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連載

『仁王の本願』について著者・赤神諒が語る vol.1

加賀一向一揆が舞台の歴史小説なら、主人公はもちろん…!? 『仁王の本願』著者・赤神諒が語る#1

『仁王の本願』について著者・赤神諒が語る

加賀一向一揆を舞台にした歴史小説『仁王の本願』が発売されました。
主人公・杉浦玄任は実在した人物ですが、皆さんご存じですか?
この作品を読めば、謎多き加賀一向一揆の実態に迫る…ことができるかは(信長に資料を焼き尽くされてしまったので)わかりませんが、胸熱くなる戦国エンターテインメント小説です。
刊行を記念して、著者の赤神諒さんが創作の裏話や物語にこめた思いを語ります!

No.1 杉浦玄任とは何者か

『仁王の本願』は、かの有名な杉浦玄任の物語です。
(普通、知らんやろ)
玄任を主人公にした小説は、世界初ではないでしょうか。
(当たり前やないか)

さて〈加賀一向一揆の滅亡譚〉を書くとした時、誰を主人公とするか。
せっかく本願寺を書くなら、僧侶にしようと決めていましたが、〈フィクション9割〉を標榜する私の執筆スタイルでは、歴史に名を残していても正体不明の人物が、制約が少なくて一番ありがたいんですね。
探してみると、いらっしゃいました。
本願寺の武僧、杉浦玄任は出自も、死もはっきりしません。
おかげで徹底的に作り込めました。ほぼオリキャラです。

ところが、いざ書き始めても、自分の中でキャラがすぐに動き出してくれません。
それでも書き進めていくうち、役割こそ明確でも、輪郭がぼんやりしていた主人公のイメージを、もっとクリアーにせねば! と強く思いました。
僧侶なので、強そうな仏像にしようかな、と。
(そんなに軽いノリでええんか)
実は、構想段階では「仁王」の「に」の字もなかったんです。

不動明王」なら、書くたびに四文字も使うので、長すぎる。
あんまりマイナーな仏像だと、キラキラネームになってしまう。
阿修羅」という感じでもないんです。
もっとぶっとくて、ごつくて、大きいイメージ。
仏像が好きなので、仏像を扱った本が家に何冊かあります。
ペラペラめくるうち、いた、いました。
こめかみに青筋を立てて怒っている仏像が。
――こいつだ! いや、失礼、このお方だ!

仁王」で決まりですね。あだ名としても使えそう。
仁王誕生の瞬間です。
(えらい単純やな)
超メジャーで、知らない人はいません。
教科書でもおなじみ〈東大寺南大門〉の巨人を思い浮かべられますからね。
でも、いきなり仁王が「こんにちは、仁王です」と登場したのでは、芸がない。
玄任が世に出たであろう時期が、ちょうど朝倉宗滴の晩年にあたります。
そこで「大仏」から「仁王」への復活劇として仕組みました。

玄任の死については、越前の鉢伏城で戦死したという説と、金沢御堂に戻って〇〇されたという説があるようです。迷いなく後者を選びました。
民の国を守ろうとした者が、民の国により〇〇される。
不完全な人間が作る政治体制として〈民主主義〉の限界を示すのに、好適なエピソードだと考えたからです。

また、仁王といえば、阿吽ですね。
よって当初は、盟友の鏑木頼信とコンビを組ませようと悪戦苦闘したのですが、それだとキャラが被りがちですし、二人が作中で果たす役割も違うので、やめました。
鏑木は史実で派手に動いていたようなので、「阿修羅」にしました。
え? 仁王の阿形か、吽形のどっちかって?
そこまで考えておりませんでした。すみません!


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