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【キャラホラ通信12月号】『九孔の罠 死相学探偵7』刊行記念 三津田信三インタビュー
角川文庫キャラ文通信
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皆さまお待たせしました、人の「死相」が視える探偵が、異能を活かして難事件を解決する角川ホラー文庫の大人気シリーズ「死相学探偵」に3年ぶりの新刊が登場です! 著者の三津田信三さんに、本作への想いをうかがってきました。
――「死相学探偵」シリーズ3年ぶりの新刊発売おめでとうございます! このシリーズは元々どういうきっかけで生まれたのでしょうか?
三津田:角川ホラー文庫の編集長(当時)からご依頼をいただきました。そのとき条件が4つありました。①キャラクター物にすること。②シリーズ化してほしい。③表紙は漫画のイラストにします。④1年で3作を書いてください。
正直すぐにお断りしようと思ったのですが(笑)、これも勉強だと考えて、④の条件だけ勘弁してもらって(他社の執筆もありましたから)お引き受けしたのが始まりです。このご依頼がなかったら、僕はキャラクター物を書いていなかったと思います。
――三津田さんの作品の中でも異色のキャラクター物はそんな経緯で生まれたんですね!「刀城言耶」シリーズや「物理波矢多」シリーズなど、三津田さんは他にも多数の人気シリーズを抱えていらっしゃいますが、「死相学探偵」シリーズならではの魅力はなんでしょうか?
三津田:上記のような事情で書き始めたシリーズなので、こんなことを言うと駄目でしょうが、最初は少しも愛着が湧かなくて困りました。死相学探偵である弦矢俊一郎を不愛想にしたのも、当時の僕の気持ちが出たからかもしれません(苦笑)。それを作中の設定では「彼の特殊な能力が原因で子供のころに疎外されたから人間不信に陥ってしまった」としたわけです。
ところが面白いことに、彼のコミュニケーション障害が作中で次第に改善されるにつれて、僕のシリーズに対する印象も好ましいものへと変わっていきます。
本シリーズならではの魅力は、主人公の成長を見守ることにあるのかもしれません。
――衝撃の事実が明かされましたが(笑)、このシリーズにはホラーや謎解きの魅力だけでなく、登場人物が成長していく面白さもありますよね! 久しぶりにこのシリーズを書かれる上で、何か苦労されたことや楽しかったこと、以前と変わった点などはありましたか?
三津田:このシリーズは呪術絡みの連続殺人事件を起こして、そこに死相が視える弦矢俊一郎を関わらせる必要があります。ただ、さすがに飽きました。そのため前作『八獄の界』では、敵役とも言える黒術師が主催するミステリーバスツアーに俊一郎が潜入する、従来とは違ったお話にしたわけです。そして今回も、ある工夫がしてあります。ぜひ読んでお楽しみください。
――前作のバスツアーもこれまでと違う驚愕の展開でしたが、今回の“工夫”は過去最大かもしれませんね。新刊を待ちわびていたファンも沢山いると思いますが、今作の読みどころや注目ポイントがありましたら教えてください。
三津田:弦矢俊一郎が事件を解決するためには、色々な人の協力が必要になります。一番の協力者は彼のお祖母ちゃんと鯖虎猫の僕にゃんですが、警視庁の黒捜課の新恒警部もそうです。警察関係者の中で、彼が最も頼りにしている人物と言えます。
ところが今回、なぜか新恒警部の姿が最初から見えません。いったい警部に何があったのか。俊一郎は不安を覚えながらも、事件の渦中に飛び込む羽目になります。目の前の事件の他にも、心配事を抱えた俊一郎と一緒に、読者も事件の謎に取り組んでみて下さい。
――新刊が出たばかりですが、明かせる範囲でシリーズの今後の展開を教えてください。
本作『九孔の罠』の次が『死相学探偵最後の事件』になります。常に事件の裏で蠢いている黒術師とは、いったい何者なのか。その正体は? スーパーにゃんこである僕にゃんは、本当に普通の猫なのか。彼の秘密とは? 弦矢俊一郎と黒術師の対決は、果たしていかなる結末を迎えるのか。最後の事件とは? 乞うご期待です!
――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
三津田:本シリーズは、前作のネタをばらすことなく後の作品を書いていますので、どの巻から読んでも大丈夫です。まだお読みでない方がいらっしゃれば、『死相学探偵最後の事件』が出る前に、1巻から7巻を読んでみませんか。
ホラーの怪奇性とミステリの意外性が、どの作品にもあります。そのうえ鯖虎猫の僕にゃんが可愛い!
「死相学探偵」シリーズをよろしくお願いします。
▼書籍の詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321907000109/