横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作家が放つ、新たなる恐怖と謎。
『やまのめの六人』原 浩
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
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『やまのめの六人』文庫巻末解説
解説
アメリカのアリゾナ州フェニックスの不動産会社に勤めるOLが、ある日会社の金を横領して逃避行を始める。車を駆って恋人の住むカリフォルニアを目指すのだが、夜になって土砂降りの雨に
というのは、アメリカのモダンホラーの第一人者ロバート・ブロックの原作をアルフレッド・ヒッチコックが監督した映画「サイコ」(一九六〇)の出だしである。それまで横領犯罪をやらかした女の行方を見守っていた観客は突如として起きる惨劇に文字通り度肝を抜かれるわけで、「サイコ」はこの手のショッカー映画の手本として後世に多大な影響を与えることになる。
本書もまずは、そうした「サイコ」系ホラーサスペンスの一冊として幕を開ける。
土砂降りの雨の中、山奥の峠で車が横転する。乗っていた六人の黒スーツの男たちは
映画「サイコ」と一味異なるのは、事故の現場近くに〝おんめんさま〟という道祖神が
「サイコ」と異なるもう一つは、山姥一家の獲物になる五人がただの男たちではないことだ。「サイコ」のヒロインと同様、逃亡者ではあるのだが、こちらは武装もしている強奪犯。ただ黙ってやられているだけではむろんすまない。隙を見つけてはいつでも反撃に出る用意があるわけで、事実一家は痛い目にあうことになる。もっとも犯罪者は犯罪者、五人組はそれぞれ内に闇を抱えており、そこを物の怪につかれることにもなる。タフガイの紫垣とて例外ではなく、絵に描いたような無法者の彼も家族を失っており、その痛手にトラウマを
かくして、彼らの内なるトラウマや欲望は
そこでポイントは、六人いた強奪犯が実はもともと五人ではなかったかということ。いつの間にか一人増えていたのだ。その一人は〝やまのめ〟なのか。そして〝やまのめ〟だとすると、いったい誰に化けているのか。終盤、二転三転する〝やまのめ〟探し。果たして誰と誰が生き残るのか、壮絶なサバイバル戦が繰り広げられる一方で、著者が仕掛けたこのフーダニット(犯人探し)のバリエーションもまた、「サイコ」にはない妙味というべきか。
本書『やまのめの六人』は長篇『火喰鳥を、喰う』で第四〇回
なお、長篇第三作『蜘蛛の牢より落つるもの』(KADOKAWA)も二〇二三年九月に刊行済み。
作品紹介・あらすじ
やまのめの六人
著 者:原 浩
発売日:2023年12月22日
六人の仲間に、人ならざる「アレ」が潜んでいる――戦慄のホラーミステリ!
嵐の夜、「ある仕事」を終えた男たちを乗せて一台の乗用車が疾走していた。峠に差し掛かった時、土砂崩れに巻き込まれて車は横転。仲間の一人は命を落とし、なんとか生還した五人は、雨をしのごうと付近の屋敷に逃げ込む。しかしそこは不気味な老婆が支配する恐ろしい館だった。拘束された五人は館からの脱出を試みるが、いつのまにか仲間の中に「化け物」が紛れ込んでいるとわかり……。
怪異の正体を見抜き、恐怖の館から脱出せよ!横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作家が放つ、新たなる恐怖と謎。
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