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レビュー

感服、満腹、台湾ごはん 『おかわり最愛台湾ごはん 春菜的台湾好吃案内』

 とにかく、すさまじい元手と熱量がこめられた一冊である。
 前作にあたる『最愛台湾ごはん』を拝読したときから、「著者はいったい何遍、台湾に行ったんだろう」とその濃密な情報量、飽くなき食欲、単身路面店に乗りこみ、「一人でも大丈夫」と次々太鼓判を押していくきっぷの良さに圧倒された。
 路面店といっても、日本で想像するような端正なロケーションではない。壁もなく、扉もなく、窓もなく、そこに座っているのが客なのか、店員なのか、店員の家族なのかもわからぬ、強烈な地元臭漂う店構えを指す。
 本来、路面店というからには通行人がもっとも気安く入ることのできるロケーションにあるはずなのだが、一見さんの観光客の場合、ことのほか難しい。私事で恐縮だが、実際に去年、台湾の高雄カオションでサイン会を開催したとき、足を踏み入れることができなかった。サイン会までのフリーの時間、市内をぶらりと散策した。今でも悔やまれるのは、遠慮なく放たれる地元オーラに気後れしてしまって、せっかく腹を空かせていたのに、どの路面店にも飛びこめなかったことだ。
 それだけに、著者の池澤春菜さんが自分の舌で確かめ、路面店どころか薄暗い路地の奥まで踏破して、「一人でも大丈夫」スタンプを店情報に添えているのを見ると、その行動力が、度胸がまぶしくて仕方がない。四十を超えた、そこそこ旅慣れたおっさんの私でも躊躇する一歩目を、的確な情報提供とともに「大丈夫!」とアシストしてくれるこの本の実用性を、ぜひとも現地で確かめたかった。
 カバーするエリアとして、前作が台北タイペイをメインに、台中タイツオン台南タイナンといった台湾第二、第三の都市をサブにすえているのに対し、今作は台北のみならず、花蓮ホアーリエン宜蘭イーラン澎湖ポンフー、高雄といった地方都市を等分に扱っている。
 特に私が注目したのは、宜蘭にある「KAVALANウィスキー蒸留所」を紹介していることだ。ごく最近、私は「KAVALAN」なるウィスキー銘柄の存在を知ったばかりだった。一見ウォッカのようなデザインのボトルなのに、それがウィスキーだというのにも驚いたし、台湾産と聞いたときは何かの間違いかと思った。あまりに台湾とウィスキーのイメージが一致しなかったからだ。もっとも、これまでその名を聞いたことがなかったのもうべなるかな、まだ世に出て十年という、できたてほやほやのブランドらしい。ただし、バーテンダーさん曰く、ウィスキーとしての実力は折り紙付きとのことで、試しにいただいてみたら、とても香りが力強く、どこか熱帯ぽい余韻を残してくれる味わいだった。
 この彗星の如く現れた「KAVALAN」の蒸留所にも、池澤さんは足を運ぶ。お酒は一滴も飲めないとのことなのに、それっぽくテイスティングしているのがおもしろい。機会があればぜひここを訪れたいなと思った。
 改めてお伝えしたいのであるが、台湾のごはんはおいしい。六年前にはじめて台湾でサイン会をしたとき、主催の現地出版社の編集者さんたちが朝昼晩、あちこちに連れて行ってくれた。ちょっとした高級レストランから、街角の一見小汚い店まで、どれもすばらしく美味だった。調味料がちがうのか、食材がちがうのか、日本料理とは完全に別方向からのアプローチによる完成された味が、続々と舌鼓を鳴らさんと突撃してくる。どの店も味わいの向こう側に底知れぬ奥深さを感じた。おそるべし台湾、と私は一発でノックアウトされたわけだが、間違いなく、あの万華鏡のような味のきらめきの在りかを、この本はたくさん紹介してくれている。
 そこのあなた。もしも今後台湾に行く予定が少しでもおありなら、前作の『最愛台湾ごはん』とごいっしょに、今作『おかわり最愛台湾ごはん』をかばんに詰めこみ、手持ちのカードを激増させたのち、旅へと出かけよう。


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