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連載

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」 vol.2

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」グランプリ作品発表!【第2回】

カドブン×note ショートストーリー投稿コンテスト「#一駅ぶんのおどろき」

noteさんとカドブンのコラボ企画「#一駅ぶんのおどろき」。 受賞作品を順次公開していきます。
第2回では「選択支援指輪型人工知能」とともにグランプリを受賞したあめ(あめじろう)さんの「リボルバー」をお届けします!

 ◆ ◆ ◆

 一年ぶりに出した石油ストーブの光は、あの日、私達の影を浮かばせた夕陽とよく似ている。
 二人きりで下校するのが初めてだった私達は、緊張で何も話すことが出来なかった。足元から伸びた影に引きずられるように、私達は並んで歩いていた。何も話せないならせめてと、あなたの左手の影に、私の右手の影を重ねて、影だけは恋人同士にさせていたっけ。
 あれから二十年。
 私が石油ストーブの光に目を細めている間、あなたは手にしたスマートフォンの光に目を細めている。
 そんなあなたの隣で、私は切りすぎた前髪を人差し指で弄んだ。前髪に触れる指先には、美しいネイルが施されている。前髪はこまめに自分でカットしているから、気づかれなくても仕方ない。だけど、ネイルをしたのは数年ぶりなのである。それでも気づかれない哀れな指先。私はその指先で、ベランダの窓を開けた。
 開け放った窓からは、ネイルと同じ色に滲む朧月が見えた。部屋に吹き込む冷たい風に、あなたは身震いをし、窓を閉めるようにと私をちらりと見た。口を開くのも手間なのだと気づいた瞬間、私は覚悟を決めた。
 あなたの額が好きだった。困った時に浮かぶ皺が好きだった。だからあなたの額に向けたのである。朧月に染まる銃口を。
 人差し指の指輪はシリンダー。あなたが初めてプレゼントしてくれたもの。くるりと回し、弾丸を詰め込む。額に狙いを定め、引き金を引く前に尋ねた。
「言い残すことはないですか」
 ようやく状況を理解したあなたは、スマートフォンから顔を上げる。あなたの視線が私にまっすぐ向けられたのは、一体いつぶりだろう。ようやくあなたと再会できたような心地がした。そこには、あの夕焼けの帰り道、隣にいたあなたがいた。
「前髪、切ったんだね」
「他には」
「ネイルもきれいだよ」
 リボルバーはエプロンにしまった。
 今日はあなたの好きなハンバーグにしようと思う。

 ◇ ◇ ◇

とてもリアリティがありつつもロマンチックなお話。短歌のような世界感が素敵です。
審査会では、ドラマ化した場合どの女優さんが演じたら面白そうかという話でも盛り上がりました。

あめ(あめじろう)さんの note はこちら
https://note.com/amejiro


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