役者として“家族もの”の撮影は、いつも独特の緊張をする。何らかの理由で側に居ない、という場合も含め、誰にでも家族はあるからだ。存在が当たり前になっているもの程、違和感は気付かれやすく、扱いが難しい。
植物の名を有した6編の物語は、どれもごく身近な描かれ方をし、その上で「家族あるある」を逃さず養分として枝葉を伸ばしている。子供を持たない私でも、子供の可愛さや体温、汗ばんだ肌を感じられる。不貞の瀬戸際に立つ男心すら解るような気になり、十代の繊細な心とその揺れも、男女関係なくすっと胸に入り清々しい気分を味わった。
大袈裟でない、生の生活に沿ったエピソードで紡がれているからこそ、老若男女問わない6人の主人公の立場全てに同調ができるのだ。簡単に見えるさりげない工夫が、家族もの短編集として王道の威力を発揮している。
読後のため、作中に度々出てくるココアを用意しておくことをオススメしたい。
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