【カドブンレビュー】
『ポアンカレ予想』という言葉を聞いて、すぐイメージが湧く人がどれくらいいるだろうか。この本に出会わなかったら、自分は一生イメージが湧かなかっただろう。
ちなみに簡単に説明するならば、『ポアンカレ予想』とは、世に言う『ミレニアム懸賞問題』――7つの数学上の未解決問題の一つで、この問題の解決には100万ドルもの懸賞金がかけられたことでも大きな話題となった。
数学をイメージできなくなったのはいつからだろうか。小学1年生のときには、足し算・引き算など、身の回りにあってイメージがつくものに置き換え、明確に数字のやりとりのイメージをもって算数を解くことができていた。
ただ高学年になって、分数が入ってくると、正直あまりイメージがつかなくなっていたように覚えている。さらに進んで、中学生になり2次関数を解いているときには、グラフは描けるものの、イメージとして全く頭には描けていなかった。数学をイメージすることは、もはや一種の諦めというか、イメージとは切り離して考えるようになってしまっていた。
ところが、この本を読んで、20年ぶりくらいに数学をイメージするという記憶が呼び起こされた。「トポロジー」という概念を中心に、数学をイメージするためのストーリーが描かれているのだ。本著の中には数学の用語が数多く出てくるが、イメージしやすくなるような身近な例を用いて展開されるため、数学や発展の流れを追いやすいように描かれていた。
正直なところ、問題を再現して解けるほどに理解するのは、自分には難しかった。しかし、「物語を読むように数学をイメージする」ということを目的に読むとスラスラ読め、数学者たちの功績の軌跡についてイメージを持ってたどることができた。その結果、ポアンカレ予想がどんな内容で、その証明はどんなことに挑戦していたのかがイメージできるようになったのだ!本を読んだ翌日には、早速得たイメージを元に、同僚にしたり顔でポアンカレ予想について語ってしまった。
図形問題などで補助線をどこに入れるかで問題解決が一気に簡単になった経験のある方や、3次元や4次元とはどんな世界なのだろうということにワクワクするような方こそ、数学をイメージするという記憶を呼び起こしてくれる本書を手にとっていただきたい。
>>瀬山士郎『読むトポロジー』
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