世界的児童文学作家の人生のお手本にしたい、名エッセイ集!
『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』角野栄子
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』著者:角野栄子
『「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出』文庫巻末解説
親愛なる角野栄子様
解説
前略、ごめんくださいませ。
角野さんは、本当に赤い色がお似合いですね。その赤が、もしかして「魔女」に
角野さんが五歳という若さで、お母様を亡くされたことを、初めて知りました。そのことが、角野さんの人生にどれだけの影響を与えたか。人生を左右するほどの、大きな大きな出来事だったかと思います。受け入れ難い、けれど受け入れるしかない。その過酷すぎる現実を、小さな体で必死に受け止める幼い角野さんが、とても印象的でした。
自分を産んでくれた母親の記憶がひとつもないということがどれほどしんどいか、改めて想像するきっかけをいただきました。お母様が、身をもって、角野さんに「死」の存在を教えてくださったのですね。それが、母親からの「贈りもの」であると解釈できることこそが、角野さんの素晴らしさだと感じました。
おっしゃる通り、親を失うということは、子どもにとって最大の不幸です。でも、人間には元来、自然治癒力というものが存在する。傷ついた心を、自分で治し、回復する力が備わっている。それもまた、お母様の命から角野さんが授かった豊かな贈りものであると感じました。私は、角野さんの生き方から、みずみずしい生命力を感じずにはいられません。
お父様のあぐら、にぎやかなお正月、和光堂さん、そういった周りの人たちや時間が、角野さんの中で自然治癒力が発揮されるのを見守ってくれていたのだと思います。心の置き場所が見つからなかった十四歳の角野さん、そこに突破口を開いてくれた英語の先生。
どこにでもある平凡な日常を面白がれるかどうか、ひとつの出来事でもどの角度から見てどう受け止めるか、その人の受け止め方次第で、人生はつまらなくも
だって、結婚早々、二十四歳の若さでブラジルへ行ってしまうなんて! なかなかの度胸というか、型破りというか、好奇心
そして、ブラジル、サンパウロのグアイアナーゼス通りでの新しい暮らし。角野さんにとって、どんなに刺激的だったことでしょう。とりわけ、クラリッセとの出会いは、格別でしたね。
角野さんの生き方にどこかラテン系の血を感じるのは、きっとブラジルで暮らしたことが大きく影響されているのだとお察しします。違う世界に体ごと飛び込むというのは、もちろん勇気のいることですが、そこから得られるギフトもまた、とても大きいということを学ばせていただきました。
角野さんの言葉で
五歳でお母様を亡くされたこと、若くしてブラジルへ渡られたこと、クラリッセとの出会い、ご自身の出産、お嬢さんが描かれた
それにしても、角野さんは最初から書く人になりたかったわけではなかったなんて、意外です。今気づいたのですが、角野さんは、超・自然体で生きていらっしゃるのかもしれません。余計な力を体に入れず、あるがまま、自然の流れに逆らわず、その都度その都度、身に降りかかる出来事を受け入れ、
国際アンデルセン賞 作家賞の受賞スピーチに心からの拍手をおくります。同じ「物語」を紡ぐ同志として、角野さんを心から尊敬します。
いつもカラフルな色のお洋服を身に
どうかこれからも、「現在進行形」でいてください。
いつかお目にかかれる日を、楽しみにしております。
作品紹介・あらすじ
「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出
著 者: 角野栄子
発売日:2023年11月24日
88歳の今も、私は「現在進行形」
たらいで洗濯する背中にそっとよりかかって感じた、亡き母のぬくもりの記憶。晩酌する父のあぐらの中で毎晩座って聴いたオノマトペ。ブラジルで運命的に出会った気高い赤毛の魔女。「普通のお母さんになってよ」と小学生の娘からいわれた日。江戸川の土手に住んでいたハーちゃん。紀伊國屋書店の新入社員時代、喫茶室で見たフランス帰りの若き岡本太郎……。思い出は、よろこびだけではなく悲しみも人に力を与えてくれる。みんな今の私を作った「集まっちゃった思い出」たち。世界的児童文学作家の人生のお手本にしたい、名エッセイ集!(解説:小川 糸)
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