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人気小説『吹部! 第二楽章』に登場するマーチングをシミュレーションソフトで完全再現!

都立高校の吹奏楽部を舞台に、マーチングに挑戦する部員たちの青春を描いた赤澤竜也氏の最新文庫『吹部! 第二楽章』。物語の中で生徒たちは、『星条旗よ永遠なれ』『ジュピター』を課題曲に全日本マーチングコンテストを目指します。彼らが取り組むドリルは、ドリルデザイナーの田中久仁明氏が本作のために考案したもの。ドリルコンテも綿密に作られています。今回、なんとそのドリルをシミュレーションソフトで再現! 作中の練習シーンとあわせて、動画を掲載いたします。

シミュレーション動画はこちら



ドリルデザイン:田中久仁明
協力:株式会社ブレーメン
衣装デザイン:おとないちあき

『吹部! 第二楽章』本文のなかから、上記ドリルの練習シーンを抜粋してお届け

 午後からは浅川の河川敷に集合。真夏の日差しが照りつけ、ジャージに着替えた部員たちは練習がはじまる前から汗だくである。
 セミの声をかき消すほど大きな声でカモティが話しはじめる。
「えーっと、まずは吹奏楽コンクールの予選突破おめでとう。これからの二週間はマーチング漬けになるから覚悟しといてね」
 ひさしぶりの指導がうれしくてたまらないといった様子でそう言うと、
「はい、じゃあ、楽器を持って所定の位置についてください」
 メンバーは決められた場所へと散っていく。
 ドラムメジャーの小早川聡美がバトンを持って先頭に立った。
「演奏せずに動きだけを通しでやってみます。テーン・ハット。レディ・セット。いくよ、一、二、三、はい」
 動きのないファンファーレの部分は省略し、まずは、「星条旗よ永遠なれ」からスタート。冒頭、歩きながら横三列のフォーメーションになったあと、三つのブロックに分かれることになっている。
 もうこの段階で隊列はバラバラなのだが、カモティがとめることはない。
「一、二、三、四、左右をちゃんと見る。一、二、三、四」
「フォロー・ザ・リーダーのときはまわるスピードをそろえて」
 コンテは頭のなかに入っているはずなのだが、正反対に動き出す部員がいれば、とまるべきところでひとりだけ前に飛び出してしまうものもいる。
 そんななか驚いたのは小早川のバトンさばきだ。
 バトンで刻むリズムが正確なのはもちろんのこと、肩へ背中へとバトンを自在に動かし、ときにはオリンピックの床運動の選手のように、片手をついてからだを一回転させる。
 その柔らかい動きには正直驚いた。
 胸を張った姿勢は美しく、ターンも機械のように正確。それでいて優美さを失わない。
 いつの間に練習したのだろう。そもそも部内にマーチング経験のある人物などいないはず。あのような演舞を誰に教えてもらったのか。
 小早川の華麗な動きの一方、吹部のマーチングはあいかわらずぎこちない。
 バラバラのまま、横並びとなった一列八人での周回へと突入した。
 吹奏楽連盟主催のマーチングコンテストには課題があり、「三列以上の隊列が四角形ラインに沿って行進しながら一周する」という規定をこなさないと失格になってしまう。「外周」と呼ばれる、大きく外側をまわりながら行進する動きである。
 ひとつ目の角を曲がり終えたあと、二度目のターンに入る前に、全体の半分がリア・マーチ、すなわちうしろにすすんで隊形を変える部分に差しかかると、
「はい、ストップ」
 カモティは突然、マーチを中断させた。
「左右を見てください。横の間隔は均等になってるかな? ラインがずれてるでしょ。これじゃあきれいにターンしようとしても、最初っからずれてるんだからできるわけないよね。はい、八拍前の場所に戻って。一、二、三、四」
 少し前からマーチをやり直したのだが、二度目のターンの最中に、
「ストップ、ストップ。角を曲がるときはレフトスピンだよ。足を真っ直ぐ下ろしてつま先はそのまま進行方向に向けて置くの。そして、かかとが地面に着く前にからだごと九十度回転させる。何度もやったでしょ。みんなの足がそろってないと美しくないよ」
 またしてもとめてしまう。
 基礎練習でスピンだけをやっているときは、部員たちもできていたのだが、左右との距離や歩幅など考えなくてはならないことが増えてくると、足先にまで注意が及ばなくなってしまう。いまのところオレはできているんだけど、こんな動きに加えて楽器まで演奏しなくてはならなくなると、正直うまくこなす自信はない。やってみると複雑で難しいもんだと実感する。
「姿勢が大事なのを忘れないで。楽器の構えも真っ直ぐになってないひとがいるよ。いろんなこと全部に気を配らなきゃだめ。大変だとは思うけど、そろうと美しくなるからがんばって」
「はい」
 カモティは指導のなかで、「美しいこと」「きれいなこと」にこだわる。
 そして求められるものが美である限り、部員たちはカモティの言うことを素直に受け入れる。美しい音を作るために部活をやっているのであり、それに付随するすべてのものもまた美しくなくてはならない。部員たちはひとり残らずそう思っている。
「じゃあ、パートごとに分かれて練習してみましょう」
「はい」

(20.6.12 追記)文庫になりました。



赤澤竜也『吹部! 第二楽章』
顧問 VS 新副顧問 吹奏楽部にふたたび波乱が!? 『吹部!』続篇!
定価: 748円(本体680円+税)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322002001014/


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