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子供の頃にお化けが怖かったのも、多分「怖い顔」を恐れていたからなのかなぁと思ったりする。幼年時代の私にとってはナマハゲや鬼なんかよりも、とにかく能面が怖かった。のっぺら坊なんていうのも怖かった。
顔を見て、気持ちがわからない、ということはとても怖いことだ。気持ちがわかると、どんなに怖い顔も怖い顔ではなくなる。そんなことを思った。ただ、気持ちがわかったからといって安心してはいけない。それはなにも顔だけではなくて、身の回りを取り囲むさまざまな現象についても同じことだ。
それにしても、人の人生は生まれて死にゆくまでの道のり。怖いことの連続である。何がって、わからないことは怖いことだから。著者は、その最果てで、不思議な体験を重ねに重ね、この本には多くのエピソードが記されているという。
私は恐る恐るこの本を開いて読んだ。それはそれは、怖い話のオンパレードではあったのだが、著者は人肌の温度感と距離感で「怖い顔」たちと向き合う。大人になっても、怖いことだらけだと思った。そして、あとがきに少し救われた。
>>工藤美代子『怖い顔の話』