【カドブンレビュー】
面白い!
文句なく面白い!
この本は、はらだみずきが2006年から書き続けて来たサッカーボーイズシリーズの7冊目であり、最新刊だ。
私は予備知識なく、この本から読み始めたが、全く問題ない。すんなりと入っていける。
もちろんサッカー小説なので、登場人物は少なくない。しかし、作者には、それぞれの選手たちがハッキリと見えているのが分かる。ピッチの中の息遣い、ピッチの外での喜びや悩み。読み進めるうちに、読者の頭の中でも各キャラクターが生き生きと動き出すはずだ。
主人公は青嵐高校2年生の武井遼介。サッカー部は全国を目指してはいるものの、チームは総体県大会予選で敗退。しかも、遼介は部内でAチーム入りすらできず、ずっとBチームに甘んじている。
将来の夢は小学生の時から変わることなくサッカー選手。しかし、夢と現実のギャップがどんどん開いていることを認めざるを得ない。同学年のBチームエース、上崎響でさえ、かつてユース入りを逃したことで、プロ入りを断念した。
皆、度々同じ問いを自分に投げかけなければならない。「なぜサッカーを続けるのか? そこに意味はあるのか?」
上崎響は回想する。いちばん近くで自分の本気を応援してきた親に、プロをあきらめると告げた時、「もっとがんばれ」とは言われなかったことを。
傷みの激しいスパイクを手入れする遼介に、父親は折りたたんだ一万円札を無理やり握らせる。選手それぞれの過去や日常がさらりと、しかし印象的に描かれる。
遼介は腐ることなく、目の前の目標を設定し、一歩一歩地道にクリアしようともがく。それは部活の12分間走で同学年1位を目指すことであり、Aチームの応援をBチーム全員で盛り上げることだ。そのひたむきな姿勢は、次第にチームのメンバーたちに影響を与えていく。
試合の描写はスピーディーで、わくわくさせられる。刻一刻と変わる状況の中で訪れた決定機、読者の頭の中で展開する映像は突然、スローモーションになる。そして次の瞬間、ボールがゴールネットを揺らしているのだ。
――勝ちたい。 このチームのために。 そしてこの仲間のために。 だが、それとは別に、自分のためにプレーしたいとも思った。
読み終わった次の日には遼介たちがたどって来た道のりが知りたくて、近所の書店でシリーズ第1巻を購入! こちらもやはり面白い!
主人公の遼介は小学校6年生。まだ無邪気なところはあるが、日々葛藤している。遼介を取り巻く家族、監督、コーチたちの姿にも共感せずにいられない。
読めば読むほど続きが気になり、いま中学2年生の時代を描いた3巻目を読み終えたところだ。
心を熱くする青春小説。
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