、平成生まれの人と自分がどれだけ年が離れているのか、まったく計算できなくなった。そしてそんな計算不可能な平成も、年が明けるとまもなく終わりを告げる。

 酒井順子さんとほぼ時を同じくして昭和の子どもとして生まれ、バブル時代のおめでたい風を存分にあびて青年から成人となった私もまた、「大人」というにはあまりにも頼りない感じをぼんやり抱きながら、こんなに大きくなってしまった。この頼りない感じは、あくまでも私自身の問題であって、それは生い立ちや家族構成、生年月日、血液型などからなる私の性格、人格によるものだとばかり思っていた。ことあるごとに自分の至らなさを恥じ、反省し、ま、いっか、と諦めたりしていたのだが、今回、この酒井さんの研究によると、それはあくまでも我々の世代全般にみられる特徴だということが明らかになった。

 特に、不自由を体験したことがないゆえの「世の中を変えなくては」という思いの欠落、さらに「世のため人のためになっていない」というコンプレックスの披瀝ひれきは、まさにうすらぼんやりながらつねづね私が抱き続けていたもやもやをピンポイントで開示している。さらに衝撃なのは、現代日本の大きな社会問題である晩婚化・少子化を推し進めたのは我々世代だという指摘。それは生殖能力のピークが日本経済のバブル期と重なってしまった我々世代の、社会に及ぼした最大の影響だと酒井さんは考える。就職先も選び放題、仕事も遊びも景気が良く、出産や子育てよりも楽しそうなことがたくさんあって、それがこの先終わることなど考えもしなかったおめでたい世代。しかし我々の浮かれていたバブル経済は、もとをたどれば実はもっと上の世代が発生させたもので、さらにその源流を突き詰めていくと、戦争にまでたどり着くという酒井さんの分析は興味深い。我々の親世代は「焼け跡世代」。好きな物も手に入れられず、やりたいこともできなかった自分の代わりに「自分の好きなように生きなさい。私ができなかったことをしなさい」と甘やかされて育った我々の青年・成人期がバブルと重なってしまったのは、もう、抗いようのない時代の流れだったのだと腹におさめるしかないのだった。

 酒井さんと私は、バブル期以前から、学生でありながら就労していたという共通点がある。酒井さんは出版界、私は芸能界。我々はそれぞれの場で、昭和のアバウトでアナログな職場が、だんだんギラギラしていくのを心身の成長とともに自然なこととして受け入れていったのだろう。経済の豊かさはまさに空気のようなもの。空気はあって当たり前。我々は若さも相まって胸いっぱいに時代の空気を吸っていた。女子大生ブームからの女子高生ブーム、ブランドもの、海外旅行、マハラジャ、とんねるず、松田聖子。酒井さんも注目したこれら時代を象徴するアイテムは、どこか愚かしくもそこはかとなく明るい。正直楽しかった。すみません。

 そんな時代を謳歌した我々世代は、リーダーシップもなく、いつまでも後輩体質のまま、社会的にはもはやとうの立ったポジションに。そして時代は平成から次世代へ。脈々と横たわる我々の愚かさ、駄目さをつまびらかにし、それが後世に受け継がれないよう身を挺ていした酒井さん。「バブル世代」として人生の最後まで道化の役を引き受けることを高らかに宣言した酒井さん。そんな覚悟をした責任感のある酒井さんは、まさに駄目な世代を代表した、「国民の叔母」(これは清水ミチコさん)ならぬ「国民の園長」と呼ぶにふさわしい。

※文庫→『バブル・コンプレックス』(2020年11月発売)


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