【カドブンレビュー】


 産経新聞社編集委員を務める宮本雅史氏は『爆買いされる日本の領土』で、北海道・沖縄を中心に森林や農地などの広大な土地が中国資本によって買収されているという事実と、外国資本による土地買収に対して法整備が行われず無防備なままの日本の現状を紹介した。本作はその続編となる。
 第Ⅰ部は北海道の最新レポートに加え、「今や韓国領」といわれるほど韓国資本に買収された対馬、中国に呑み込まれようとしている南の要衝・奄美大島の現状を報告している。
 第Ⅱ部では、元農水官僚で青森大学教授・平野秀樹氏が、不動産の買収に係る規制が進まない理由や、日本の現行制度と各国の領土保全ルールを比較しつつ紹介。日本政府が推し進める、経済活動への制限なき規制緩和に警鐘を鳴らす。

 対馬では海上自衛隊対馬防備隊本部の隣接地が韓国資本に買収された。奄美では陸上自衛隊の新しい配備計画が決まった2014~15年ごろから中国が関係するとみられる資本による不動産買収が進む。北海道は道庁の資料によれば、買収された土地森林の面積は2006年~2017年のあいだに34市町村で累計2495haに膨れ上がった。その利用目的はほとんどが不明だという。
 買収行為が際立って目立つ国が中国・韓国だからか、話そうとすると感情論や陰謀論で片づけられてしまいがちで、議論が難しい問題である。問題の本質は、あまりに簡単に日本の領土が、目的も用途もわからないまま「外国化」されてしまうことであって、どこの国が相手かは関係ない。

「はじめに」と第Ⅰ部で、1995年の中国のほう首相(当時)による「日本という国は40年後にはなくなってしまうかもわからぬ」という「李鵬発言」が引用されている。わたしはこの発言は最初、単なる日本軽視、またはバブル崩壊後の日本経済の衰退を揶揄したものと思っていた。けれど、もっと違う意図の発言だとしたら。
 合法的な売買契約のもと、日本の領土は今まさに削られ、縮小している。このまま規制なく買収が進めば、いつか、気づいたら日本の領土は文字どおりなくなっていた、という事態が十分に起こり得る。
「李鵬発言」はこのことを示唆していたのかもしれない。そう考えるとき、20年以上も前のひとりの政治家の言葉が、不気味に意味深長に感じられる。

 外国資本の参入による日本の経済活動の活性化は必要不可欠だが、土地などの不動産売買にはもっと慎重になるべきだ。中国や韓国資本による一連の買収は、あくまで一個人・一企業の投資や消費行動なのかもしれず、そこに領土侵攻の野心はないと信じたい。けれどこの世界が善意だけで成り立つわけもない。
 目先の利益ばかりを求めて次々と大切なものまで手放していくうちに、いつかこの国そのものを失う日がくるかもしれない。杞憂でしかないと思うだろうか。杞憂で終われば良い。政府はもちろんだが、わたしたちも一人ひとりそれぞれに、国家や領土の重要性について、それを守っていくことについて、もっと関心をもって考える必要がある。


>>宮本 雅史『爆買いされる日本の領土』

書籍

『領土消失 規制なき外国人の土地買収』

宮本 雅史 平野 秀樹

定価 907円(本体840円+税)

発売日:2018年12月08日

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    書籍

    『爆買いされる日本の領土』

    宮本 雅史

    定価 864円(本体800円+税)

    発売日:2017年07月10日

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