突然ですが、カジノに行ったこと、ありますか?
カジノは怖いところです。ぼくは一度行ったことがあるのですが、1万円が20秒くらいで無くなりました。ちょっと本気出したら100万円ですら20秒でなくなる所です。
が、、、
この本に出てくるギャンブルでは、一試合で数十億となくなります。
そして世の常ですが、人の命はお金よりも軽いのです。。。
舞台はイタリア。サッカー賭博に何十億とかけるマフィアを八百長で勝たせるために、主人公加倉はセリエAで活躍する日本人キーパーに近づきます。
キーパーを骨抜きにするために高級娼婦を送り込んだり、物語の前半は八百長のためにうずまく謀略。後半は、いくら悪巧みしても思い通りにはいかないよねってことで、いたしかたなくドンパチ。
八百長させる試合が近づくにつれて人がたくさん死んだり、昔好きだった女に似てる子に恋をしたりと、そりゃあもう数十億円分のドラマがあるのですが、僕がこの本を読んで怖ろしいと思った、かつ、心の底から納得したのは、『人ひとりの人生なんか、アッと言う間にダメになる。それも理不尽に。』 ってことです。
ぼくは三年前に"森の図書室"というブックカフェを立ち上げてから、経営者もどきをやっています。そして、やはりというかなんというか。スーパーみそっかすでも経営者ってそれなりに色々なことがあります。
それは銀行口座からスッカリお金がなくなるどころか借金まみれになることかもしれないし、20年来の友達を失うことだったりするかもしれません。
間一髪まだそういうことになっていないのは本当によかったし、もしそんなことがあったとしても、自分の選択の結果ならまだ納得できるんだけれども、もし、これが「カジノで1億勝った後に強盗にあって、あげくの果てには撃たれて歩けなくなりました」なんてことだったら、それはちょっと理不尽すぎる不幸ですよね。
さすがにそこまでのことはそう起きないと思いますが、程度の差こそあれ、そういう方向性のことってぼくらの人生でけっこうよくあると思うんです。
そんな、理不尽な不幸が自分の身にふりかかった時に読むといいかもしれません。
自分以上の不幸に出会えばなぐさめられるし、ヽ(`Д´#)ノ ムキー!! って気持ちは加倉が代わりに暴力に訴えてくれます。(自称)毎日理不尽にさらされているぼくは、この本を読み進めるにつれて暴力的な気分が高まり、読み終えて現実に帰ると、高まった暴力的気分の向かう先がないので代わりに本屋に駆け込み、前作まで一日で読み切りました!
というわけでこの本、約20年前の『夜光虫』という本の続編です。
ぼくは『暗手』→『夜光虫』の順番で読みました。もちろん読むのは『暗手』からでOKです!
ラストが近づくにつれて変化する加倉の心情や、どうして加倉がノーヒットノーランを成し遂げるほどのプロ野球の花形選手から裏世界の住人になったのか? が、両方読むとより理解できて楽しめます!
やってみて思ったのですが、遡って本を読むっていうのはすごく贅沢です。好きな本の登場人物の過去に遡るっていうのは、好きな人の過去をこっそり知るっていうのと似てる気がします。なんだか背徳的な悦びでした。